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仮面ライダーディザード ~女子高生は竜の魔法使い~

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epic12 進化!ディザード、アームズチェンジ!!

今まで砕かれなかったエリカのディザードリングが砕け散った…この事態に、片桐達は衝撃を受けた。

「り、リングが…そんな…。」
「え…エリカちゃん?!」
「エリカ様!!」
「「「リングが…壊れた!!?」」」

本来なら魔導士達が使用するリングには破損防止のため簡単なマジックバリアが張られている上に、ディザードリングの場合は幾重にもバリアがかけられており、おいそれと破壊はできないのだが、これすらも貫通して破壊されるとなれば…ガンナーベクターの銃は相当火力がチューンアップされていると見て間違いないだろう。

『竜の魔法使いも魔法がなければ、ただの少女…さて、次はどうする?』

そのまま膝から崩れ落ち愕然とするエリカ、一体どうすればいいのかわからず右往左往する片桐達。
してやったりの表情を浮かべたガンナーベクターは、残った仲間に片桐達との戦闘を任せ、高空へと舞い上がるやハンドガンを構え、彼女に狙いを定め引き金に指をかける。
リングさえ無くなれば勝ったも同然…そう、今回ガンナーベクターは最初からエリカのディザードリングを狙ってベースキャンプを襲っていたのだ。
前回ディザードの手により倒されたデスサイズベクターの仇を討つため、ガンナーベクターは時間をかけて精鋭を選りすぐり、城北町に現れ四方を探していた。
そしてヘルヘイムの森に通じる亀裂を発見、そこから突入し片桐達を見つけ…今に至っている。

もはや万事休す…そんな空気がただよう中、マギカドラゴンだけは目を閉じ、神に祈るかの様に天を仰いでいた…まるでリングが破壊されるのを待っていたかの様に。
そしてゆっくりと目を開き、意を決して空を見上げるや魔力を最大限まで込め、大声で叫んだ。

『…時は来ました!さぁリングよ、今こそ生まれ変わり、その新たな力をエリカちゃんに!!』

するとどうだろう、砕け散ったはずのリングが光を帯びてスゥッと上空へ上がり、一つに集まってくるではないか。
そして光と化した破片はリングへと形作られてゆき、エリカの左中指に何事もなかった様に収まり、更に光を発し…リングは全く新しい姿に変わった。
まず驚くべきはリングに内蔵された魔法石の厚さである。
本来ならリングの厚さは魔法石の大きさもあってか、かなり厚く重さもそこそこあるのだが、今指にしているリングは厚さや重さが従来の約半分なのだ。
更に、そのリングから放たれる魔力の量もはんぱなく強大で、まさにエリカのために生まれ変わったかの様である。

「…こ、これは。マック、一体何があったのですか?」
『エリカちゃん、ディザーリングが新しく生まれ変わったんだよ。このリングは、エリカちゃんの魔力の向上に合わせて強化されているんだ。』
「新しいリング…。」
『うん、デスザードとの戦いの後、今までのリングだとそれ自体のキャパシティ不足でエリカちゃんの魔力を十分に引き出せない事がわかったんだ。だから、一度リングを壊して新しく生まれ変わらせなければならなかったんだよ。』
「なるほど、私の魔力はリングがパワーアップしなければならない程にまで高まっていたのですか…。全く知りませんでした。」
『…それより早く変身を!このままだとみんなが!!』
「…はい!」

エリカは改めてドライバーのレバーを操作し、一旦深呼吸した後新しいディザードリングを手形にふれさせた。

『オーケイ・ユータッチ・ヘンシーン!…ライジング•プリーズ!ラーイラーイ、ラーイラーイラーイ!!』




エリカのリングが強化された…あまりの想定外の出来事にガンナーベクターは唖然としていた。
竜の魔法使いの命たるディザードリングを破壊すれば戦略的には有利になる…そう、力を奪ってしまえば後はたやすい事。
後は我々の力押しで、どうにでもなれる…ガンナーベクターはその発想の元、最初からエリカのディザードリングを狙い、そして破壊した。そこまではよかった。
しかし、破壊したはいいが新しく生まれ変わる事だけは、まるっきり想定外であった。
これでは今まで練ってきたプランが台無しどころか、逆に向こうがパワーアップしてしまい全てが水の泡ではないか!
焦ったガンナーベクターはエリカがディザードリングを使い変身するのを見て、改めてハンドガンを握り直し猛スピードで急降下しながら、怒りにも似た砲撃をエリカにぶつけた。

『うがあぁぁぁぁぁっ!!』

その時のガンナーベクターの表情たるや、まるで阿修羅…否、悪鬼羅刹(あっきらせつ)のごとく。
しかし、その逆襲の砲撃も。

ヂュン、ヂュン、ヂュン!!

リングから放つ防御の障壁に阻まれ全く効かず…結果的には変身を許す形になってしまった。

『…チィッ!』

ダメージを与えるのは、無理か…。
ガンナーベクターは舌打ちしながら急ブレーキをかけ、後方へと下がっていった。



さて、新たなディザードリングの力により生まれ変わったディザードは、見た目も能力も従来のものとは全く変わっていた。
まず両腕に装備されていたブレスレットは黄金のガントレットに変わり、足のブーツやアンクレットも足アーマータイプに変更、更にマスクや胸部アーマーのカラーもスカイブルーからコバルトブルーになった事でフレーム部のゴールドとの色合いも映え、本人の魔力の高さと相まってより一層力強くなった。
また、肩アーマーも五角形の小型の盾が付いた屈強な物に変わり、更にローブ自体の色もアーマーと同色へと変わる事で防御力も各段に向上、アーマーとの一体感もなかなかだ。
仮面ライダーディザード・ライジングスタイル(以下、ディザードR)…そう、これがディザードの正統進化型スタイルである。

「…こ、これが私の新しい力…すごい!すごすぎます!!」
『けど…それだけじゃないよ、エリカちゃん。新しい武器も、一緒に用意しておいたよ。』
「新しい武器?」
『今から武器のイメージを送るから、受け取って。今のエリカちゃんなら、きっと使いこなせるよ。』

マギカドラゴンは再び目を閉じ、魔力を集中させるとディザードRの脳裏に自身の頭の中に思い描いたイメージを伝え、目を開いた。
ディザードRはマギカドラゴンからのイメージを受け取り、すぐさま右手を広げイメージを実体化させるため錬成を開始する。
すると、受け取ったイメージが光の粒子となり右手に集中し、一つの武器を形作り…ものの10秒で武器は彼女の手に収まった。
その新たな武器とは、長さ1・2m程のやや大きめの弓矢。
弓と矢が一体化した…いわゆるエンチャント特化型と呼ばれるこの弓矢は、弓の部分に魔法金属の最高級品であるオリハルコンをふんだんに使用しており、炎をイメージした深紅の弓の部分は鋭い刃になっているため斬撃も可能、更に弓の握り手の上には手形も実装され、ディザーソードガンと機能的に共通した作りになっている。
 
『エリカちゃん、これが新しい武器…その名もディザーソニックアロー『ブレイブハート』だよ!』
「すごい、これも見た目より軽くて…力強さを感じます!」

これなら、ベクターノイドが相手でもいけるかも知れない…。
ディザードRはブレイブハートを左手に握り直し、魔力を込めた右手で弦を持ち、狙いをガンナーベクターに向けて矢を引き絞り最初の一発を放った。

「先程のお返しです!これを受けなさい!」
…ゴオォォォォッ!

ブレイブハートから放たれたその一発は、とても弓矢とは思えぬ速度と威力でガンナーベクターに命中し、ガンナーベクターも防御体制をとれないまま直撃を受けて吹き飛んだ。

『うぉぉぉぉぉっ!!…な、何という威力だ!』

この弓矢は強い…これならいける!
ディザードRはブレイブハートを右手に持ち替え、魔力を少し放出して軽くジャンプし空を走る様に間を詰めると、体制を立て直そうとするガンナーベクターに右下から斬撃を繰り出し追い討ちをかけた。
当然、まだ防御体制が整っていないガンナーベクターに斬撃がクリティカルヒットし、ガンナーベクターは地面に叩きつけられる。

「はあぁぁぁぁぁっ!!」
『な、しまった!…ぐおぉぉぉぉぉっ!!』

ガンナーベクターに更なる一撃を与え、軽やかに地面へ降り立ったディザードRは軽く一息入れ、再びブレイブハートを左手に持ち替えガンナーベクター目がけてダッシュをかけた。
しかしガンナーベクターも負けずに両手のハンドガンで応戦、右足でブレーキをかけながら再度低空ジャンプをして右手のハンドガンを腰にしまい、手刀に念力を流し光の刃を生み出した。
ディザードRもまたブレイブハートによる遠距離射撃でハンドガンに対抗し、ガンナーベクターに肉薄。
そして双方の刃がぶつかり、戦いの火花がバチバチと音を立て飛び散る。
竜の魔法使いの名にかけて、皆を守ってみせます!…彼女は改めて決意を固め、ガンナーベクターに刃をぶつけていった。



ディザードRの戦いに触発され、丹沢も負けられないと感じたのか調査隊全員に声をかけた。
エリカ様にだけ戦わせる訳にはいかない、自分もしっかりしなくては…そう心に言い聞かせながら。

「みなさん、私達もエリカ様の後に続きましょう!ベースキャンプを守るのです!」
「「「了解!!」」」

そして丹沢はディスクを引き出し、コネクトリングを右手中指に装備し魔法を使った。
現れた魔法陣に手を入れ、そこから取り出したのは…ディザーソードガンを小型にまとめた様な1丁のハンドガン。
丹沢はそれを手にすると、やおら短距離走の選手がごとく走り出し、上空から降下してきたチェーンソーを両手に装備したベクターノイド…チェーンソーベクターに発砲した。

「これでも受けなさい!」
『ぐっ、ぐわあぁぁぁぁぁっ!!』

チェーンソーベクターは上空から落下し、背中から叩きつけられ派手にバウンドして着地した後、転がりながら即座に体制を立て直した。
さすがのチェーンソーベクターも、ヘルヘイムの森の力で魔力が一時的に向上した今の丹沢には舌を巻く。

『思ったよりやるな、人間の魔導士も…正直うかつだった。しかし丁度いい、俺様も暇を持て余していたところだ。付き合ってもらうぜ!!』

がしかし、チェーンソーベクターも負けてはいない。次は俺の番だとばかりに両手のチェーンソーを起動させ、両手を交差し火花を散らしながら丹沢に迫ってゆく。
丹沢も手にしたハンドガン…『ハンディソードガン』をソードモードに切り替え、チェーンソーベクターに向かって走り出し斬撃を繰り出した。

ところでこのハンディソードガン、ディザーソードガンの実用性に目を付けたエーテルの開発機関が他の魔導士にも扱えないかと考え、エリカ本人から細かいアイデアとアドバイスをもらい完成した苦心の一品である。
魔力を使うエンチャント機能はまだ実装されてはいないが、火力自体はディザーソードガンに引けを取らぬ威力を誇り、またソードモードも切れ味を重視してダイヤモンドを粉末にした物を刀身の素材の一つとして使い、軽量化と威力強化に成功している。
今回は丹沢と調査隊のエキスパート数名にのみ手渡されているが、ゆくゆくはエーテルの魔導士全員に行き渡らせたいと開発機関の主任は語っていた。

丹沢はチェーンソーベクターの懐に入るべく徐々に加速をつけて走り出し、チェーンソーベクターもチェーンソーを振り回しながら丹沢との間合いを詰め、最初の一撃を決めるべくチェーンソーを横一線に振り回した。
すると、丹沢がチェーンソーベクターの目の前でジャンプして回避し…なんとチェーンソーベクターの頭を踏み台にして空中高く舞い上がり急降下してゆくではないか。
自らの視界から消えた上に頭を踏みつけられ、一瞬戸惑ったチェーンソーベクターは一旦走る足を止め、あたりをキョロキョロと見回しチェーンソーを構えつつ丹沢の気配を探っていた。
そんな馬鹿な、奴は一体どこへ…?
警戒を続けるチェーンソーベクターの顔に焦りの色が浮かび、緊張感が漂う。
が、その刹那…真上から気配を感じたチェーンソーベクターは、すかさず右側のチェーンソーをロケットパンチの要領で放った。

『…そこっ!』
「甘いです!!」

しかし、丹沢の降下スピードは彼の予想をはるかに上回り、飛んできたチェーンソーをするりと交わすとあっという間に背後に回り込み、斬撃を横一線に繰り出した。

「遅いですよ!」
『…ぐうぅぅぅぅぅッ!!』

チェーンソーベクターは胴体から火花を散らしヨロヨロと後退、さすがの対魔法スーツも物理ダメージには耐えきれず黒く焼け焦げていた。
丹沢は着地後、更にバックジャンプしながらガンモードに切り替え砲撃を開始、足元に命中させ牽制しながら近くにいる隊員に声をかけた。

「さぁ今です、反撃を!!」
「「了解!!」」

すると二人の隊員が即座にディスクを引き出し、コネクトリングを使用してハンディソードガンを取り出した後ダッシュでチェーンソーベクターに肉薄し、砲撃と斬撃のコンビネーションを決めた。
まず数十発の砲撃がチェーンソーベクターの正面を襲い、続いてソードガンの斬撃が来たもののチェーンソーベクターは左側のチェーンソーでぎこちなく防御し、ダメージを受け付けない。
残った隊員達もディスクを引き出しバインドリングを使用、チェーンソーベクターの足や胴に絡ませ動きを制し、二人をバックアップした。
それを見た丹沢はバックジャンプ後、右手のリングを即座に変更し魔法を使う。

「魔法を使います、後退して下さい!」
「「了解!!」」
『むうぅ、くそっ!!』

魔法発動と同時に丹沢の右手に直径20cmの光弾が錬成され、チェーンソーベクター目がけてスナップを効かせ投げつけた。
そして二人の隊員が下がったのと入れ替わりに飛んできた魔法の光弾が弧を描いて襲いかかり、チェーンソーベクターに命中する!

『グッドチョイス!スプレッドボム!…レディゴー!!』
『な…ぐわあぁぁぁぁぁ!!?』

スプレッドボムは狙い誤りなく全弾命中。
さすがのチェーンソーベクターも対魔法スーツの限界を超えたダメージに耐えきれずマスター回路が爆発、機能停止して大地に倒れた。
だが、丹沢も無事ではなかった。実は先程の空中急降下の際、一見して回避したと思われていたが…実際は左肩をかすめており、そこから血を流していたのである。

「あっ、室長!肩から血が!」
「むぅ…回避したと思っていましたが、あの敵もなかなかやりますね。」

やっと勝てました…丹沢は勝利の余韻に浸る事なく、深呼吸して息を整えると隊員達と共にベースキャンプを守るべくテントへと引き返していった。
当然丹沢自身もベースキャンプ到着後すぐに肩の治療を開始、数分で完了して復帰したのは言うまでもない。



かたや片桐の方はどうかと見れば…すでにベクターノイドを一体撃破していた。
しかも、両手がドリルのいかにも最強(つよ)そうなドリルベクターを…バックドロップで。しかも、アームズに変身すらせず、生身で。

(この人間…本当に魔導士か?いや、それ以前に人間なのか!!?)

残った二体のベクターノイド…背部に翼を持ち腕部にマシンガンを装備したジェットベクターと、胸部にバーナーを内蔵しナイフを右腕に装備したバーナーベクターは、青ざめながら互いの顔を見合っていた。
片桐は二人のベクターノイドに手招きをして「かかってこいや!」とばかりに挑発を繰り返しており、やる気満々である。
ジェットベクターは一応戦闘ポーズを取り片桐がかかってきてもいい様にはしているものの、正直なところ…腰が完全に引いていた。
バーナーベクターも構えてはいるが、やはりやる気が完全に失せていて、やはり心もとない。

一体、片桐とドリルベクターとの間に何があったのか?
それはほんの数分前…片桐とドリルベクター達が互いににらみを利かせながら距離を取っていた時である。
俺が先手を取るとばかりにドリルベクターが動き、左のドリルで攻撃を開始したのだ。
ジェットベクターは『うかつに手を出すな!』と声をかけたが、手柄を横取りされると思っていたドリルベクターは聞く耳を持たずに突撃を続行、更に片桐との間を詰めていった。

『おいやめろ、まず相手を見て出方を見るんだ!!』
『そんな事言ってられるか!…いくぜ!生身の人間!!』
「さぁ、こい!」

しかし、それがあだとなった。
片桐はドリルが命中するギリギリを見極め、瞬発的に垂直ジャンプで回避した後ドリルベクターの背後に素早く回り、腰をつかむと魔力を両腕に込めて空高くジャンプ、高度100mまで上昇しバックドロップを決めたのだ。

「どっせぇえぇぇいぃぃぃぃぃ!!」
『な…こいつ……化け物か!!?いや、奴は…奴はぁ……妖怪だあぁぁぁぁぁ!!!』

当然ながら頭部の電子回路はショートを起こし、
片桐がドリルベクターからバックジャンプして離れた後に回路が爆発…ドリルベクターは機能を停止しヘルヘイムの森の大地に倒れた。

正直な話、ジェットベクターもバーナーベクターも片桐の数値外な馬鹿力に恐怖を感じていた。
通常、ベクターノイド達は恐怖と言う感情はあまり抱かない…いや、それすら許されていない。
相手が誰であれ毅然(きぜん)とした態度で挑む事、それが彼らのポリシーだからだ。
しかし現状を見れば、誰でも恐怖を抱かずにはいられない…例えそれが、未来のホムンクルスでも。
もはや、なりふり構っていられない…ジェットベクターは恐怖にかられ背部のウィングを展開、片桐目がけて両腕に仕込まれたマシンガンを乱射しながら突撃していった。バーナーベクターの制止を振り切って。

『…うわあぁぁぁぁぁ!!』
『ジェットベクター、やめろ!相手が違いすぎる!!』
「さぁ、更にかかって来い!その翼、木っ端微塵に砕いてくれる!!」

が、片桐はマシンガンの雨をものともせず冷静に深呼吸をし右腕を振りかぶると、そのままジェットベクターの左ウィングに…正拳突きを決めた。
バリバリッと金属がきしむ音を立てて切り裂かれていき、左ウィングは真っ二つになり地面に突き刺さる。

「…ふんっ!!」
『うそおぉぉぉぉぉんッ!!?』
『…ジェットベクター!』

翼を失ったジェットベクターは右に旋回し、ぎこちなく再度突撃を開始…右腕のマシンガンを乱射して反撃したが、片桐はジェットベクター目がけて走り出すと右腕をブンブンと振り回し、低空ジャンプで間を詰め…ジェットベクターにラリアートを決めた。

「喰らえ、怒りのラリアートおぉぉぉぉぉ!!」
『ぎゃあぁぁぁぁぁッす!!?』

ラリアートで吹き飛ばされたジェットベクターは何度も地面に激突した後近くにあった岩に激突して機能を停止し、一方片桐は深く息を吐いて呼吸を整えバーナーベクターに目を向けた。

「さて…そこのお前、これからどうする?ここの二人と同じ末路をたどるか!?」
(だめだ、もう勝ち目はない…えぇい、こうなったら!!)

もう無理だ、あいつに勝てないと悟ったバーナーベクターは両手を上げて敵意がない事を示し、完全に白旗を揚げた。
相手が降伏したのを確認した片桐は、バーナーベクターにベースキャンプまで来る様に(うなが)し、バーナーベクターもそれに同意して片桐に従いテントへと向かって歩き始めた。

『…参りました、降伏します。』
「降伏か…無抵抗の敵を攻撃しても仕方がない。わかった、このまま一緒にベースキャンプまで来るんだ。お前さんに、いろいろ聞きたい事があるからな。」
『…はい。』



くっ、どれもこれも情けない…。
ガンナーベクターは、連れてきた仲間達が壊滅状態に追い込まれたのを見て、大きくため息をついていた。
自分自身の目で厳選したパーツをふんだんに使いカスタマイズし、魔導士に負けない力を得たつもりだったのに、どうしてこうなった?わからない事だらけだ…。
ガンナーベクターが不思議がるのも無理はない。
そもそも、彼らは『ここ以外で』普通に戦えば、対魔法スーツがあるため比較的簡単に押し切る事は可能である。当然ながらディザードRもヴァルムンクを使わない限り、倒せない訳ではない。
そう、ベクターノイド達が極端に弱い訳ではなく『ディザード達がヘルヘイムの森によりパワーアップしていたため歯が立たなかった』のである。
無論、こんなところで引き下がる様なガンナーベクターではない。彼にもプライドがあり、仲間のためにはどうしても負けられないからだ。

(…そうだ、あれを試してみるか。)
「…勝負は決しました、おとなしく降伏して下さい。降伏していただければ、私はあなた方に手出しはしません。」

ディザードRはガンナーベクターに降伏する様勧告し、すでに敵意がない事を示した。
彼女達からすれば、当然これ以上戦っていてもベクターノイドに利益はないし、今回彼女達の目的は()くまでヘルヘイムの森の調査であり、ベクターノイドと戦うのが目的ではないからだ。
しかしガンナーベクターはディザードRに向き直ると、今まで両手に握っていたハンドガンを投げ捨て左手を開き、地面に念力を流し始めた。

『確かにそれはありがたい話だ。だが、我々は簡単に屈しない。もし屈するとしたら、それは…竜の魔法使い、貴様を道連れにしてからだ!!』
「…やはり、まだ私達と戦う気なのですね。話し合えば、少しはわかり合えると思っていたのですが。」
『残念だったな。我々と話し合いをしようとしても、それは無理な相談だ。天地が逆さになろうと、和解だけは絶対にありえない。』

するとどうだろう、急にガンナーベクターの前の地面が盛り上がり人型を形作っていくではないか!
その姿はやがて少しずつはっきりとしていき、約20体の土人形が完成した。
全員白い対魔法スーツ姿に不気味なドクロの仮面を被り、手には刀や槍を装備している彼ら…臨時戦闘員『スクリーム』は、ディザードRを見据えながら一斉攻撃の命令が来るまで待機している。

「…あれは!」
『竜の魔法使いよ、これが私の答えだ…さぁ行くのだ、スクリーム達よ!竜の魔法使いを倒すのだ!!』
『『『キシャアァァァァァッ!!』』』
「…仕方がありません。行きます!」

やむなくディザードRはブレイブハートを再び構え、光の矢で一体ずつスクリームを狙い撃ちながら間を離し、横に高速移動しながら相手の様子を見ていた。
そして高速で彼女に近づくスクリームを確認するとブレイブハートの斬撃で対処し、ミドルキックで引き離した後光の矢で攻撃して撃破したが…やはり物量作戦で攻めてくる彼らには、正直きりがなかった。

「それっ!…はあっ!!」
『『『グギャアァァァァァッ!!』』』
『ははは、足元がガラ空きだぞ!!』
「…くっ!」

何より厄介なのは、ガンナーベクターがハンドガンで遠距離からスクリームを支援している上に、弾道が念力でねじ曲がって飛んでくるため、なかなか攻めに転じきれないのである。これでは、さすがのディザードRも押し切られてしまう。
 
『くっ、このままだとまずいよ、エリカちゃん。他に手を考えないと!』
「…これではらちが開きませんね。」

ガンナーベクターの支援を受け、数体のスクリームがディザードの左側面に回り手にした槍を振り回し一気に迫ってゆくが、ディザードRも感づいたのかガンナーベクターの援護射撃を軽くいなしブレイブハートで一体を斬り払い、背後から来たスクリームもバックスピンキックでみぞおちを蹴りつけつつ右から斬撃を決め、更にもう一体も至近距離からの射撃で撃破した。
しかし、数は減ってはいるもののガンナーベクターの砲撃がある以上、一気にまとめて倒さなければ道は開かれない。

『こうなったら、ロックシードを使ってみよう。それしか他に方法はないよ!』
「そうですね。使ってみましょう!」

マギカドラゴンの提案に従い、ディザードRは右手のリングを先程もらったU字型磁石が彫り込まれたリングに変更、レバーで手形を操作しふれる。

『ユナイト・プリーズ!!』

すると、ディザードRのベルトの右腰辺りに粒子が集まり、新しい紺色の箱型パーツが装着されたではないか。
縦10cm・横8cmのパーツには小さいくぼみがあり、しかもロックシードを留めるホールドまで備わっている。
ディザードRは続いてパーツの下に取り付けられているホルダーからロックシードを取り出し、横にあるスイッチを入れ錠を解除した。

『トリニティ!』

するとディザードRの真上に小さな光球が現れ円を描き、一陣の魔法陣と一体の鎧が召喚された。
魔法陣の上に浮いている鎧は、見た目がディザードの頭部に似ており、しかしディザードに本来あるべきクロスホーンがついておらず…どちらかと言えば異世界の指輪の魔法使い『仮面ライダーウィザード』に似ていた。
更に言えば、その側部には右にナイトスタイルの…左にはルークスタイルのマスクが埋め込まれており、より不思議さが増している。
これにはガンナーベクターもあ然としており、スクリーム達も進軍を止めギャアギャアと騒ぎだしていた。
否、当のディザードR本人も自身で鎧を呼び出して何だが…仮面の下で、これは一体何?とばかりにポカーンとしていたが。

『な、何だあれは…。』

「…これは、何でしょう?」
『おそらく鎧だと思うけど…まぁともかく、ロックシードを腰に取り付けて。』
「え、あ…はい。」

続いて、ロックシードを腰のパーツ…『コア・ユニット』に取り付けロックをかけると、『ロックオン!』の音声と共に手形が自動的に左へとに動き、今までとは違う待機音が鳴り始めた。
ディザードRは引き続き左手のリングを三色に彩られたリングに変更、手形にふれる。

『アームズ・チェンジ・ヘンシーン!…トリニティ・プリーズ!!』

音声が終わると同時にロックシードの果実部分が砕け、ディザードの顔に変わるや果実部のパーツが音もなく開き、更なる変化を見せる…そう、魔法陣がディザードRの真上から被さる様に通過してディザードを更に新しい姿へと変えていったのである。
その姿は、ガントレットと足アーマーを除いて全体的に白へと変わり、ローブと両肩・胸部のアーマーが光の粒子となって消え…先程とは違う、全体的にさっぱりとした『ライドウェア』に変わり、その上に鎧が被さった。

「えっ…きゃっ!!?」

はたから見るとディザードの頭がいきなり大きくなり、まるで何らかのギャグみたいな印象を受けるが、このアームの真価はここからである。
まず後頭部のパーツが展開し背部を守る装甲に、続いて左右のマスクが埋め込まれたパーツが肩アーマーとなり肩に装着、更に鎧内に収納されていた天地逆さまのパーツが胸アーマーとして前に展開し…最後にクロスホーンがカシャッと開き、装着は完了した。

『トリニティ・アームズ、三・位・一・体!!』

そこに現れた更に新しい姿のディザードは、今までのナイトスタイルやルークスタイルとはまるで違う印象を、ガンナーベクターに見せていた。
全体的に重厚なスタイルは、もはや魔法使いや魔導士の概念を完全に捨て去り、まるで騎士の様。
ディザードRと同じ黄金のフレームにコバルトブルーの装甲、その胸部アーマーも竜の顔を象っており、更に右肩にナイトの…左肩にルークのマスクが埋め込まれた肩アーマーもまた全体的に迫力を増し、体からほとばしる魔力はディザードRより幾分か強力である。
仮面ライダーディザード・トリニティ・アームズ(以下、ディザードTA)。
過去から続く歴代竜の魔法使いの中でも、おそらく最高を誇る…ディザードとヘルヘイムの森とのコラボスタイル。

「これが…ロックシードの力…。」
『すごいよ、この力!これなら、あるいは…!!』
「…うん!」

新スタイルになり更なる自信がついたディザードTAは、改めてガンナーベクターとスクリームの群れに向き直り、左手にあるトリニティ・リングを見せ、いつもの決め台詞を放った。

「イッツ…ショータイム!!」
『くっ、またしてもパワーアップを!やむを得ん、スクリーム達よ…行けぃ!!』
「では、行きます!!」

ディザードTAは魔力を右手に集中させると、手形に軽く添え小型の赤い魔法陣を展開、そこから一振りの光り輝く剣を取り出すと三体のスクリームを一気に斬り払った。

「…はぁっ!!」
『『『ギイィィィィィッ!!』』』

ディザードが新たに得た剣は、全長80cmの炎の様に赤く光輝く刀身に竜の頭部を象った鍔、そして長さ30cmの白色の柄には魔力増強のルーン文字がびっしりと書かれており、ディザードTAをさらなる魔力の高みに上らせている。
その光の剣…『ホーリーブレイズ』の切れ味はすさまじく、先程の三体のみならず後方にいたスクリーム数体をもまとめて斬り払っていた。
一気に爆発し消滅するスクリームを後目(しりめ)に、ディザードTAは残ったスクリームとガンナーベクターを倒すべく、右手のリングを変更し手形を操作、即座に手形にふれた。

『グッドチョイス、キック・ストライク…レディ・ゴー!!』

発動と同時に足元から魔法陣が展開され、両肩のマスク部からも魔法陣が展開、魔力が一気に高まってゆく。
更にスクリーム達の前にディザード・ナイト・ルークの魔法陣が現れ、それを確認したディザードTAがダッシュしキックの体制に入る。
新たなライダーキック、『トリニティ・マギカ・ドライヴ』…それは相変わらずの低空キックだがしかし、魔法陣を通過するごとに威力は増してゆき、ついには音速に近い速さへと変わりスクリーム達にキックが炸裂、彼らは爆発四散した。

「これで…フィナーレです!!」
『『『ギイィィィィィッ!!?』』』
『な…まずいっ!!』

しかもそのスピードはおとろえる事なく、もののついでにガンナーベクターにも命中した。
ガンナーベクターはとっさの判断で、念力により電磁バリアを展開していたためダメージは半減されたが、それでも内部システムのダメージは避けられなかったのかガックリとひざを突いた。

『ぐくっ、おのれ竜の魔法使い…覚えておれよ!!』

そしてガンナーベクターは捨て台詞を吐いてテレポートを使用、戦線を離脱し…戦いは終了した。
今回はヘルヘイムの森の力と、片桐や丹沢達調査隊の勇気、更にロックシードの力に助けられた結果となったが、しかしディザードTAは強大すぎる森の力に不安を感じていた。

(確かに、ヘルヘイムの森やロックシードの力はすごいのですが…もし心ない人達が、その力をむやみやたらと悪用したら…。)

そう考えると悪い予感がする…ディザードは空を仰ぎながら一人森の行く末を案じていた。

しかし、彼女達はまだ知らない。
ヘルヘイムの森の奥にある石碑が、ロックシードの発動に反応し薄く輝き始めていた事に…。


 
 

 
後書き
次回、Epic13 「仰天!?先生もアームズチェンジ!!?」 
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