ぶつかった相手は
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第一章
ぶつかった相手は
二宮祥太郎は大学生だ、趣味はとにかく遊ぶことだ。
肩の辺りまで伸ばしボリュームを抑えた黒髪のところどころに茶色くメッシュを入れている。細くやや鋭角に曲がった眉に一重のしっかりとした目を持っている。唇は薄く適度な大きさだ。鼻がしっかりとしている。
背は一六五程で均整の取れたスタイルだ、その彼は今日も遊んでいた。
大学の遊び仲間達と一緒に街でカラオケボックスに入り歌に興じている、彼は一曲歌ってから部屋の中にいる仲間達に言った。
「やっぱりカラオケもいいよな」
「ああ、都会の店だと安く済むしな」
「しかも飲み放題もあるしな」
仲間達も笑顔で応える。
「まあ今は昼だから飲み放題じゃないけれどな」
「飲み放題はまた今度だからな」
今は歌うことに専念しているのだ、尚大学の講義はさぼっている。
「今は歌って」
「それから外に出てな」
「次何処行くかだよ」
「次か、そうだよな」
歌い終えた祥太郎も彼等に応えて言う。
「マクドでも行くか?」
「マクドかよ」
「そこにかよ」
「それか折角大阪にいるんだしな」
彼等は元々神戸の学生だ、通っている大学は八条大学という。
「たこ焼きでも食うか?」
「たこ焼きか?」
「それか?」
「それかお好み焼きかな」
どちらにしても粉ものだ。大阪人は粉ものが大好きなのだ。
「安いし腹にたまるしな」
「そうだな、ソースたっぷりかけてな」
「あとマヨネーズもな」
「こてこての味でいくか」
「腹も減ってきたしな」
「じゃあそれにするか」
祥太郎は次に歌う仲間にマイクを手渡しつつ言う。
「次はな」
「よし、じゃあ次はお好み焼きな」
「お好み焼き屋で食うか」
「そこでビールでも飲むか」
「そうしようか」
こうして次の行く先が決まった、そうしてだった。
彼等はカラオケの時間が来るとすぐに店を出て大阪の街の中に入った、場所は大阪の鶴橋である。近鉄の鶴橋駅の近くだ。
広い道の左右に店が並んでいる、仲間の一人がその中を見回しつつ祥太郎に対してこんなことを言った。
「なあ、ここな」
「鶴橋か?」
「大阪だけれどな」
それでもだというのだ。
「お好み焼きとかたこ焼きはあまりないよな」
「ああ、むしろな」
あるのはというのだ、車が行き交う広い道の左右に並んでいる店は様々でラーメン屋や回転寿司屋がある、彼等が入っていたカラオケボックスもその中にあった。
「ラーメン屋多いな」
「それでも今はかよ」
「ああ、お好み焼き屋に行ってな」
そうしてだというのだ。
「お好み焼き食わないか?」
「ラーメン屋が多いな、本当に」
今彼等がいる道はというのだ。
「それはそrでいいけれどな」
「そうだよな、確かな」
ここでだ、祥太郎は仲間達に思い出した様にこう言った。
「ほら、近鉄の駅の近くに」
「ああ、あのでかい焼肉屋の傍にか」
「あったろ、店が」
お好み焼き屋がだというのだ。
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