コミューン
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第七章
「たった三人だ」
「三人で何が出来るんだ」
「三人でもな」
だがそれでもだとだ、あくまで強気の本多だった。
「志と理論があればだ」
「問題ないか」
「このままで」
「そうだ、問題ない」
あくまでこう言うのだった。
「また仲間を誘うぞ」
「しかしだ」
ここでだ、佐田鹿はその不安な顔で彼に言った。
「丘留や假屋のグループが力をつけてきている」
「あの連中がな」
かつて彼が排除した者達もそれぞれのグループになっている、そして対立しているのだ。
「あの連中との闘争もある」
「そちらはどうする」
「闘うだけだ」
ここでも強気の本多だった。
「俺達はな」
「闘うか」
「それだけか」
「ああ、そうするからな」
こう断言してだった、彼等は三人で丘留や假屋、そして神達といったかつての同志達と争った。既にもう理論はなかった。
暴力には暴力だった、組織同士で争う日々に明け暮れた。その彼等を見て公安の者達は首を傾げさせて言った。
「あの手の連中はいつもだな」
「ああ、分裂するな」
「どうでもいいことでいがみ合ってな」
「それで分かれていくな」
組織の集散を見て言うのだった。
「それで小さいグループに分かれてな」
「同じ共産主義かぶれだろうに」
公安から見ればそうなる、彼等は。
「それで何でなんだ」
「あいつ等はあんなにいがみ合うんだ」
「同じ共産主義かぶれだろう」
「仲良く出来ないのか、お互いに」
「革命を起こす為に」
「何かあれだな」
ここである者が言った。
「キリギリスとかカマキリみたいだな」
「キリギリスか」
「カマキリか」
「ああ、そうだよ」
そうした昆虫類と同じだというのだ。
「連中はな」
「そういえばキリギリスってな」
「カマキリもな」
公安の面々も昆虫類については知っている、こうした種類の生物はというと。
「同じ仲間でも一緒の場所にいたら殺し合うな」
「餌はたっぷりあってもな」
「同じ種類でも」
「そうなるな」
「ああ、だからな」
それでだというのだ。
「あいつ等も同じなんだよう」
「同類だから余計にか」
「ああしていがみ合うのか」
「資本家とか当局に向かうより前に」
「そうだろうな」
それでだというのだ。
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