Sword Art Online~星崩しの剣士~
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07:紫の聖花
前書き
超久しぶりの更新な気が······w
俺達は今、47層――フローリアという、花が咲き乱れる場所にいた。理由は、まぁ俺事メテオの同行者である男性、エースが······
「たまには攻略をやめて、少し休暇を満喫するのもどうだ?」
なんて言い出したからである。今ここにいるのは、ただ単に攻略の呪縛から解き放たれる為だ。決してここに来なければいけなかった訳でもないし、特にする事もない。
――まぁ、たまにはこういうのんびりした休暇ってのも、悪くないな――
「これで同行者が女の子とかだったら、尚良かったけどな······」
「それは嫌味かい?心の声がだだ漏れだよ、メテオ」
おっと、どうやら口にしてしまっていたようだ。まぁ、別に否定する気もないけど。
「しっかし、こう何もする事がないってのもなぁ······正直、結構暇だよな」
「そうだね······何もプランはないし······」
俺達はぼやきながら、歩き続ける。······暇だ。こうしてみると俺はあんまりエースと会話してた訳じゃないし、趣味だって分からない。そして何より、何を話せばいいのか分からない。
――何か起きねーかな······こう、退屈凌ぎになりそうなシチュエーションとか――
何をするでもない俺の思いは、案外あっさりと叶った。
――微かではあるが、悲鳴が聞こえた。女性だろうか。ついさっきまでの俺なら、「ひゃっはーっ、女の子だーっ!」とか言ってはしゃいでいたかもしれない。しかし、今はそれどころではない。緊急事態だ。
「メテオ、ちょっと行ってくるッ······!!」
俺が物思いにふけっている(?)間に、エースは颯爽と駆け出し、武器を装備する。しかし、流石にエースの敏捷値は高く、俺では追い付く事が出来ない。
――んだよあれっ、面倒くせぇなっ······!――
やっとの思いで辿り着いた先に待っていたのは、これでもかと言う程体を膨れ上げさせた植物系のモンスターだった。恐らく悲鳴を上げたであろう少女は、なすすべなくその巨体の腕に挟まれ、今尚HPを減らしている。
「待っていろっ、直ぐに助けるッ!」
エースは焦りの色を浮かべ、一気にダッシュで詰め寄り、拳を突き立てる。植物系のモンスターはさして痛みを感じた訳でもなく、ただこバエがとまったかのようにケロっとしている。やがて此方に気付き、狙いを定めると邪魔なゴミを捨てるかのように少女を投げると、己の拳が効かなかった事に放心しているエースに一直線に突進する。
「まったく、いくらなんでも急展開過ぎんだろーがッ······!!」
俺は疾走し、今尚固まっているエースをタックルで吹っ飛ばすと即座に抜刀。そして、敵の攻撃を受け止める。
――···ッ、重ぇッ!!――
重過ぎる。まるで何トンかの物を上から落とされているかのようだ。俺ではいずれ潰されてしまう。そう思った俺は、剣をスライドさせ、何とかその場を脱出する。
ズドォンッ!!
轟音と共に強風が吹き、俺の体を宙に浮かせる。
「しまっ······!」
宙に浮いている俺では防御の体勢もとれず、敵の攻撃に直撃してしまう。
意識が飛ぶかのような攻撃だった。普段からタンクなどしていないので軽装だが、それがここでは仇となった。俺のHPはごっそりと削られ、レッドゾーンぎりぎりの所で停止する。
――くそっ、身が持たねぇっ······このままじゃっ······!――
ぼやける視界の端に、奇妙な物を捉えた。それはゆらゆらと動き、相手を翻弄する。まるで陽炎のような······。
「メテオっ、立てッ!!早く逃げろッ!」
エースだ。俺が見たものは、エースが敵の近くを跳躍したりダッシュしったりしていたものだったのだ。
俺は痛む腹部を押さえながら何とか立ち上がり、おぼつかない足取りで歩き、その場を後にした―――
* * *
暫くすると、エースが小走りに近寄ってきた。どうやら上手くまいたようだ。しかもちゃっかり先程の女性まで運んで来てやがる。そう言えば俺達はその子を助けに行ったんだった。死にかけだったから忘れていた。
「んん······」
エースが来て直ぐに、エースの腕の中で微睡んでいた少女が可愛らしい声を上げ、ゆっくりと目を開けた。
「ああ、起きた······大丈夫か?怪我はない?」
エースは目覚めた少女に優しく微笑みかけ、相手の状態を確認する。
「凛々しい·····」
少女はエースをじっと見つめ、やがてそう呟いた。正直言って、いきなり過ぎて何を言っているのかよく分からない。
「あー、えっと······大丈夫みたいだ」
エースは困ったようにそう言うと、少女をゆっくりと降ろした。よく見ると、かなり可愛い少女だった。紫色の肩まである髪に、紫の花飾り。白や紫をベースとした服。細いシルエット。まさに、女神だ。
「あー、その、僕はエース。こっちはメテオ。君は?」
「私は、カトレア、と申しますわ」
んん?私?一体何処の貴族様だ?まさかキャラ作りって訳じゃあないだろ、絶対。そうだったら軽く引くか軽蔑するわ。
「ええと、カトレア。お前は――」
「気安く名前を呼ばないで下さい」
――え?――
一瞬理解に苦しんだ。何この人?気安く呼ぶなって、怖ぇ······。
「私の名前を呼んでも宜しいのは――」
少女――カトレアはエースを見つめると、腕に絡み付くように抱きつき。
「エース様だけですわ」
「な、何じゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
俺の絶叫は、フローリア全体に響き渡ったという事を後々知った。
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