久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第九十五話 中田の決断その十一
智子と豊香もだ、暗い顔になりこう言うのだった。
「まさかね」
「そうなるとは思いませんでした」
学園の中に集まってだ、そのうえで話すのだった。
「彼はそう考えていたとは」
「水の剣士と最後の最後に」
「考えもしなかったわ」
「本当に」
「止めてもです」
聡美は二人にこれ以上はないまでに沈痛な面持ちで述べた。
「あの人は」
「聞かないのね」
「はい、このことばかりは」
こう智子に答える。
「そうでした」
「それではなのね」
「はい、私はこれから水の剣士の前に赴き」
「そしてなのね」
「彼に告げます」
中田がだ、彼と闘うことを望んでいるとだ。
「そうするしかありません」
「あの、それでなのですが」
豊香がだ、ここで聡美に問うた。その顔はおずおずとしながらも希望を見出してそれにすがろうと必死になっているものだった。
「水の剣士が受けなければ」
「炎の剣士の望みはね」
「はい、なくなりますよね」
「炎の剣士は相手が望まないならね」
闘いをだ、そうであればというのだ。
「闘わないわ」
「そうした人ですね」
「ええ、それにね」
今度は上城のことを話す聡美だった、彼はどうかというのだ。
「あの人が闘う理由はこの戦いを終わらせることよ」
「そうですね、では」
「水の剣士はこの申し出を受けないというのね」
「そうなりますよね」
「本来はね。けれどね」
それでもだというのだった、聡美はここで。
「彼もまた剣道家だから」
「剣道家であるが故にですか」
「剣道家は剣と剣を交えるものね」
「そうですね、よく言われていますね」
「だからね」
それでだというのだった、ここで聡美は。
「あの人もね」
「闘いを受けますか」
「そうなると思うわ」
この予想をだ、聡美は曇った顔で苦々しく言った。豊香だけでなく智子に対しても。
「そしてね」
「生きるか死ぬかですか」
「そうした激しい闘いになるわ」
こう言うのだった。
「残念なことだけれど」
「私達は今回はね」
智子もだ、曇った顔で言った。
「告げて見るしかできないわ」
「それだけしかですね」
「迂闊だったわ」
溜息と共にだ、智子は豊香に答えた。
ページ上へ戻る