戦国異伝
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第百五十六話 加賀平定その十
「あまり余を舐めるではない」
「はい、上様をないがしろにしてはなりません」
「ですから」
「ではその時が来れば」
「仲裁ですな」
「うむ、そうするぞ」
義昭は上機嫌で能を見つつ述べた、そして。
そうした話をしてだった、義昭は三人で能を聞いてそうしてだった、義昭は酒をしこたま飲んでからだ、二人にこうも言った。
「では、ですな」
「ここは」
「うむ、余としても頃合を見てな」
こうした話をして今は手を打つ時を待っていた、義昭はあくまで自分で動いているのだと思っていた。その実態を知らずに。
幕府については松永は織田家の軍勢の中でだ、唯一彼と親しい羽柴にこう話した。
「幕府は最早です」
「最早とは」
「何の力もありませぬ」
「そう仰いますか」
「まあそれがしのせいでもありますが」
ここでだ、松永は自分のことも話した。
「しかしそれでもです」
「幕府自体がですか」
「どうしようもない下り坂にありました」
松永が義輝を弑逆するその前から既にだというのだ。
「山城一国を何とか治めるだけになっていました」
「それでは」
「はい、山城は小さな国ですな」
都もあり天下の中心だ、しかし山城一国ではなのだ。
「尾張や美濃とは比べものになりませぬ」
「あそこ一国だけではとても」
「まず嘉吉の乱で義教公が赤松氏に弑逆されました」
これで将軍、幕府の権威が大きく落ちた。この乱が幕府のつまづきはじめと言ってよかった。
「そして応仁の乱もありました」
「都を焼け野原にしたという」
「それからです」
幕府の力は決定的に落ちたのだ、どうにもならないまでに。
「それから三好家にも追い出されたりしまして」
「どうにもならなくなり」
「まあそれがしもです」
松永はここでもまた自分のことを言う。
「それで幕府は最早都の御所だけです」
「そこだけのものですか」
「今や」
「左様ですか」
「ですからもう力はないのです」
言い切った、まさにそれが今の幕府だとだ。
「しかしです」
「それでもですか」
「幕府にはまだ権威があります」
それがだとだ、松永は羽柴に話す。
「例え山城一国ですら治められなくなり都の一隅にいるだけでなってもです」
「まだ権威がありますか」
「ですからそこにです」
松永は今の話の本題に入った、それはというと。
「誰かが入れば」
「といいますと」
「上様に吹き込むなりしては」
「まずいですか」
「まあそういうこともあるかも知れませぬな」
松永は笑ってこう羽柴に話すのだった。
「若しかすると」
「ですか」
「よく佞臣だのがいますな」
「異朝の歴史にはあるとか」
羽柴はこの話は平手や林等学のある者に聞いている、明の歴史には古来よりそうした輩が時折出て来ていると。
「そう聞いていますが」
「宦官等ですか」
「確か趙高とか」
ここでだ、羽柴は首を傾げさせつつこの名前を出した。
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