少年少女の戦極時代Ⅱ
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オリジナル/未来パラレル編
第36分節 戦の前の静けさ
――決戦の日は来た。
咲は、紘汰やザックと共に、ガレージの外で晶の見送りを受けていた。
「みんな気をつけてね。私は待つしかできないけど、みんなの無事を祈ってるから」
「姉ちゃんが待ってくれてると思えば百人力だ」
紘汰と晶の別れは特に長くなった。孤児で姉弟ふたりきり、助け合って生きてきたというから当然だ。
葛葉姉弟が話す間、咲はザックと揃って水を差すことなく待った。
「んじゃ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
晶は微笑んで軽く手を振った。咲たちは晶に微笑んで返した。
いってらっしゃい――「おかえりなさい」を言うための、別れのためではない挨拶。生きて帰ってほしいと祈る晶のためにも、その言葉を無駄にはできない。
咲たちは晶に背を向けた。持ち物はドライバーとロックシードだけ。
戦装束だけが今日の彼らに必要なもの。それ以外は、全て生きて帰ってからだ。
咲、紘汰、ザックは、それぞれのロックシードを開錠した。
「「「変身!」」」
ドラゴンフルーツ、オレンジ、クルミの鎧が彼らを覆い、鎧武者へと変える。
彼らはロックビークルを展開し、バイクになったそれに跨った。エンジンを噴かす。3人は同時にアクセルを捻り、決戦の舞台へと走り出した。
ヘルヘイムの大樹の南のスクランブル交差点。今日はユグドラシル・コーポレーションによる交通規制が敷かれて余人は立ち寄れないようになっている。
ここが各社のアーマードライダーの集合場所だった。
『すごい数……』
アーマードライダーが軽く50人近く集まった集合場所を見渡し、月花はほう、と溜息をついた。
ガイムグループ以外にもアーマードライダーを職業として営む企業があるのは聞いていたが、これほどの数とは想像だにしなかった。
(イチゴにパイン、キウイ、マンゴー……めずらしい果物もたくさん。スターフルーツ、ライチ、ナシ、ザクロ、ポンカン、クリ……あれ? 今一瞬、ドリアンとドングリが見えた気が)
『おーい、咲~』
『あ、ごめん、今行くっ』
月花は慌てて鎧武とナックルと、現地で合流した龍玄のいる場所に駆けて行った。
『光実くん。今日、舞さんは?』
『神社だよ。ウチの神社、一応、有事の避難先に指定されてるから』
『炊き出し係?』
『それもあるけど。今日の作戦が上手くいくようにって、神主と一緒に祈祷してる。そんなことしか自分にはできないからって』
《各社のアーマードライダーの皆さんはこちらに集まってください。今から最終説明を始めます。集まってくださーい》
牧歌的なアナウンスだが、これから行われる説明がどれだけ殺伐としたものか、この場の誰もが知っている。
ゆえに大した混乱もなく、場のアーマードライダーたちは集まり、傾聴の姿勢に入った。
ユグドラシル社の黒影トルーパーが説明した概要は、貴虎のプレゼンの内容とそう変わらなかった。
《皆さん、混成アーマードライダー部隊の役目は、爆破班が大樹の根元を破壊し終わってからです。皆さんの同時攻撃によって、クラックに大樹を倒して押し込む、大変重要な役目です》
ごくり、と月花は改めて息を呑んだ。ヘルヘイムの大樹を駆除できるかは、月花らの双肩に圧し掛かっているのだ。
《では、実際にヘルヘイムの大樹を倒す際の陣形と順番を説明します。――、――》
説明をのめり込んで聞いていると、月花の手が横から握られた。
『紘汰くん……』
『俺もザックもミッチも付いてる。力入れすぎるなよ』
『……ありがと』
月花は鎧武を見上げ、笑いかけた。仮面で隠れて伝わらないと分かっていても、紘汰の優しさに、笑まずにはおれなかった。
後書き
休みが取れたので今の内に上げたらあああああああ!!!!\(゜ロ\)(/ロ゜)/
久々の晶さんですが、すぐに出番終了です。何より作者が寂しいですorz
とにかく沢芽市のアーマードライダーをたくさん集めてみました。量産型ドライバーが超希少ですが市場で出回っていたり、直で貴虎に買い付けにいった猛者もいたり。
咲はまだ12歳と21歳の記憶がごっちゃなので、営業ライダーの数の多さにびっくりです。
一瞬いたあのライダーたちは誰か――誰かは皆さんもお分かりですよね?(*^_^*)v
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