少年少女の戦極時代Ⅱ
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オリジナル/未来パラレル編
第30分節 9日前の空白
紘汰が戒斗と予期せぬ再会をした翌日。おそらく咲が記憶を無くしたであろう日。
その日もまたインベスが出現した。紘汰はいつも通り3人で出動しようとしたが。
「これくらいなら、あたしとザックくんで充分よ。二人で行きましょう」
咲はザックの手首を掴むと、有無を言わさずガレージのドアに連行していった。こうして紘汰は待ちぼうけを食らった。
せめてインベス用のレーダー画面を観て、二人が無事勤めを終えたと確認し――
「待って、紘汰! またクラックよ。しかも今咲ちゃんたちがいるとこのすぐそばっ」
意味するところは明白。紘汰はヘルメットを持ってガレージを飛び出した。そして、サクラハリケーンで現場へ急行した。
着いた現場で見た光景に、紘汰の中で何かが切れた。
低級インベスに囲まれ、地面に倒れて袋叩きにされる月花の――咲の姿。
「変身ッ!!」
ドライバー装着、ロックシードの開錠とセットを10秒も使わず終えて、鎧武に変身した。大橙丸と無双セイバーを両手に構え、インベスの群れに突っ込んだ。見敵必殺。当たるや低級インベスを斬り伏せていった。
そして、やっと月花に届く、そんな時だった。
月花がDFボムを手に持ったまま起動したのは。
咲の自爆戦法でインベスは倒せた。だが。
「バカ野郎! 死ぬ気か!」
ザックが、変身を解いてしゃがみ込む咲の胸倉を掴み上げた。
「やめろっ、ザック」
「お前彼氏だろ!? 怒れよ! 恋人が目の前で自爆したんだぞ!?」
ザックは咲を紘汰のほうに突き飛ばした。握った両拳はそのままに、「先に帰る」と言い捨て、ローズアタッカーに乗って去ってしまった。
「落ち込むなって。咲が無事なら俺はいいんだよ。だから、あんまり危ない戦い方しないでくれ。いつかいなくなるんじゃって不安になるだろ」
「……がう、ちがうの、コウタ。ちがうの。あたし、思い出して。ヘキサのこと」
「!」
「ヘキサも、あんなふうに囲まれて、蹴ったり殴られたりして、死んだのかな。あんなふうに、痛くて、怖くて、理不尽なきもち、だったのかな。ヘキサ。ヘキサ。ヘキサ、ヘキサ、ヘキサヘキサヘキサヘキサヘキサ――!」
紘汰は条件反射で咲を抱き締めていた。また発作が来ると思ったのだ。
しかし、その時の咲はいつもと様子が違っていた。
咲はそれ以上叫びも暴れもせず、紘汰の胸を押し返し、千鳥足で歩き出した。
――この時に紘汰は気づくべきだった。咲が自爆した際に頭にダメージを受けていたことを。
その日は咲を自宅まで送って行った。ケガが心配だから、と理由をつけて。
咲は紘汰が話しかけても相槌を返すだけで、自らしゃべることはなかった。アパートの部屋の前に着く頃には会話もなくなっていた。
「じゃあ俺はこれで。ゆっくり休めよ」
帰ろうと踵を返した紘汰の、背に、何かがぶつかった。次いで、服の布地を引っ張られる感触。
「さ、き」
「ごめんなさい」
すぐに、昨日から今までの態度のことだと、察しがついた。
「いいよ。俺こそごめんな。咲、嫌がってたのに」
「いやじゃない。コウタがイヤだと思ったことなんて、一度だって、ない」
「本当に?」
背中に押しつけられた頭が上下する感触。肯いたようだ。
「じゃあ」
――昨日の続き、してもいいか?
後書き
結構端折っておりますが、これが咲が記憶喪失になる前日のことです。
外的要因その1は、純粋な戦闘ダメージです。
またリア充爆発しろ発言来るかもしれませんが、この後が問題です。
普段の咲が、ヘキサの死によって「どういうふうに」苦しむのか。それをご覧になって、咲の彼氏に自分ならなれるか? という点を考えていただければいいなと思う所です。
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