ハイスクールD×D~進化する勇気~
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第十話
前書き
十話でございます。
「「はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
俺はヴァーリのいる所まで跳び上がりヴァーリとすさまじい拳による戦いが起こる。
そして下では右腕のあった部分を抑えながらこちらを見つめるアザゼルさん。
任せろ、俺が絶対に連れ戻してやるからよ……!アザゼルさん!
「っ!喰らえ!!」
ヴァーリは俺に魔力弾を撃ってくるが俺はそれを左手の籠手で弾く。
そして俺は一瞬の隙をついてヴァーリの懐まで一気に潜り込む。
「はああぁぁぁぁ!!」
俺はヴァーリの腹に一発ぶち込もうとするが
『Divid!』
力が半減される。
「くっ!」
俺のパンチはいとも簡単にヴァーリに掴まれる。
「はあぁぁぁぁ!!」
ヴァーリは俺を地面に叩きつけようと背負い投げの要領で俺を投げ飛ばす。
俺は瞬時に後ろを向いて全力で魔力を放出しながら速度を落とす。
そしてなんとか安全に着地する事に成功した。
「ドライグ。あれが白龍皇の翼の能力なのか?」
『ああ、あれが半減の力だ。相棒も俺の力を使えればいいのだが……あれは俺の本来の力である力の乗倍するからな。あまり使えんのが難点だ。それでも勝つんだろう?』
そうドライグの真の力は力の乗倍……つまりは2の二乗……4倍とこのようにどんどん増えていくのである。
それを使えば勝てるだろう。でも俺は本気を出すわけにはいかない。
本気を出す時……それは本当にピンチな時以外はないようにしている。
それでも、俺は……
「ああ、絶対にヴァーリにはこれ以上の悪行はやらせない……!」
俺は再びヴァーリに向き直る。
「流石だね、イッセー。人間の身でありながら私と互角まで戦えるなんて……それが才能ってやつなのかな?まあ、そんなのは私の前では意味はないけどね!」
ヴァーリは翼を大きく広げながらこちらに突進してくる。
ここが、正念場って事か……!
ヴァーリが突進してくる中、俺はそのまま構えるだけだ。
相手が突進してくる場合には自分も突進するのではなくこうやって構えたまま待っている方が対策は立てやすい。
「これで、終わり!!」
「っ!!」
ヴァーリが俺の顔を殴りつけようとした瞬間に俺は少しだけ顔を横に逸らしながらもそれでもヴァーリから目を離さない。
そして俺の拳がヴァーリの顔に当たるかという距離で俺は寸止めをする。
寸止めをするとどうなるか?答えは……風圧が顔面に襲いかかる!!
「っ!!ぐぅ!!」
そして風圧で強靭な筈の顔を覆っていたマスクが破壊される。
よし、今だ!!
俺はヴァーリを抱きしめる。
「っ!な、なにをっ!?」
「ヴァーリ……もう、休んでもいいんだぞ?」
「私は止まらない……絶対に!」
「そうか……強制的にでも休ませる……知ってるか?眠れるお姫様ってのは王子様のキスで目を覚ますんだぜ?」
俺はそう言って……自身の中にある神器、進化する勇気を進化させる。
「禁手……!繋がりあう力……!」
俺はそう呟き……ヴァーリの唇に自分の唇を重ねる。
「っ!ムゥ!?」
ヴァーリは俺にキスをされた事に驚いているが……次の瞬間
「っ!あああああぁぁぁぁぁぁ!!!???」
ヴァーリの背中にある白い翼が今まで見た事がないくらいまばゆく輝きヴァーリは俺から離れそして苦しみだす。
そしてあまりの苦しみに耐えきれなかったのか鎧を解除する。
「な、なんで……?」
「俺の神器。進化する勇気の禁手……繋がりあう力の能力だ。これは他の神器とは違って対象に俺の力を譲渡する力だ。それもそれを半永久的に相手に宿す事が出来る……でも相手自身が俺に心を開いていなければ体と神器、両方に向かう筈の力が神器のみに向かう。そして神器は許容量を越える力を入れられ、半ば暴走状態になる」
「そ、そんな禁手が……?」
そう、これこそ俺の神器、進化する勇気の禁手なのである。
ちなみになんでこんな面倒くさい事をしなければいけないのかえおなぜ俺が知っているのかは……後で説明する。
「まだ……まだ、終わってない……!」
ヴァーリは倒れながらも尚も立ち上がろうとする。
「なんでだ……お前はなんでそこまでして自分の力を知らしめようとするっ!」
「貴方がさっき言ったじゃない!私は迫害されてきた、私を迫害してきた奴らに私の力を見せつけるんだ!!」
そう言いながらも……ヴァーリは泣いていた。
まるで……彼女の本当の姿はこんな事したくないとでも言わんばかりに。
「私は……ただ、認めてほしかったの……!」
ヴァーリは膝をかくんと折り曲げてその場に崩れ落ち座り込む。
「皆、私を迫害する……同年代の男の子や女の子……その親や大人達……皆が皆、同じ事しか言わない……「この忌み子が!」って……」
「…………っ」
忌み子……それは簡単に説明すれば呪われた子供に言われる言葉。そしてそんなのは皆の妄想が作り上げた憎悪を向ける対象。自分にこんな事が起こったのはあそこの子供のせいだ……そんな謂れもない罪を被せられた子供達に付けられたその子供達を侮辱する蔑称。
ヴァーリは右手を地面に叩きつける。
「だから!私をバカにしてきた奴らに私の力を見せつける!絶対に!……貴方にはわからないよね、だって貴方には才能があったんだから……」
「それは違います!!」
と、その場に向かない優しい声が聞こえてきた。
この声は……
「アーシア……」
声が聞こえた方向を見ると、そこにはアーシアが立っていた。傍にはゼノヴィアもいる。
「済まないな、イッセー。アーシアがどうしても言いたい事があると言って聞かなくてな」
ゼノヴィアが俺にごめんと謝る。
それに関してはいい。でもなんでアーシアが……
「私は知っています……イッセーさんの力の根源を……イッセーさんはただ守る……その為に力を求めているんです。その為にイッセーさんはなんでもやってきました……私が見た時にはイッセーさんは血反吐を吐きながらも自身に鞭打ちながら修行を重ねていました……」
そうか、見られてたんだな……。
「アーシアの言う通りだ……俺には才能なんてこれっぽっちもない。才能が欲しいと思った時にはなにもなくて……すべてが終わった後に……俺はこの神器とドライグの存在に気づいた……」
『相棒……』
ドライグが俺を心配してくれている。
俺の両親が殺された時に俺はただ見ている事しか出来なかった。そして俺が目を覚ました時には……既に両親は事切れていた。
俺はそれに絶望し、力を望み……神器が顕現出来るようになったのとドライグの声が聞こえるようになった。
「俺には才能なんてないよ……むしろお前のそんな才能に嫉妬さえ感じる」
「なんでなの……なんでそこまで力を欲して……力に溺れなかったの?」
ヴァーリはわからないとばかりに俺にそう聞いてくる。
俺は自分の右手を見ながら答える。
「俺には守る存在があった……家、両親との思い出、母さんが残してくれたどうすれば料理が上手くなるのかとか、父さんが残してくれた男が絶対にやってはいけない事とか簡単な体術……」
そして今度は左手を見る。
「そして俺の家族になってくれたアーシアやアーシアとの思い出、ゼノヴィアとの出会い……俺には守る物がこんなに多い……だったらそれらを壊そうとする奴らが出てきた時に俺が守らないといけない……」
「………………」
ヴァーリは俺の言っている事を黙って聞いている。
「お前の望む強者ってのは……すべてを捨ててでも勝ちをもぎ取ろうとする奴らの事だ。俺はそんなの望んでない……俺が望むのは平穏だ。そしてそれを脅かす奴らを倒すには……力が必要だった……」
「イッセーさんは私たちを守ってくれているんです……だからこそ、私はイッセーさんを信頼するんです……ヴァーリさん、貴方もそうなんでしょう?イッセーさんのキスを通じて感じ取った筈です」
そう、俺が初めて禁手を使用したのはアーシアを助けた時なのである。
あの時はドライグがうるさかったな……いきなりなんでキスをするんだ!とかさ。
「ヴァーリ、お前には心があるだろ?それに守りたいって思う奴らがいるはずだ……」
俺がそう言うと、ヴァーリの後ろの方から物音が聞こえてくる。
そこには三国志風の鎧を身に纏っている青年のような見た目で、軽い口調の男と黒い和服を着てダイナマイトボディーを持つ女性。
「美候……それに黒歌……」
「ヴァーリ。言っとくがな、俺たちはお前が白龍皇だからお前についてきてんじゃない。お前がお前だからついてきたんだぜ?」
「そうにゃ。ヴァーリは自分に誇りを持つべきにゃ」
そしてその後ろの方からも何人かがやってくる。
「ヴァーリ、私たちは貴女についていく為に貴女の所についているんですよ?」
「そうですよ、ヴァーリさん!」
紳士的な風体でスーツにメガネの格好をした男と魔法使いの格好をした金髪の美少女がそう言う。
「アーサー……それにルフェイまで……」
「なんだ、やっぱりお前にだって仲間がいるじゃないか。仲間ってのは守るためにある存在なんだからな」
俺はヴァーリの近くまで向かってヴァーリを抱きしめる。
「イッ……セー…………イッセー………君……」
少しずつ目の端に涙を溜めていくヴァーリ。
「もう、無理に気を張る事はないんだ……だから素に戻ってもいいんだぞ?」
「イッセー君……イッセー君っ!うわあぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
ヴァーリは俺の胸の中で……今までの事を悔いるように……俺にすがるようにして泣いた……。
ドライグ……俺、救えたのかな?
『それは俺にもわからん……だが、ヴァーリは救えたんじゃないか?』
そっか……俺は救えたのか……だったら、よかったな。
俺はヴァーリの背中をポンポンと叩きながらそう思った……。
そしてあれから数日……あの後、学校は悲惨な状況になったので現在修復中。生徒達には臨時休校が伝えられた。
あの後、ヴァーリの処遇はどうするかを話し合った結果
「むにゃ……むにゃ……」
俺の隣でヴァーリが眠っている。まあ、この状況を見ればわかるだろうがヴァーリは俺の家に来る事になった。
俺としてはアザゼルに頼めないかと言ったのだが
『お前に恩を感じてんだ……それにこの三大勢力会議が終わった後、ヴァーリをお前の所にやる予定だったしな。それがちょっと事情が変わっただけさ』
そう言って俺にヴァーリを預けたのである。
まあ、ヴァーリは俺の家にアザゼルが元々寄越す予定だったのは聞いていなかったのか顔を赤くしていたが……ものすごく可愛かった事だけここに記しておこう。
「落ち着いて寝てるな……もうちょっと寝かせてやるか……」
俺はヴァーリを起こさないようにそっとベッドを抜けて朝食を作るためにキッチンに向かう。
「ん?何やら何かを作っている音といい匂いが……」
俺は気になりそのままキッチンを覗くと
「ああ、イッセーちん。おはようにゃん」
そこには着物の上からエプロンを着た黒歌がいた。
「ああ、確か……黒歌、だったか?」
「そうにゃん。失礼させてもらって台所借りさせてもらったけど……ダメだったにゃん?」
「いや、ダメじゃないけど……このいい匂いは?」
「ああ、それはきっと味噌汁にゃ。私のオリジナルブレンドにゃ」
「オリジナル?」
オリジナルでこんな美味そうな匂いなんて……
「黒歌って結構……ていうかすごく料理上手いのか?」
「にゃはは……私たちのチームの中では一番上手いかな?今はヴァーリにも教えてるにゃ」
「へぇ……」
これは朝飯が楽しみだな。
「イッセーちんも結構な料理のお手前だったにゃ。昨日の夕食結構美味しかったにゃ」
「こんなに上手い黒歌にそんな言葉を送られるのなら自信もつくってもんだな。それじゃあリビングで待ってるな」
「お楽しみにしてるにゃ」
そう言って俺はリビングに向かう。
そしてそこには
「おう、イッセー!おはようだぜ!」
「イッセー君、おはようございます」
「イッセーさん、おはようございます!」
美候達がそれぞれソファや机に座りテレビを見ていた。
まあ、ここまで見れば何がどうなっているかはわかるだろう。美候達もこの家に住む事になったのである。
ヴァーリが俺の家に住む事が決定した後
『だったら俺らも兵藤の家に住むぜ!ヴァーリがずっとイッセー君イッセー君とうるさかったからな。どんな男か気になる所だぜ!』
と、そのような事を言うものだからヴァーリが恥ずかしがって美候に攻撃を加えてたし……。
「皆早いな」
「僕等は大体この時間帯には起きてますからね。ヴァーリはまだ寝ているのでしょう?」
「ああ」
「ヴァーリは私たちと活動していた時には殆ど寝ていませんでしたからね。貴方がいる事で安心しているのでしょう。休ませてあげましょう」
「そうだな」
やっぱりヴァーリは無理してたんだな。まあ、ヴァーリ達の事も俺が守るけどな。
「お待たせにゃ~朝ご飯が出来たにゃ~……む?ヴァーリにアーシア、それとゼノヴィアが起きていないにゃ……イッセーちん、三人を起こしてきて欲しいにゃ。料理は暖かい時にじゃないと料理に失礼にゃからね」
「わかった」
俺はアーシアとゼノヴィアの寝ている部屋に向かいドアをノックする。
「アーシア、ゼノヴィア~朝飯だぞ~」
『は~い、わかりました~今からちょっと着替えて降りますので~ほら、ゼノヴィアさん!起きてください!』
『ちょっと待ってくれ……まだ眠い……』
ゼノヴィア……どんだけ眠いんだよ……。
アーシアにゼノヴィアを任せて俺は自分の部屋に向かう。
俺の部屋に入るとヴァーリはまだ俺の寝ていたベッドで布団に包まっていた。
「ヴァーリ、朝飯だぞ」
「う…うぅん……イッセー君……?」
「ああ、朝ご飯だ……起きろ」
「起きる……」
そう言って起き上がるヴァーリ。ちなみにヴァーリが着ているのはなぜか俺のシャツだ。
なぜかこれだけは譲らなかったんだよな……何でだろ?
「ほら、行くぞ」
「うん……」
目をゴシゴシと擦りながら俺の手に引かれるその姿はさながら眠い子供を起こして連れていく父親みたいな図……あれ?俺、何だか考え方が古い?
『相棒……お前、そんな事を考えるようになったのか……』
待てコラ!変な勘ぐりしてんじゃねぇ!
『いいさ、俺はその辺も理解はある方だからな』
この野郎……!
と、こんな事を考えていてはいけないので考えを振り払ってヴァーリを連れていき、席に座らせる。
アーシアとゼノヴィアも席に座っている。
そして俺も席に座る。
「今日の朝食は鮭の塩焼きにたくあん。そして目玉焼きにご飯と味噌汁にゃん」
献立を紹介して自身も席に座る。
「おほっ!黒歌の味噌汁か!こいつは楽しみだぜ!」
美候はもう食べたくて仕方ないようだ。
「それじゃ……」
俺は皆を見渡してから手を合わせる。
皆も俺に倣って手を合わせる。
「いただきます」
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
兵藤家は今日も平穏だ。
後書き
こんな感じで終わりましたが……どうだったでしょうか?
感想を是非!
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