赤城と烈風
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防衛の要
13試陸上戦闘機『天雷』、試製双襲『屠龍』
前書き
改定前
昭和13(1938)年、史実では中島飛行機へ試作を指示された十三試双発陸上戦闘機。
重爆撃機に同行する援護戦闘機として計画、長距離飛行を考慮し複座機となりましたが。
十三試双発陸上戦闘機もまた1936年の教訓に拠り、設計思想に根本的な変化が生じます。
ソ連空軍の防弾性能が高い重爆撃機を迎撃、爆撃を阻止する局地戦闘機が必要と認識。
長距離援護機を意図した試作指示は撤回され、重爆撃機を退治する短距離型の高速機を要望。
冬の戦争で実績を挙げた北の鷹、フォッケウルフfw187に倣い双発単座戦闘機の仕様へ変更。
十三試双発陸上戦闘機は進攻用の長距離援護機から、防空用の短距離邀撃機へ。
対重爆用の駆逐機、一撃離脱戦法に徹する双発単座機へ変貌。
陸軍は1936年の衝撃を深刻に受け止め海軍に先行、1937年に川崎へ試作指示を出していましたが。
海軍機の開発実績が無い為に陸軍を説き伏せ、愛知が設計を担当する事となりました。
前述の通り1936年の衝撃に拠り、会社の垣根を超えた技術協力が実現しています。
愛知は十三試艦上爆撃機と同時開発の為、土井武夫技師を中心とする川崎の設計陣へ協力を要請。
初の海軍向け戦闘機となる十三試双発局地戦闘機の開発に、川崎は全社一丸となって取り組みました。
これまで川崎に発注経験の無い海軍も同社の熱意を高く評価、愛知飛行機と共同開発の形式へ変更。
土井武夫技師と三菱の堀越二郎技師は大学の同期生、個人的にも親しい間柄です。
競合相手の同業他社、商売敵に就職しますが互いの設計経験や発案を熱く語り合う仲でした。
親友同士の2人は自分と異なる意見を頭から排斥せず、尊重し冷静に助言する見識を備えていました。
艦上機に特有の製造仕様が三菱と愛知から、初めて海軍機を担当する川崎へ伝えられる事になりました。
川崎飛行機と関係の深いドルニエ社を通じ、数々の具体的な助言が土井武夫技師へと届けられました。
フォッケウルフ社のfw187開発担当者、クルト・タンク博士も率直な意見と苦心談を開陳し激励。
愛知飛行機と関係の深いハインケル社の飛行機設計者達も、様々な助言を贈呈。
ドイツ2社の好意と国内各社の技術協力に拠り、日本初の双発単座戦闘機は順調に開発が進行。
fw187に類似の試作機は複列14気筒の三菱A8金星、空冷星型の発動機2基を装備し1939年1月に完成。
ソ連空軍の誇る重爆撃機と直接対決を強いられる陸軍は、制式採用を待たず既に大量発注を実施。
十三試双発陸上戦闘機は左右の主翼に発動機を装備する為、機首へ大口径銃が搭載可能です。
1932年に製造権を購入、1934年から国内生産の艦対空機銃を航空機用に改造。
九三式13.2ミリ固定機銃を試作、合計4挺を機首に集中して搭載します。
左右の主翼には弾道の確認、照準の修正用として各1挺7.7ミリ機銃を装備。
主翼装備の固定機銃は通常、発射角度を偏向させ機体の前方で射線を交差させますが。
直角に搭載し弾道を平行に直進させ、射線2本の内側を有効範囲を確認します。
13.2ミリ4挺は合計で装弾数960発、7.7ミリ2挺は装弾数1100発を携行し空対地銃撃を反復。
効果ありと判定されますが敵爆撃機の装甲強化を懸念、先行量産型は更に破壊力を強化。
同じガス利用式のホチキス機関銃、九六式25ミリ艦対空機銃も固定機銃型を試作。
装弾数は合計225発に減少しますが機首4挺を換装、重爆対策の切札と位置付けています。
海軍では制式化以前の為、非公認ですが『天雷』の愛称が定着。
十三試陸上戦闘機『天雷』は、採用された日本機の中でも群を抜く最高速力を叩き出しました。
搭載能力にも余力があり、様々な用途に対応する派生型の試作が進行中しています。
極東ソ連軍の戦車部隊を撃退する為、多数の襲撃機が要求され双発単座戦闘機に着目。
エリコン20ミリ機銃4挺で装弾数240発、九九式襲撃機と共通化を図った換装型を試作。
愛知1社の製造能力では大量の発注に対応不可能な為、川崎と立川が製造を担当します。
既に空対空襲撃機『屠龍』1型は栄、2型は誉を装備する分類を陸軍は非公式に決定。
地上襲撃機型も二式双発襲撃機『屠龍改』と称し部隊へ配備、制式化は来年の予定です。
海軍は更なる性能の向上を狙い三菱A10火星へ換装、1941年9月に完成した試作機を重視。
来年に対爆撃機用重戦闘駆逐機、A10火星装備型の制式化を予定。
陸軍は重防御の装甲爆撃機が出現する事態を懸念、発展型を計画し主翼を強化。
A10火星を18気筒化した社内開発番号A18、仮称木星A型への換装も検討中です。
1940年に開発計画が発足した空冷星型、複列22気筒3千馬力級の発動機。
離昇出力は3100馬力と計算され三菱、川崎、愛知の発動機製造部門が協力し開発中です。
A18木星を更に上回る大直径の発動機は当初、社内名称A21《土星》と仮称されますが。
相撲好きの担当者が『土が付くと負けに繋がり、縁起が悪い』と猛反対。
一時は三菱A8と同様に成功の再現を祈願、金星の別名《明星》に決まり掛けました。
96式艦上爆撃機『明星』の水上機改造型、対潜哨戒機『明星改』が好評な為に撤回。
様々な思惑が交錯し紆余曲折の末、共同開発の発動機はA21≪土星≫と仮称。
1939年に試作され8月に初号機が完成、1940年6月に審査運転を完了。
A18木星A型として採用されますが整備作業の簡易化、稼動率の向上を図り改造案も進捗。
カム前方集中式の狭隘な構造を見直し、過密な配置を分散させる前後分離式へ変更。
弁の作動と燃焼、気筒冷却能力の効率化を実現し過熱《オーバー・ヒート》を予防。
内部構造に余裕を生み保守、点検の作業が容易となり整備性と稼働率を向上させます。
22気筒のA21土星はA18木星A型の改良型、仮称E型の技術を盛り込み前後分離式を採用。
直径は1370ミリから1500ミリ、重量は1260キログラムから1500キログラムへ増大。
回転数もA18木星仮称E型と同じ2600回転/分に設定、確実に動作する事を重視。
来年はA型に続き仮称E型、A21土星も試作品が完成すると見込まれています。
発動機の直径が大幅に増大する為、単発機をA21土星へ換装する事は非常に困難です。
機首が大型化し視界の悪化と上昇力、最高速力と運動性能の低下が懸念されます。
双発単座の十三試陸上戦闘機『天雷』は単発機と異なり、主翼に発動機を配置しています。
機体構造はA21土星への換装に対応可能、発動機直径の増大には対応可能と推定されます。
重量が増大する為に機体の強化は必要ですが、馬力の増加で性能向上が見込めると判断。
機首25ミリ機銃4挺の装弾数は合計800発、7.7ミリ機銃2挺は合計1360発に増量の予定です。
海軍は本土防空任務を担当せず、対重爆撃機用の重戦闘駆逐機は配備を急ぎません。
A8金星の装備型は採用せず、A10火星を搭載の『天雷』も来年に制式化の予定です。
A18木星の装備型は試製『天雷改』、A21土星の装備型は試製『天雷改二』と仮称。
陸軍では双発襲撃機『屠龍』3型、4型の名称を予定しています。
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