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久遠の神話

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第九十四話 憂いが消えてその十五

「誰もがね」
「そうなんだ」
「予言を見ることなくね」
「だから君達もなんだ」
「ええ、彼等が未来を自分で切り開くのなら」
「君達もそうする」
「そう、そうするわ」
 必ずだ、そうするというのだ。
「私達もね」
「そう、わかったよ」
 ここまで聞いてだ、アポロンは頷いて答えた。
「それなら僕は占わないわ」
「そうしてもらえると有り難いわ」
「僕の予言は声を受けてするものだよ」
「自分からは行わないものね」
「そう、ましてや聞きたくないという相手にはね」
「されませんね」
「予言はね」
 どういったものか、アポロンは予言に対する彼の持論を述べた。
「無理にではなく知りたい者に言うものだよ」
「その予言をですね」
「そう、そしてね」
 予言の持論をだ、アポロンはさらに語る。
「予言は絶対ではないよ」
「未来ではあってもですね」
「未来は一つではないから」
 人にしろ国にしろ、というのだ。未来は決まってはいないというのだ。
「絶対ではないよ」
「絶対にですね」
「それは」
「そう、未来は変えられるから」
 予言の通りにならない場合もあるというのだ、そのえで彼はこうも言うのだった。
「ギリシアの英雄達の多くは予言の通りの悲劇を辿るけれど」
「エディプスの様に」
「そして他の英雄達も」
 中には英雄でない者も予言の通りになってしまう、予言の神であるアポロンはそのことについても話すのだった。
「その未来を選んでしまっているんだ」
「気付かぬ場合もありますが」
「気付いていなくともね」
 選んでしまっているのはだ、事実だというのだ。
「紛れもなくね」
「そしてそうした未来に行く道を選んでいるから」
「そう、彼等は皆そうなるんだよ」
「悲劇の結末を迎えてしまうのですね」
「そうなっているんだ」
「では未来を。悲劇に向かう未来を選ばなければ」
「助かるんだ」
 そうなっているというのだ、英雄達もだ。
「剣士達は本来は」
「この戦いでもですね」
「そう、今の戦いでもね」
 間違った未来を選んでしまい、というのだ。
「一人だけ生き残っていたよ」
「そして残る十二人は」
「彼等はですね」
「降りる剣士は出ただろうけれど」
 それでもだというのだ、その殆どは。
「死んでいたよ」
「その多くが」
「そう、けれど未来は変えられる」
 アポロンはこのことを確かな声で女神達に話す。
「その選択次第でね」
「悲劇もですね」
「そうだよ、だから彼等も」
「剣士達も」
「未来を変えていっているんだ」
 そして助かってきているというのだ。その中には。
「次の炎の剣士も。これで」
「未来を変えられて、ですね」
「助かりますね」
「そうなるよ。必ずね」
 アポロンは今は予言の力を使わないままでだった、こう言っていく。
 そのうえでだった、明後日の手術中田の家族を救うその手術に赴くのだった。


第九十四話   完


                       2014・1・2 
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