万華鏡
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第五十八話 活動再開その十一
「どうしたのよ、昨日から」
「あっ、部長さん」
「元気ないわよ」
こう言ってきたのだ、五人に対して。
「というか悩んでいる顔ね」
「それは」
「隠す必要はないわよ、あと何を言っても怒らないから」
それもないというのだ。
「何でも言ってみて」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
「ええ、まあランニングをしながらでいいかしら」
話をするのならというのだ、部長から五人に言った言葉だ。
「準備体操とかもね」
「私達にお付き合いしてくれるんですか」
「今から」
「当たり前でしょ、それは」
ここで五人に付き合うということはだというのだ。
「だって私はあんた達の先輩でこの部の部長であるからね」
「先輩だからですね」
「こうしたこともですね」
「そう、ちゃんと付き合うのがね」
それがだというのだ。
「当然のことだからね」
「そこで当然って言えるのが」
「凄いですけれど」
「凄くないわよ、全然ね」
それもだ、全くだというのだ。部長は五人とは正反対の明るい笑顔で五人に対して言葉を返した。
「まあそういう話をね」
「今からですね」
「聞いてくれるんですね」
「何でも言ってみて、お金の話題以外ならね」
「お金じゃないです」
「そのことじゃないです」
それはだとだ、五人も返す。
「そうしたことはです」
「ないですから」
「そうよね、それじゃあね」
部長は五人をまずは外に出した、そしてだった。
準備体操とランニングをしつつだ、五人から聞いた。五人は部長に昨日自分達が昼食の時に話してそのうえで聞くのだった。
そして話を聞いてだ、部長はグラウンドでランニングをしながら共に走っている五人に対していつもの明るい笑顔で言った。
「同じね」
「えっ、同じっていいますと」
「まさか」
「ええ、そうよ」
こう五人に言うのだった。
「私達とね」
「じゃあ先輩達も」
「部長さんもですか」
「一年生の頃は不安だったんですか」
「そうだったんですね」
「そうよ、物凄く不安だったから」
このことを今話すのだった。
「二年生になってやっていけるかってね」
「私達みたいにですか」
「やっていけるのかが」
「だってね、教えてもらうだけでしょ、一年の頃は」
「はい、確かに」
「それだけです」
「それで教える立場になるのってね」
そうなると、というのだ。
「やっぱり不安よ」
「ううん、部長さん見ているとそう思えないですけれど」
「先輩達も」
「私達から見れば余裕ですよ」
「それでいつもちゃんと考えておられて」
「あんた達中学の時もそれぞれ部活してたでしょ」
ここで部長は五人にこう言った。
「してない娘も学校の委員とかしてたわよね」
「はい」
中学の時は部活に入っていなかった里香が答えてきた。
「図書委員で。私委員長でした」
「その時どうしてたの?」
「最初は戸惑って、どうしていいかわかりませんでした」
里香はその時のことを思い出しながら答えた。彼女にとってはもう遠い昔のことだったが今思い出してそのうえで部長に応える。
「それでもです」
「そうよね、それでもね」
「何とか手探りみたいな感じでやっていって」
「それで何とかいったでしょ」
「顧問の先生にも相談したりしました」
里香は部長に話していく。
「それで何とかって感じだったのね」
「友達にも相談して」
「そうなのよ、私達だって中学の時の経験も思い出して」
「そしてなんですか」
「今だってね」
部長は前を見て走りつつ話す。
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