万華鏡

「そうするんだって」
「ゲリラ的なのね」
「部長さんが楽しそうだからってね」
　そう考えてだというのだ。
「部長さんがね」　
「あの人がなの」
「そうなの」
「何か部長さんらしいわね」
　琴乃は朝部室で会った彼女のことを思いながらしみじみとした口調でこう言った。
「本当にね」
「そうよね」
　里香も琴乃のその言葉に応えて頷いて返す。
「あの人らしいわよね」
「本当に突拍子がないっていうか」
「しかももう生徒会にはお話してだから」
　そしてだというのだ。
「もう許可は得たらしいわ」
「うちの生徒会って凄いおおらかよね」
「何処かの部活からお願いされたらね」
「それでよね」
「相当危ないことでもないとね」
　申請を受ければというのだ。
「許可出すからね」
「殆どね」
「先生の方も生徒の自主性重んじてるし」
「それでね」
　生徒会も許してなのだ、そうしてなのだ。
「簡単に通ったのね」
「そうだったから」
　それでだったのである。
「ハロウィンのゲリラライブ決まったのよ」
「普通になのね」
「そう、普通にね」
　まさにだというのだ。
「決まったのよ」
「じゃあ私達も」
「受け持ちの場所はもう決まってるらしいわ」
「それぞれのグループの？」
「そう、全部ね」
　そうしたことも既にだというのだ。
「決まってるらしいわ」
「相変わらず手際いいわね」　
　景子も横から話を聞いて目を丸くさせて言った。
「部長さんって」
「発想だけじゃないから」
「行動力と計画性もあるからね」
　だから生徒会にも話をして今の時点でどのグループをどの場所に送るかも決めたというのだ。
「それでなの」
「そう、あの人は凄いから」
　色々と問題のある人物であることは確かだがそれでもだというのだ。
「力はあるのよ」
「部長に相応しい人よね」
　そのことは紛れもない事実なのだ、部長は。
「そうよね」
「ええ、ただ本当に」
　里香は困惑を隠せないといった顔で述べた。
「突拍子がないのよね」
「それがね」
　彩夏も困った顔で話す。
「あの人は」
「そうよね、ちょっとね」
　里香も困惑を隠さない顔のままである。
「何を考えてるかわからないっていうか」
「あれじゃね？西武の監督だった東尾さん」
　美優はケンカ殺法で知られたこの人物の名前を出した。
「あの人もいつも突拍子もなかったっていうからな」
「博打采配ね」
　里香は東尾の監督としての采配を身も蓋もない表現で言った。
「そうよね」
「ああ、けれど部長さんはな」
「博打じゃないのよね」
「そこが違うんだよな」
「閃いてね」
　そしてだというのだ。
「そこから動いていってね」
「確実にされるんだよな」
「ええ、凄い人よ」
「あの人が部長でな」
　例え閃きで動く人間でもだというのだ。