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知ったかぶり

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第三章


第三章

「わかったな」
「はい、それではすぐに」
「そうしておきます」
「ではだ。今日はだ」
 何を食べるか、その話だった。
「大内に言え。鳥にせよとな」
「鳥ですか」
「それですね」
「青鷺にせよ」
 その鳥だというのである。
「わかったな。ではだ」
「はい、では大内さんにです」
「お話しておきます」
 この日も豪奢な美食を楽しむのであった。ところがだった。
 ある日だ。その大阪の繁華街の料亭でだ。こんな話が出て来たのだった。
「えっ、あそこの料理ってそうなのか?」
「どうやらそうらしい」
「鮎は養殖ものでな」
「野菜は使い回しでな」
「しかも米だって二級米らしいぞ」
「それを最高級って言ってたのか」
 このことがだ。ネットで話題になったのだった。
「それって詐欺だろ」
「なあ」
「そんな商売普通の食堂でもしないぞ」
「ああ、全くだ」
「洒落にならないだろ」
 そしてこうも話されるのだった。
「食い物扱う人間がやったらいけないことだろ」
「そんな店行けるか」
「ふざけるな」
「お高く止まりやがってよ」
 店の評判は暴落した。次から次に不祥事が出てマスコミにも叩かれてだった。遂にこの店は閉店に追い込まれたのだった。
 そしてだ。その店を有力者に紹介した山原もだった。
 政界やマスコミの有力者達は彼等を信用しなくなった。彼の評判も落ちたのだ。
 謝礼は減りだ。次第に寂しい状況となってきていた。
 しかし彼の傲慢は変わらない。まだこう言っていた。
「今日はだ」
「はい」
「店に行かれますか」
「中華だな」
 そこにだというのだった。
「そこに行こう」
「わかりました」
「車を出せ」
 弟子に運転させそのうえでだった。彼はその中華の店に向かう。だがその途中だった。彼の乗るリムジンが渋滞に巻き込まれたのだった。
「何だ、これは」
「渋滞です」
「それは見ただけでわかる」
 後部座席で忌々しげな顔をして弟子に返す。リムジンの中は豪奢そのものでありそこにいるだけで生活ができそうな程だった。
「それはだ」
「では一体」
「全く。愚民達が」
 周りに対する言葉だった。
「好き勝手に車を運転するからそうなるのだ」
「左様ですか」
「全く。わしを誰だと思っている」
 今度はこんなことを言うのだった。
「全くな」
「しかし今はです」
「ふん、急げよ」
 無茶を言ってだった。彼は渋滞の中にいたのだった。そうして店に行くとだった。
 客達がだ。山原の姿を見て囁くのだった。
「あの人がだよなあ」
「ああ、政治家とかマスコミの有力者にあの店のことを紹介していたらしいな」
「どうやらな」
「あの人だったんだな」
「おい、知ってるか?」
 そしてだ。誰かが言うのだった。
 
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