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辛い思い出も

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第二章


第二章

 戻って来れば全てがそのままだったのだ。あの校門もだ。
 女の子達がいたその場所も当然そのままだ。あの時はあまりにも暗く見えたそこがだ。今は。
 日差しが照っていた。明るい場所だった。赤や黄色、それに紫の花達が飾られそれが白い日差しに照らされている。奇麗と言っていい場所だった。
 彼が通ったその場所もだ。あの時は真っ暗に感じたが今は明るい。それが違っていた。 
 それから彼が責められた階段のところに行った。そこはというと。
 あの時は女の子が遥か高い場所にいる様に感じられた。しかし今は違っていた。
 彼がその時いた階段の下に来た。そこからその場所を見上げると。
 彼の身長から少し高い程だった。あの時は天と地よりも差がある様に感じられたというのにだ。
 今は違っていた。高いとも思わない、何とでもないものだった。あの時とは本当に何もかもが違っていた。
 階段を登ってみるとすぐだった。すぐに女の子がだ。あの時にいた場所に来た。ほんの数秒で来られる、そうした場所に過ぎなかった。
 これだけの差しかなかったんだな、彼はそう思った。実際に登ってみて。
 そしてそのまま女の子達に冷たくされていた教室に入ってみた。今は学校の中は誰もいない。
 そこも変わっていない。けれどあの時の彼はおらず女の子達もいない。それがあの時のとは違っていた。
 冷たく暗く感じられた学園全体が今は暖かく明るい場所に感じられた。何も変わっていない筈なのにだ。
 あの苦しい時から数年経ってだ。彼は今はそう感じたのだ。過去の場所を巡って。
 どうしてそう思えるようになったのか自分でも考えてみた。しかしだ。
 その時が終わってしまい歳月が経ったからだ、そうとしか思えなかった。
 ただそれだけのことなのにだ。彼は自分がそこまで変わってしまったとは思っていない。しかし今はそう思えるものになってしまっていた。
 辛い過去もだ。それが終わり過去のものとなり歳月が経てばだ。それはただの思い出に変わる。そこにあったものはその時は暗いものに感じてもそれが変わることもある。彼はそうではないかと考えた。
 歳月が経った、たったそれだけのことだ。しかしそれだけのことでだ。彼は今は辛い記憶を思い出のものにしていた。辛い高校時代はもう過去のものだった。今彼は明るい日差しの中にいて。それから今新しい一歩を踏み出して。その彼が通っていた高校から離れたのであった。


辛い思い出も   完


                  2011・3・27
 
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