リリカルなのは~優しき狂王~
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A‘s編
第二話~予想外の始まり~
前書き
こんにちは、最近は執筆と積みゲーを消化している作者です。
只今TOSラタトスクの騎士をばやっています。
プレイしていて、以外にTOS二作品にライを突っ込みやすいなと感じてしまいました(^_^;)
ヒロインは似たような境遇のプレセアか、若しくはしいなで構想を考えるとやけにしっくりきました(笑)
今回は劇場版の最初の方になります。
ではどうぞ
???・繁華街
人が寝静まり、建物と建物の間に光が届かなくなる時間帯。ビルとビルの間。俗に裏路地と呼ばれる場所に彼はいた――――――いや、正確には現れた。
光を伴うこともなく、何か扉のような物から出て来るといった劇的なものを携えることなく、何もない空間から男性が唐突に現れて立っていたのだ。
誰か目撃者がその場にいればパニックになっていたのだろうが、幸いにもその街の治安は良いらしく浮浪者のような人間が見ているということもなかった。
超常的な現象であるがあまりに呆気ない登場をした本人、ライは自分の身体に異常がないかを確かめるように手を握ったり開いたりしていた。
「成功――――かな?」
(自己診断プログラムによるトラブルの検出なし。こちらも問題はありません、マスター)
蒼月からの念話を使用した報告に頷きで返し、ライは自分が今どのような場所にいるのかをざっと確認した。
(裏路地?現代建築があるのなら一定の文明はあるってことか)
取り敢えずその場に立っていてもどうしようもない為、ライはその場を逃げるように裏路地から出ていくことにした。
辺りは暗く、道中にあった時計から今が深夜の四時頃と把握すると、彼はこれからの行動方針を大まかに整理していく。
(現時点での手がかりはあの声だけ。そして声の主が伝えたかったのは自らの主を救って欲しいと言う救難信号。声の主――――彼女の主が進退窮まった状況にある可能性が高い、と)
Cの世界で聞いたメッセージの女性の声を思い出しながら、歩道橋を渡る。流石にこの時間帯は乗用車の数は少なく、繁華街に近い場所でも辺りは街灯の光ぐらいしか見られなかった。
(これからの基本方針としては声の主の捜索。この世界の把握。何を持って彼女の主の救いとするのかを検討し実行する。あとは――――ん?)
そこまで考えたところでライはふと気づく。これまでは自分の思考の海にドップリ浸かっていて気付いていなかったが、彼は自分が何故ここまで道を確認する作業をせずに歩いているのかを考えていなかった。
「…………あれ?」
一瞬戻ることを考えたが、そんなことをせずともここまでの道のりを暗記しているようにスラスラと頭の中にこの辺り一帯の地形の知識が浮かんでくる。
怪訝に思い、近くにあった道路標識や電柱に貼り付けてある住所を確認することで、ライは今自分がどこにいるのかを理解し、その地名を口にした。
「ここって……海鳴?」
自分の知らない異世界に来たと思っていた彼にとって、そこは意外にも以前来たことのある土地であった。
海鳴市・都市部
ちょっとした肩透かし気分を味わったライは街中を歩いていく。陽が昇り、通勤時間も過ぎ、街が慌ただしさを抑えた頃、ライはヒソヒソと隠れるように行動していた。
「ハァ…………うっかりしてた」
どこか呆れたようにため息を溢し、ライはこれからどうするのかを考える。
ライの降り立った海鳴の季節は現在冬らしく、そのため息は白い靄となって本人の頬を撫でる。それで寒さをより強く感じたのか、ライは着ているアッシュフォード学園の制服の襟をいつもよりもきつく締める。
そう、“学生服”の襟を。
「……この世界の日本の警察は優秀なんだな。治安の良さもあるのかもしれないけど」
ライがコソコソと行動している理由は彼の格好にある。彼がこの世界に来るとき、自分の服装を特に深く考えることをせずに着慣れた学生服を設定した。その時はまさか海鳴に限らずキチンとした社会が存在する世界と想定していなかった為、特に問題が起きるはずもないと考えていた。しかし、実際に来てみれば現代日本と言う立派な社会が築かれた世界であり、一般の学生が平日の昼間から堂々と歩いていれば警察に職務質問をされるぐらいには治安は良い場所でもあった。
(目的を果たす前にやることが増えたな……)
ぼんやりとそんなことを考えながら、ライは目的の場所を探す。そしてその途中いきなり身体が空腹を訴える音を鳴らし、本日何度目かのため息を漏らした。
海鳴市・都市部の外れ
住宅街等の居住地とビル等が密集する都市部の間、その二つがちょうど混じり合うような場所。そんな場所のある建物からライは出てくる。その建物は、それ自体は割と目に付くような場所にあるが、出入り口は注意して探さないと見つけにくいように設計されていた。
建物を出てすぐ、首に下がっている相棒からの念話が頭に響いてくる。
(……マスター)
(……)
(……大変申し上げにくいのですが)
(言わないで……あこぎで後ろ暗いことをしてる自覚はあるから)
(お労しや)
割とノリノリな反応をする蒼月であった。
ライがまず行ったのは活動資金の調達である。蒼月の――――と言うよりは管理局が支給するデバイスに標準的に装備され、格納されているサバイバルキット。その中には管理外世界でも資金の確保ができるようにと、金のインゴットが含まれていた。
この世界で蒼月を再現した際、デバイスのパーソナルデータをいじることはなかった為にそのサバイバルキットも蒼月の格納領域に存在していた。
無一文であったライにとって活動資金として、その存在は大きかったのだが如何せん世界との相性が悪かった。
金を換金しようにも、本人の身分証がない為換金できなかったのだ。
そこでライは元の世界での黒の騎士団での活動の事を思い出し、非合法の賭博場を見つけ出す。そして、金のインゴットを担保に賭けチェスや将棋、トランプなど、ライにとって手堅く勝利できる勝負を行い、一定の資金を調達する。
もちろん、勝ち過ぎて角が立てば後々面倒なことになるのも知っていた為、ライは担保にしていた金のインゴットを敢えて返却してもらうことをせずにその店から出て行ったが。
ライからしても、今必要なのは即座に使える資金であって、換金できない金のインゴットは置物以上の価値がない為、その辺りを気にしたりはしなかった。
とにもかくにも、一定の資金が手元にできたライはまず服の購入から行っていった。入店前に学生服の上着を脱ぎ、ワイシャツと黒のスラックスと言う出で立ちで服を購入する姿はその店の店員にとっては奇怪に見えていたらしいが、そこそこ高価な服を購入することで深く追求されるのを避けた。
と言っても、買ったのは紺色のフード付きコートとマフラーで、それを上から着ただけではあるのだが。しかもマフラーに至っては、サイズを間違えて二人で一つを使う用の長いものであった為に蒼月の格納領域の肥やしになってしまった。
服装の問題を解決してから、適当なコンビニで食料を購入し今は都心部にあるベンチでそれを食し、一息ついていた。
ここまでの状態に持ってくるのは中々に時間が掛かっていたらしく、今はもう陽が陰り暗くなっている。それを認識すると、そこで初めてライも少し疲れを実感した。
ビル街・とあるビルの屋上
冬の時期、ビルの屋上という場所には基本的に人は寄り付かない。高所での空気の冷たさや風の強さがその原因の一つであろうが、今はそれに夜と言う時間の要素も含まれていた。
しかし、そんな中で一件のビルの屋上には、一人の人影があった。それはその時間帯に人がいることも異常と感じるが、それ以上にそこにいる人間の容姿が最もその風景の異物感を生み出していた。
その人物は見た目がまだ幼い少女であった。それも小学生低学年と言っても通じるような。彼女はビルの屋上の淵に腰掛け、手の平で浮かしているハンマーのキーホルダーとそのキーホルダーが映し出す球状のホログラフを見つめている。
そのホログラフは現代日本とはかけ離れた技術であり、そのキーホルダーは次元世界ではデバイスと判断される代物であった。
「魔力反応検知、近場に2つ。保有魔力のランクは不明、しかし高ランクの可能性大」
デバイスから機械音声が紡がれる。それに頷くこともせず、その少女は立ち上がる。彼女の動きは一つ一つが力強く、何かを心に秘めたような芯の強さを伺わせた。
「やるぞ、グラーフアイゼン」
静かに下された命令。それに呼応し、彼女の足元に三角形の赤き魔法陣が敷かれた。
海鳴市・繁華街
「囲われた?」
空気が変わる。それを視覚的にも感覚的にも実感したのはほぼ同時であった。
いきなり自分以外の歩行者が消え、何が起こったのか混乱するが蒼月からの報告によりその疑問は即座に消える。
「魔力反応を検知。広域隔絶型の結界と断定。術式はベルカ」
必要な情報を最低限伝えてくれる相棒に内心で感謝しつつ、ライは一先ず近くの物陰に隠れた。
(誘い込まれた?いや身を隠す時間があったからそれは無い。何かを逃さないように括った?可能性はあるが広域型の結界を張ったことに矛盾する。誰かを燻りだしている?だとすれば向こうは目標の正確な配置を把握していない)
頭が冷静に状況を判断し、この結界を張った人物の意図を予測していく。
それから数分後、この状況が続きやり過ごしたとしても現状で何の進展もないと判断し、ライは全体が見渡せるような場所に向かうために、頭の中でこの辺りの地図を広げた。
周辺への警戒を保ちながら、ライは歩を進める。そしてたどり着いた先は中央に噴水がある開けた広場のような場所であった。
一応姿を隠せるような場所に潜み、周囲の状況を探り始める。
すると視界の端に何か断続的に光るものが見えたため、そちらに眼を向けるとどこか見覚えのある色が見えた。
「ピンクと赤の魔力光?」
思わず口から溢れた言葉通り、桃色と赤色の二色の光の線が交差し、夜の中空に線を引いていく。
「あの飛び方って……」
その光の動き方に見覚えがあるライであったが、どこかその自分の考えに違和感が生まれる。その説明のできない気持ち悪さを自分の中で結論づけようとしていると、今まで見ていた2つの光がこちらに向かって来ているのを確認する。
「!」
思わず身体が動きそうになったが、隠れている意味がなくなるため、何とかその場に押し留まり状況を把握することに努める。
2つの光の内、桃色の光の方が一足早く地上に降り立つと、それに向かって押しつぶすように赤色の光が着弾した。
衝撃と渦巻く魔力の暴風で土煙が舞い、ライの視界を一瞬塞ぐがそれもすぐに晴れ2人の魔導師の姿を見ることとなった。
「は?」
口から間抜けな声が漏れる。その声は響いて来る轟音にかき消され、言った本人の耳にすら届かなかった。
その声を漏らした本人であるライは目の前で派手にぶつかり合っている2人に見覚えがありすぎて、思考が一瞬真っ白になってしまう。
その内の1人は自分の認識と特に誤差はなかった為、別段驚くことはなかったのだがもう1人の方が問題であった。ライが知っているその人は自分と同じくらいの外見年齢をしていたはずなのに、そこにいたのは見た目小学生くらいの少女。
しかもそのライが知っている2人はとても仲が良く、決して街中で決闘まがいのことをするような人物ではないと思っていた為、目の前で2人が激しく戦闘を行っていると言う現実に頭がついてきていなかった。
「なのは、ヴィータ副隊長?」
口から溢れたその言葉通り、ライの視界の中で争っているのは六課におけるスターズ分隊の隊長、副隊長である高町なのは(と思われる少女)と鉄槌の騎士ヴィータであった。
後書き
と言う訳で、今回は本当に本編の触りまででした。
今回書いていて、本当にライは巻き込まれ体質が似合うなと思いました(笑)
皆さんに質問なのですが、この世界でのヒロインって誰がいいと思いますか?
作者的に書きやすいのはリンディですけど、アニメよりも夫の気持ちの描写がはっきりしていた分難しいかもしれません。まぁ、できなくはないのですが
皆さんのご意見ご感想などをお待ちしております
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