戦国異伝
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第百五十五話 加賀入りその十一
「ではよいな」
「今度は後ろから攻めてですか」
「そして叩きますか」
「今度の敵は十万、しかしその十万の敵もじゃ」
「後ろから攻めればですな」
「そうすれば」
「背を打たれれば誰も脆い」
これは軍にも言える、だからだというのだ。
「ここはな」
「はい、それでは」
「今より」
「すぐにここを発つ」
そしてだというのだ。
「北の軍勢に向かうぞ」
「それでは」
こう話してだ、そして。
信長は自軍を北の軍勢に向かわせた、実際に北の軍勢は織田家に気付かずそうしてだった。その後ろを。
一気に攻める、それで十万の敵を一撃で打ち崩し。
反転しようとする彼等をさらにだった、その振り向き様に。
槍で突き刀で斬る、十万の軍勢も総崩れになった。
彼等もまた逃げはしなかった、しかし勢いはどうしようもなかった。
彼等も倒した、これで残るは。
「北西の軍勢だけですな」
「うむ」
確かな声でだ、信長は佐久間に答える。
「後はな」
「しかし殿」
佐久間はわかっていた、だがあえてこう信長に問うたのだ。
「もう日が暮れようとしていますが」
「そうじゃな、しかしじゃ」
「夜討ちですか」
「それを仕掛けるぞ、皆干し飯を食え」
それで腹を膨らませてだというのだ。
「そのうえでじゃ」
「北西の軍勢に向かいますか」
「勢いはそのままじゃ」
そしてだというのだ。
「消えぬうちにな」
「敵は全て倒しますか」
「敵は一日で倒してじゃ」
そのうえでだというのだ。
「このことをじゃ」
「加賀中に知らしめますか」
「うむ、そうするのじゃ」
「二十七万の大軍を一日で倒したことを加賀中に」
「その為にもじゃ」
夜討ちでだというのだ。
「倒すぞ」
「わかりました」
「それでは」
家臣達も頷く、そうして。
織田家の軍勢は飯を食い休むことなく北西の軍勢に向かう、彼等は夜だったが土地の者の案内も受けて先に進む。
案内役は百姓達だった、先陣の長政はその彼等にこう問うた。
「しかし御主達はじゃ」
「わし等がですか」
「何でしょうか」
「一向宗ではないのじゃな」
問うのはこのことだった。
「だから我等を案内してくれるか」
「加賀にいるのは百姓だけではありません」
「他にもいます」
こう答える彼等だった。
「わし等は浄土宗ですね」
「わしは日蓮宗です」
「わしは臨済宗です」
それぞれ宗教が違うというのだ。
「確かに一向宗の多い国ですが」
「それでもか」
「はい」
そうだというのだ。
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