戦国異伝
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第百五十五話 加賀入りその八
「好きなだけ倒すがよい」
「では思いのままに」
「その褒美を」
家臣達もにやりと笑い応える、こうしてだった。
織田家の軍勢はすぐに動いた、そうして。
その北東から来る敵軍を見つけた、見ればその数は確かに。
「九万ですな」
「そうじゃな」
信長は山内に応える。
「それだけじゃな」
「では」
「いや、待て」
ここでだ、信長は彼等の動きを見た。今織田軍は山の中におり彼等はその山に入ろうとしているところだった。
「まだじゃ」
「まだとは」
「迂闊に攻めぬ方がよい」
こう言うのだった。
「今はな」
「それは何故でしょうか」
「見よ、敵は我等に気付いておらん」
山の方を見ようともしない、ただ入ろうとしているだけだ。
「これは使える」
「では今は」
「一軍を出せ」
山の外にだというのだ。
「そして奴等を動かすのじゃ」
「山に入らせぬのですか」
「そうじゃ、そして我等は山の裏手に向かう」
「ではその一軍に山の裏手にまで敵を誘わせて」
「そこで上から攻める」
山の上、そこからだというのだ。
「一気に降り立ってな」
「では」
「五郎左に伝えよ」
命じるのは彼だった。
「軍を率い山を出てじゃ」
「そして、ですな」
「あえて敵の前に出よ」
そしてだというのだ。
「それで敵を山の裏手に誘き出せとな」
「わかりました」
こうしてだった、丹羽はあえて山から出た、そして一向宗の軍の前に出た、その彼等を見てすぐにだった。
丹羽は己が率いる軍勢にだ、こう命じた。
「よいか、ではな」
「はい、それではですな」
「我々は」
「そうじゃ、山の裏手まで逃げよ」
そうせよというのだ、だが丹羽が言うのはこれだけではなかった。
「よいか、ただしじゃ」
「はい、敵に追いつかれてはなりませんな」
「ここは」
「追いつかれるな、そしてじゃ」
さらに言う丹羽だった。
「離すでない」
「つかれさせず離れずですか」
「そうするのですか」
「そうじゃ、そうして敵を誘き出すのじゃ」
そうしろというのだ。
「わかったな」
「そういうことでありますか」
その言葉を聞いて笑ったのは万見だった、彼は笑って言った。
「成程、それでは」
「うむ、敵は主力が山の中にいるとは気付いておらぬ」
その証拠にだった、門徒達は丹羽達は見ていても山の方は見ていない、彼もそれを見て言うのだ。
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