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赤城と烈風

作者:fw187
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防衛の要
  12試推進式戦闘機『閃電』、『震電』

 
前書き
改定前 

 
 当世界では1937年、12試水上初歩練習機の試作を指示していますが。
 前述の通り中島海軍大臣の意向を受け、渡辺と立川へ発注されています。

 経験の浅い両社は既存の常識(セオリー)に囚われる事無く、常識を覆す高性能機へ挑戦。
 海軍は新形式の局地戦闘機、重爆撃機を撃退する邀撃機(インターセプター)の機種を隠蔽。

 双胴形式と先尾翼(エンテ)型の機体には、同じ発想の実験機(モデル)が存在しますが。
 推進式を暗示する水上機、諸外国の関心が薄い初歩練習機と設定し欺瞞情報を発信しています。


 1940年4月1日、エイプリル・フールの当日に設計を開始された航空界の異端児。
 北欧スウェーデン国営航空機製造会社(サーブ)、開発番号j21。

 プロペラを後方に配置した異形の機体、前例の無い推進式戦闘機です。
 サーブj21と12試局地戦闘機、北欧スウェーデンと日本の技術交流を概観します。

 前例の無い機体は想定外の障害が頻発、解決に時間を取られ開発は遅々として進捗しませんが。
 12試艦上戦闘機に遅れる事2年弱、漸く異色の機体が姿を現しつつあります。


 渡辺飛行機と立川飛行機は初の戦闘機開発に、予想を遙かに上回る熱意を披露。
 両社の設計陣は経験豊富な先行他社を追い抜く為、失敗を怖れず果敢に挑戦を重ねます。

 空力的に最も抵抗が少ない筈の、プロペラを後方に配置する斬新な機体を選択。
 機首に大口径機銃を搭載可能、爆撃機の邀撃を任務とする局地戦闘機には最適の筈です。

 馴染みの無い異様な形態(フォルム)に怖気付き、些細な欠点を論う無責任な陰口も叩かれますが。
 陸海軍内部の若手技術将校から勇敢な挑戦者を擁護、未来的な形状(デザイン)を推す声も挙がります。



 立川には陸軍技術将校と三菱の設計チームが協力、双支持架を有する単胴の設計図が描かれました。
 海軍空技廠は前翼式を研究する鶴野正敬大尉を派遣、渡辺飛行機に協力し異なる推進式の可能性を追求。

 前述の通り北欧へ川崎の設計経験者が派遣され、国産戦闘機の開発に協力し日本へ技術情報を報告。
 2つの12試局戦開発チームも互いに情報交換を重ね、推進式戦闘機の実現へ向け努力を継続。

 森と湖の国を救ったフォッカーD21の開発元も、推進式戦闘機シェルデS21を構想し開発中と判明。
 更に南欧イタリアでも推進式戦闘機を試作、既に飛行試験を済ませていた事実が明らかとなります。


 異色の推進式戦闘機に対する風当たりは緩和され、15試局地戦闘機の開発が推進されました。
 三菱と立川の双支持架単胴式は試製『閃電』、渡辺の前翼式は試製『震電』と仮称されています。

 12試局戦の開発チームはサーブ社の設計陣と情報交換を重ね、技術的難関に挑み試作機の製作へ邁進。
 サーブ社はドイツから液冷発動機DB601、後にDB605の製造権(ライセンス)を購入し国産品を搭載。

 日本は前述の通り緻密な工作精度を要求する液冷発動機の製造を断念、空冷発動機へ生産力を集中。
 液冷発動機の国内製造品は故障が頻発、稼働率の低下を根本的に解決出来なかった為です。


 2つの12試局戦は当初、離昇出力1000馬力級のA8金星を搭載する計画でしたが。
 気筒(シリンダー)の拡大に伴い、大型化させた1400馬力級のA10火星へ変更。

 更に離昇出力1900~2300馬力が期待出来るA18木星A型、仮称E型の開発が具体化。
 A18木星の直径は1370ミリですが推進式戦闘機は後方に配置、前方視界には影響せず。

 重心の変化に起因する設計変更は必要ですが最高速度、運動性の向上が期待出来ると判断。
 1900馬力から2300馬力に向上する為、発動機の変更が決断され図面が書き直されました。



 主翼に装備する機銃は発射した弾丸の分散を防ぎ、前方の1点で交差させる為に偏角を付けています。
 重力及び遠心力等に拠る弾道の変化に加え、弾道の交点を考慮した射撃技術を要求されますが。

 機首に装備する機銃4挺は弾道を交差させる必要が無く、偏角が皆無の為に視線方向へ直進します。
 防御力の高い重爆撃機を邀撃する為、1発辺りの破壊力は大ですが携行弾数の少ない大口径銃を選択。

 機首に装備する機銃は当初、エリコン20ミリ機銃の長銃身型を想定。
 未知の試作機が完成する頃には、国内製造品の性能安定化も実現可能と楽観していました。


 同銃は1挺に付き装弾数60発、2挺で120発と僅少な為に1挺に付き100発へ増加を試みています。
 主翼の7.7ミリ機銃で見越し射撃を実施、弾道を確認後に20ミリ炸裂弾を発射する使用法ですが。

 7.7ミリ機銃2挺で装弾数1360発、フェアリー・フルマーに倣い8挺ならば合計5440発の携行が可能。
 敵機も回避行動を取る筈ですから、命中率が疑問視される20ミリ機銃より有効とする意見もあります。

 7.7ミリ機銃の使用が有効か否かは状況に拠り、命中率の向上を最重要と唱える搭乗員も多数を占めます。
 弾道の直進性を重視する意見も棄て難く、最終的な判断は搭乗員に任せた方が良いかも知れません。


 前述の通り艦対空25ミリ機銃弾を共用、ガス利用式の固定機銃も開発を開始。
 新規開発の30ミリ固定機銃を望む声もありますが、早期の実用化が可能と期待されています。

 エリコン式の20ミリ機銃弾は重量124g、炸薬16gですが弾道の直進性は良好と言えず命中率が不安です。
 ホチキス式の25ミリ機銃弾は重量約250g、炸薬19gで容積と重量も上回ります。

 弾道の直進性は上ですが機体の運動性に影響は避けられず、単純に打撃力が2倍とは言えません。
 ガス利用式の宿命として軽量化は困難な為、装弾数はエリコン20ミリの60発を下回る45発です。



 何れの機銃も機首に装備する事で、主翼に装備する場合よりも命中率の向上が見込めます。
 大口径機銃4挺の集中銃撃は、防御力の高い重爆撃機にも通用すると判断していますが。

 更なる運動性の向上を実現する為、A21土星への換装型も計画されています。
 発動機の直径は大幅に増大しますが、後部に配置する推進式の機体には重大な問題とはなりません。

 むしろ他の機体に比べ、発動機の直径が増大する場合の対応力は推進式戦闘機の方が上です。
 離昇出力3100馬力の大出力発動機、A21土星の搭載も可能と期待されています。


 立川と三菱の共同開発、単胴を双つの支持架で支える推進式の戦闘機j21と類似の構造です。
 太い機首には25ミリ機銃の搭載が可能、装弾数の関係から合計6挺とされていますが増設も可能。

 太い機首に前方視界を制約されますが、空対空噴進弾を携行する戦闘爆撃機として運用を検討。
 飛行特性を確認する為に同形状の滑空機(グライダー)を製作、双発機に曳航させ操縦試験を実施。

 重爆撃機を迎撃する最速の邀撃機(インターセプター)は、試製『閃電』の愛称(ニックネーム)を獲得。
 北欧の国防戦闘機サーブJ21と情報を交換、設計開始から4年の歳月を経て開発が進捗しています。


 鶴野正敬大尉と渡辺飛行機は南欧イタリア、前翼式の実験機と技術情報を参考に開発を進行中。
 前翼式のみが持つ利点として機首が細く出来、前方視界は日本戦闘機の中で最良と期待されます。

 『震電』の愛称(ニックネーム)を獲得した前翼機も重視され、更なる武装強化と発動機換装を検討。
 試作初号機の完成した『震電』は発動機の直径、重量の増大を厭わずA21土星の換装型も計画。

 仮称A18木星E型を搭載時の最高時速700km/hを超え、740km/hを目標に機体を強化する改設計を推進。
 推進式戦闘機『閃電改』『震電改』は重爆撃機B-17、及び後継機に対する切札と期待されています。 
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