戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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九章 幕間劇
川釣り
「・・・・・・・・」
「だぁらあぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
「ふん!そんなの効かぬわぁ!」
と俺達は鍛錬をしていた。詩乃は宿の中にいて、俺らは外でやってた。
「せぇいっ!」
「当たらぬわ!そんな遅い攻撃では!」
なぜか知らんが俺対綾那・歌夜・鞠で仕合をしてたけど。
「うにゃああああああっ!」
「ほらほら、ちゃんと当ててから叫べ!」
で、結果は俺の全勝。30分足らずで勝ってしまったけど、しかも俺は刀だけで。俺に負けた3人は、3人で鍛錬をし始めたから宿の部屋に戻った。
「お帰りなさいませ、一真様。稽古はお終いですか?」
「まあな、最も俺が全勝してしまったから残りの3人で稽古でもしてんじゃないの?」
「そうですか。では、お水でもどうぞ」
「ありがと」
本当はスポーツドリンクがいいんだけど、ここは水で我慢するか。
「さっきの様子を聞くと一真様以外の三人も疲れてないご様子でしたが・・・・」
「ああ・・・・聞こえてたのね」
「一真様の気合の籠った叫びが、一番大きく聞こえておりました」
「まあな、俺は実戦実力と共に豊富だから。それにあの3人はまだまだ隙がある」
鞠はああ見えて剣術の達人だし、歌夜も一流の武将だけど。綾那に至っては、あの本多忠勝。三国志での最強は呂布=恋だけど、戦国最強は綾那。何せ森親子を軽々しく持ち上げたくらいだし、でも俺はまだまだ甘いけど。あの三人は最初俺が相手をした時は加減したようだが、俺が加減無しでやろうとしたら本気でかかってきた。
「稽古でも死にはしないと思いますが、加減を付けた方がよろしいかと」
「うーん。充分加減しているつもり何だけどな?」
まあ俺基準で考えると、誰もついて来れなくなる。
「でもさすがというべきなのか、修羅場を何度も潜ってきたと私は思います。あの時鬼の巣での駆逐の時でさえ、笑いながら戦っていましたものですね」
「まあな。というか俺笑っていたのか?無自覚だった。そういえば、詩乃・・・・」
と言っている内に、少し横になったら鞠と綾那が来た。今度こそ決着をつけたいんだと。俺にとってはあれくらい準備運動にもならないんだけど。
「またか?もう決着ついただろうに」
「あんなの決着が付いたとは言えないです!」
「そうなの!鞠はまだまだ一真の実力知りたいの!」
「はあ、しょうがねえな。詩乃はどうする?ここにいる?」
「はい。私はここにおりますので、皆さん存分に、一真様の実力を引き出して下さい」
と言って、外に出た俺達。夕方になる位まで何回もやってたけど、結果は見えていた。聖剣の力も出さずにただ擬態だけで、勝ってしまった。槍対刀だと刀の方が間合いが短いが、俺には関係ない。
「ふう、あんまり本気出さずにやったな」
でも気持ち良かったけどな、風呂の時も気持ち良かったし。あの三人は、何回も俺に負けたのか気分が沈んでいた。それに動きまくったのか、疲労困憊になったとか。
「本気出さずに勝ってしまう何て驚きです。ですがお疲れ様でした」
「ああ、あの三人はボロ雑巾みたいになってしまったが、すぐに復活するだろう」
鞠も、風呂から上がったら復活してたけど、さすがに疲れたのか寝てしまった。綾那と歌夜もだ。反省点は結構あったな。
「それにしても、よく動いてよく寝るか」
「はい。よく眠っていらっしゃいます」
鞠の寝顔は可愛くて、ここだけを見るとあの綾那とも互角に稽古できるとは思えん顔だ。しかもこの寝顔では豪傑とは見えない。綾那もだけど。
「一真様もお休みになられますか?」
「今はいい。まだ眠いって訳ではないからな。詩乃は眠かったら寝ていいぞ」
「いえ。私もあまり眠気は・・・・。そういえば一真様」
「何だ?」
「私の所に来た時に何か言いかけていませんでしたか?」
そういえば、何か話そうとしたらあいつらが来たんだっけ。
「明日、二人で遊びに行かないか?」
「・・・・随分と唐突なお誘いですね」
「唐突ではないだろう。三河に行く前に約束したろ?三河から帰ってきたら、どこかに遊びに連れてって行くって」
「・・・・・・・・・」
「三河の本隊と合流したら、すぐに上洛だろう。そうなったら遊ぶ暇がないだろう」
それに、上洛後は大戦が待っているし。こういう事は、今度だといつ出来るか分からない。
「宿の者に聞いたら、景色の良い川があると聞いたんだけど」
「あの約束を覚えていらっしゃるとは。ですが、あの三人はどうするおつもりですか?」
「上司は、部下の約束は覚えるんだよ。あの三人なら問題ない、俺が鍛錬の目次を作っといたから、それをやっておけと言っておいたし、鞠に関してはあの二人に頼んだ」
「なるほど。そのためにあの三人に稽古をつけた訳ですか。では、明日は早いのですから、もう寝ましょう」
と言って寝たんだけどね。で、あっという間に次の日が来た。
「という事で、三人の代表として歌夜。俺が作った鍛錬表のをやっておけよ。俺と詩乃は行ってくるからな」
「はいお任せください。というかそれは馬ですか?」
今俺が乗っているのはバイクだ。詩乃はヘルメットを被っているし、俺はエンジンふかしてたら綾那が不思議がっていた。
「これはお前達で言うなら馬だ。でも生き物ではない、絡繰りとでも言っておこうか」
という事で、俺と詩乃はバイクに乗って走って行ったが。
「一真!お土産楽しみにしているの!」
叫び声が聞こえたけど、土産ねえ?あったらな、と思いつつバイクを走らせてから数十分で着いた。バイクから降りて、川沿いを歩く俺と詩乃。
「詩乃。足元注意な?濡れてるから」
「はい。一真様前方に苔が」
「お、ありがと」
やがて辿り着いたのは、ゆったりと水の流れる渓流だった。
「大きな岩があそこにあるから、この辺りか」
聞こえる音は、川のせせらぎと僅かな森のさざめきだけ。苔むした大きな岩は、時間から取り残されたかのように、静かにその身を流れの中央へと置いている。
「なるほど。これは、確かに一見の価値のある景色ですね」
それに、透き通った水の中には、穏やかな陽光を弾く小さな影が幾つも見える。ふむ、水の精霊から聞くと、ここにはたくさんの魚がいるとの事。大きな岩の上に詩乃と一緒に登ってから空間から釣り道具を取り出す。一応宿から借りてきたこの時代の釣竿とか持ってきたけど。
「詩乃は釣りする?」
「私はした事ないので、しばらく見取り稽古をさせていただきます」
「俺のは俺の世界のだから、・・・・でも感覚は盗めるかもな」
という事で、釣竿を出して針に餌をつけてと。そして一気に振ると、針がついた糸を川の中に入れる。入ったらリールを巻く。そしてしばらくしてるとかかった!
「お、来たな」
「一真様は釣りの経験は・・・・?」
「何回かやっているよ。たまに大きな船で、大きい魚を釣る時もあるけど」
「そうですか」
詩乃は小さくそう呟いて、身体をすっと寄せてくる。たぶん、俺の手元を見るためだろうな。
「お邪魔・・・・ですか?」
「全然。釣り上げる時は少し危ないかもしれないけど、構わんさ」
「お邪魔でしたら、仰って下さい」
「ああ、今来てるからそのまま釣り上げるよ」
と言ってリールを巻く。すると、釣竿を動かしながら巻いて行くと釣れた。
「まずは一匹目、と」
これは何だろう?イワナかな、少し大きいような気がする。
「七寸はありそうですね・・・・。凄い」
この位の大きさなら、塩焼きにして食べたら絶品だろうな。魚を針から外してからバケツに入れて、また針に餌をつけて竿を振った。すぐに釣れそうだなと思ったけど、一杯は釣れそうだな。
「ところで詩乃。三河はどうだった?」
「・・・・大変でした」
「本当にお疲れさん。一人での使いって大変?」
「そこは元々一人の私ですから、気にはなりませんでした。街道の治安も悪くありませんでしたし。ただ・・・・三河者が」
「扱いが悪かったのか?」
「いえ。同盟を結んでいる織田からの使いという事で、賓客扱いでしたから。寧ろこちらが恐縮してしまう程でした。扱いが悪かったのは美濃で慣れていましたから、扱いが悪い分には問題なかったのですが。何せ三河者が相手でしたから」
「そんなにか。三河武士の基準は?」
「三河武士の基準は綾那さんでした」
「・・・・マジで?」
「はい。魚料理一つ取っても、単に塩辛いだけで。・・・・あちらの考えでは、魚はご飯のおかずになれば十分だそうで」
「同じ料理人とは思えない発言だな、俺の手料理や一発屋の魚料理も美味しいんだけど、お、また来たぞ」
と言ってリールを巻く。しばらくしたら、釣り上げたのでさっきと繰り返しになる。
「随分沢山釣れるな、こりゃ鞠達の土産になるかもしれない。詩乃はどうする?まだ見取り稽古してるか?」
「はい。見取り稽古させていただきます」
「けど、三河武士が綾那基準とは。綾那も悪くはないんだよな」
家康は狸だったらしいが、この世界では猪なのか。猪突猛進っていうくらい猪武者がいるかもな。
「一真様にとって、世の中に悪い女性などいないのでしょう?」
「俺にだって好みくらいあるぞ」
「そう何ですか?ですが、ひねくれ者の私も平気、猪の綾那さんも平気、森家のお二人も平気で、素直なひよ達や鞠さんも平気とくれば・・・・」
「だけど、考え方で好みは変わってくるぞ。例えば女尊男卑とかな」
「女尊男卑、女性が偉いと勘違いする事ですか?」
「まあな。別の世界だったが、女尊男卑の世界になってしまってな。男性差別する世界だった」
「好みは別として、三河も楽しいと思いますが、ひねくれ者の私にとっては苦難の連続でした。まあ収穫があったとすれば、織田がどれほど居心地がいいか改めて分かったくらいでしょうか。それにひよやころは気の回し方も上手いですし」
「あの二人はね」
天然なのか分からないが、心遣いには助かっている。
「あの呼吸は真似できません」
「他人は他人だ。詩乃は詩乃の良いところがあるのだから。それに詩乃は可愛いからな」
「・・・・だから居心地が良いのかもしれません」
小言を言っていたが、あえてスルーして釣りをしていた。結果は、数匹釣れたけど。で、焚き火の用意をしてから、ライターを取り出す。
「一真様、その小さな物は何ですか?」
「これ?これはライターと言う。ここで言うなら小型火打石みたいな感じか」
と言って、ライターで火をつけて焚き火準備完了。そして串を魚に刺してから、焚き火の近くに置いてから数十分後。
「そろそろ焼けたかな?うむ美味いな。詩乃、出来たぞ」
「いただきます。・・・・はむ。ああ・・・・美味しいです。これこそが塩だけの味ではない、ちゃんとした魚の味」
「それは何よりだ。今回は器具がないから、こんなもんか。今度は長屋で食べような?そしたら今度はちゃんとしたのを作るけど」
「楽しみにしてますがこれも十分美味しいですよ」
「なら、たくさん食べてな」
「・・・・(コクコクコクッ)」
こうやって幸せそうに魚を食べる詩乃を見ると、ここに来て正解だったなと思った。あとは、ここにいる水の精霊にも感謝だ。こんなに水が綺麗だからこそ、こんなに美味しくできたのかもしれない。
「むぐむぐ・・・・ところで一真様?」
「何かな?」
「私はここに連れて来て頂きましたが、ひよところとは結局どちらに行かれたのです?」
「ああ、あれね。俺の料理を食べたいとか、俺の行く所にずっと一緒にいたいとか言うから、まだどこにも連れて行ってないな」
「まあそうでしょうね。一真様の料理は一発屋より美味しいですし、何よりころの知らない料理も作ってくれますからね」
あの二人は、あまり欲がないのかなと思ってしまうくらいだ。それに連携プレーは真似出来ん。出来るとしたら一緒に寝るくらいかな?あとは武術の鍛錬とか。その後、塩焼きを食べた俺は、残りの魚を纏めて焼いてから空間にしまった。そして今はまた岩の上で釣りをしていた。また俺がやっていたけど。たまに水術での水芸とかやると詩乃は喜ぶ。
「その芸はいつからやっているのです?」
「これ?これは芸というより水術だからな」
「水術とは?」
「前に鬼の巣の時にも使ってたけど、風術とか地術に炎術。精霊術師とも言うが、地水火風の四大精霊達の力を借りて自らの意志を現実に顕現させる事が、出来る能力者の事。精霊はそうだな、自然の妖精とも言おうかな?自然の力を借りて様々な力を発揮する事。事物の中に宿り、自由に遊離する事が出来ると考えられる人格的な霊的存在と言えば分かるかな?」
「なるほど。自然の力を借りて術者の思い通りに出来ると解釈してよろしいので?」
「そういう事だ。精霊には位があってな、上位精霊は精霊王と呼ばれる」
と言って、俺は片方の手には炎を出して、俺の周りには風を操り、水は壁を作ったりと。あとは、自然の景色を見れば心は落ち着くと言っては釣竿を持っていた。
「一真様・・・・っ?」
「お、凄い大物だな。詩乃!少し離れていろ」
俺は立ち上がり竿を持ち、ひたすらリールを巻いた。だが、力強くて中々の強さだな。これは主かも。だけど、こういう事もあるかと思って、力を少し緩める。これで相手の体力を疲労させる事だ。
「一真様、今です!」
「うむ。うおりゃああああ!」
糸を巻きながら、竿を上げるととんでもないデカさの魚を釣り上げてしまった。これは何だろう?だがとんでもなくデカい。
「こ、こんなに大きな魚は見た事ありません!」
「たぶんこの川の主だな。これはこれで美味そうだ」
と言って、魚をクーラーボックスに入れようと思ったが、あまりにもデカかったので、魚を捌いてから入れた。血抜きもしたし、内臓も取り出したから後は焼くだけだろう。
「さてと、・・・・そろそろ帰るか。もうすぐ夕方になってしまう」
「はい。それに一真様の力量はまだまだ底が見えないと思いました」
「俺の本気は、時が来たら見せてあげるよ」
「楽しみにしています。一真様、手を握ってくれますか?ここ危ないですし」
手を握った後、バイクが置いてある所まで戻って行った。そしてヘルメットを被ってから俺に捕まって発進させた。宿に戻った後に宿の人に大物を見せたらよく釣れたな!と驚愕してた。鞠達に俺の魚料理を食わしてから、残りの魚をクーラーボックスに入れてたから焼き魚も刺身も美味しいと言って。
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