NARUTO 桃風伝小話集
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その1
前書き
自Blogにて掲載中の本編の、アカデミー生活だってばよ!4 で、ミコトさんに押し切られた直後です。
何、やってるんだろうな、私。
サスケ君の家で、ミコトさんに促され、お風呂を勧められるまま、断り切れずに大人しく湯船に浸かりながらぼんやりと思う。
冷めて水滴になった湯気が、湯船のなかにぽちゃんと落ちる。
本当に、私、何してるんだろう。
なんだか、現実感が無さ過ぎて、ほわほわした感じがする。
お風呂の温度も温かくってちょうどいいし。
だけど、ここ、私の家じゃないのに。
人の、それもおじいちゃんの家ならまだしもここは、私の事を何も知らないサスケ君の家なのに、私、こんなに無防備に寛いでて、本当に良いの…?
答えは見つからない上に、もう既に私はお風呂を借りちゃってるし、今さらなんだけど。
でも、疑問と違和感とうしろめたさが胸に残る。
いくらミコトさんに全部ばれてるっぽくっても、私は一応、否定しなくっちゃいけなかったんではないだろうか。
だって、私が私の事を隠してるのって、火影様の意向って奴な訳だし。
湯船の中でぐるぐるとそんな事を考えていると、突然脱衣所の扉が開かれる音がして、私は思わずびくり、となった。
そして聞こえてきた声に、心臓が止まりそうなほど驚いた。
「おい、ナルト!俺の服、ここに置いといてやるからな!感謝しろよ!」
「え!?あ、え、う、うん!ありがとう!!」
「それと、俺の兄さんがお前にも忍術教えてくれるってさ!特別なんだぞ!だから早く上がってこいよな!」
「う、うん」
そう言うと、サスケ君はさっさと脱衣所から姿を消した。
だけど、私の心臓はばくばくと破裂しそうな程脈打っている。
「び、びっくりした…」
なんか、すっごく心臓に悪いんですけど、この状況。
というか、ばれてないみたいで良かった。
って、どうしてサスケ君がここに来るの。
ほんのちょっぴり戦慄した時、こんこん、と脱衣所の扉がノックされる音が聞こえた。
「は、はい!?」
思わず裏返った声で返事をしてしまった私の耳に、今度はミコトさんの声が聞こえてきた。
「ナルトちゃん?ごめんなさいね。サスケがここに来てびっくりしたでしょう?大丈夫?」
びっくりしたし、ごめんなさいは今のサスケ君の事何だろうけど、ちゃ、ちゃ、ちゃ、ちゃんんんん?!?!
「え!び、びっくりしなかったのは嘘になるけど、大丈夫だってばね!?」
「あら。ふふふ。あなたもクシナと一緒なのね。でも大丈夫だったなら良かったわ。だけど、本当にごめんなさいね。私が持ってこようと思ったのに、あの子ったら、話があるからって止める暇もなくここに来てしまって…。まったく、もう」
それはなんとなくサスケ君ならあるかもしれないけど、そんな事より、ミコトさん!
「あ、あ、あ、あの、ミコトさん!」
「あら、なあに?ナルトちゃん」
ちゃんづけで呼ばれるなんて経験は生まれて初めてで、訳もなく慌ててしまいそうになる。
慣れなくて、なんだか変な感じだ。
「あ、ああああああああああの、あの、その呼び方は一体……?!」
「あら。だって、ナルトちゃんは女の子でしょう?だったら、君づけはおかしいわよね?」
「で、でも、私、おじいちゃんに、それは隠しておけって言われてるし」
「おじいちゃん?」
「あ!違う。えと、おじいちゃんじゃなくって、火影様に」
「あら。そう…。なら、こうしましょう!ナルトちゃんは、私と二人きりの時だけの秘密の呼び方ね」
「え…」
ミコトさんの言葉に、私の心を酷く惹きつけられた。
「いくら火影様の言いつけだったとしても、ずっと男の子の振りし続ける必要はないわよ。せめて、私の前ではだいじょうぶだから。ね?」
「は、はい…」
思わず反射的に私は返事をしてしまっていた。
はっとなったけれど、もう、遅い。
「じゃあ、ちゃんと温まってから上がってらっしゃいね?」
「は、はい…」
ぱたぱたと軽い足音を立てて去っていくミコトさんの足音を感じながら。
私は本当にこの状況は一体何なんだろう、と狐につままれたような感じを味わっていた。
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