Sword Art Online~星崩しの剣士~
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03:ビーター
前書き
やっとアニメで言う2話あたりか···先は長いなw
「何でや!!」
部屋に響き渡る、悲痛な叫び。
声の主――キバオウは、下を向いたまま、問う。
「何で、何でディアベルはんを見殺しにしたんやっ···!」
見殺し···だと···?
同じことを考えていたであろうキリトは、キバオウに質問する。
「見殺し······?」
キバオウは半泣きの顔を上げ、心中の事を表に出す。
「そうやろが!!自分はボスの使うスキルを知っとったやないか!最初からあの情報を教えとったら、ディアベルはんは死なずに済んだんや!!」
キバオウがそう言うと、周りのプレイヤー達も頷き、不信感のある目でキリトを見る。
何故俺は見られないのかと思ったが、ディアベルに向かって叫んだのはキリトだけ…つまり、俺は標的にされないと言う事に気が付いた。
そんな中、キバオウのパーティーの一人と思われるプレイヤーが、声を発した。
「きっとあいつ、元ベータテスターだ!だからボスの攻撃パターンも知ってたんだっ…知ってて隠してたんだ!」
「うわっ…酷ぇ言いがかりだ······」
俺は、聞こえないようにそう呟く。
キリトが元ベータテスターなのは、紛れもない事実だ。
が、ベータテスト時代のイルファングと、今のイルファングでは、決定的な違いがあった。
―――そう、武器だ。
本来、ベータ通りであれば、持ち変える武器はタルワールなのだ。
―が、イルファングが持ち変えた武器は野太刀。
事前に知ってもいなかった事を、急に教えろと言われても無理な話だ。
それを知ってて隠したなどと言われても、言われた側からすればたまったものではない。
「貴方ね···!」
「おい、お前っ···!」
アスナとエギルがくいつく。
キリトの方を見ると、なにやら様子が可笑しい······。
――まさか、キリト···お前···!
それを察した俺は、キリトよりコンマ1秒先に行動にでる。
「あははははっ!」
俺は高笑いをする。
―うわ、何か厨二病みたいだな。
そんなこと、行動を起こした今思っても意味はないか···。
俺は、決心を改めて、再び口を開く。
「悪いな···お前らの推測は、半分正解半分不正解だ」
「な、何やと!?」
キバオウがすぐに突っかかってくる。
「そこの奴はな···始めっからボスのスキルなんて知らなかったんだ。···俺が教えたんだよ、スキルの事も···その回避方法も」
キリトは口をあんぐりと開け、驚きを示している。
アスナやエギルも、俺の行動に驚きを隠せないようだ。
―――悪いな、キリト、ここでお前に汚れ役を押し付けるのは、親友として我慢出来なねーんだ。
俺は心の中でキリトに謝り、口を開く。
「確かに、そこの奴は、俺と同じでベータテスターだ。···けど、俺に比べたらまだ弱い方の奴だ。だから俺は、この世界がデスゲームと化したその日に、そいつを脅して、俺の指示通りに動かせた。···それに、俺の知識はベータテスターの中じゃトップクラスだ。情報屋なんて比べ物にならないくらい、他に色々知っている」
キバオウ達は口を開け、ただ立ち尽くしている。
そして、遂に口を開く。
「な、何やそれ···そんなん、ベータテストどころやないやんか···。もうチートやチーターやろそんなん!」
キバオウが口調を荒げて言うと、他のプレイヤー達も口々に声を上げる。
「そうだそうだ!」
「ベータのチーター、だから"ビーター"だ!」
ベータとチーター、その2つが混ざりあって、やがてはビーターと言う1つの単語が生まれる。
―――ならどうした?
そう呼ばれるだけだ、屈することはない。
「ビーター···そりゃあ、いい呼び名じゃねーか」
俺は敢えてそれを肯定する。
「そうだ、俺はビーター···これからはそう呼びな」
俺はそう言うと、着ているコートを翻し、入り口とは反対側の扉へ歩きだす。
―ツカツカ。
階段を上がる途中、俺に近寄る足音が3つ。
後ろを振り返ると、立っていたのは、アステとアスナ······そして、少し申し訳なさそうな顔をするキリトがだった。
「お前ら······ったく、どうかしたのか?」
俺は頭を掻きながら、3人にそう訊く。
まず口を開いたのは、意外な事にキリトだった。
「メテオ······その、何と言うか···ありがとう······あと、ごめん」
「気にすんな、俺が勝手にやった事だしよ」
そう言うとキリトはふっと笑い、それきり口を開こうとしなかった。
次に口を開いたのはアステだった。
「ねえ、貴方。戦闘中に私の名前、呼んだわよね?私、教えてないんだけど···どういう事?」
「はあ?」
アステが言った事に、俺は間抜けな声を上げてしまった。
まあ、この世界の事はあまり知らないみたいだし······一応教えとくか。
「顔動かさずに、目だけで斜め左上を見たら、HPが表示されてるだろ?そこに、名前がないか?」
そう言うと、アステは目だけを動かした、名前を確認する。
「め···て···お···メテオが、貴方の名前?」
「ああ、そうだ」
俺は一瞬無視も考えたが、流石に酷いのでやめておく。
俺が答えると、アステはくすりと微笑む。
「ふーん、こんなところにずっと···何よ、気付かなかった私が馬鹿みたいじゃない」
俺はそれを見て、笑うと可愛いなと思った。
もっとも、"笑うと"可愛いとなどと言えば、笑わないと可愛くないみたいなのでやめておく。
さて···俺はそろそろ行くか。
「じゃあ、俺はそろそろ行くわ。アステ、お前には素質がある。だから、有力なギルドに誘われたら、断るなよ?···ソロで攻略に挑むのも、絶対限界があるからな」
俺はそう吐き捨てると、パーティーを抜け、扉を開く。
「こっからは···マジで面倒だな···」
俺はそう呟き、本物の孤独感を味わいながら次の層に向かって行った。
後書き
早く進めたいw
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