とある碧空の暴風族(ストームライダー)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
新たなる力へ
Trick64_信乃にしてあげることは、これだけしかないから
時刻は21:30
A・T初心者同盟の話し合いも終わり、各自の部屋に戻る事になった。
とは言っても、部屋を移動するのは美雪と美玲だけである。
「それにしても何故、お二人だけが別の部屋なんですの?」
「婚后さん、ごめんね♪ これもまた信乃が言っていた諸事情に関わるの♪」
「そうですの。でしたら深くは聞きませんわ」
「ありがとう♪ でも、簡単な部分だったら話せるよ♪
玲ちゃん、美玲は少し厄介な持病を持っているの。
これから診察とか、治療とかあって、別の部屋の方が都合が良いってわけ。
みんなの前で治療をするには少し躊躇いがあったから信乃にお願いして
部屋を用意してもらったの」
美玲の説明は、完全に医者としての顔で説明していた。
その雰囲気に婚后を含め他の人は何も言えずに頷くしかなかった。
「でも、厄介と言っても重い持病ではない♪
毎日診察して薬を処方すれば、今日と同じA・T三昧でも問題ないの♪
深く気にすることは無いよ♪」
「そういうことでしたら安心ですわ」
「はい。今日会ったばかりですが、美玲さんとは、もうお友達ですし。
少し心配でしたが、重い持病ではないようで安心しました」
「ですわね。わたくしと同じ実力の美玲さんが十全ではないのでしたら
練習に張り合いが無かった所でしたわ」
「ありがとうございます、湾内さん、泡浮さん、婚后さん、とミレイは
心配してくれた皆さんに心の底より感謝を申し上げます」
「みんな、本当にありがとう♪
それじゃおやすみなさい♪
玲ちゃん、行くよ♪」
「はい。皆様おやすみなさいませ」
「「「おやすみなさい」」」
大人数が使う広間から出て、自分たちに宛がわれた部屋に向かう。
その部屋を使うのは“3人”。
美雪
美玲
そして信乃だ。
男女が同じ部屋に寝るのは問題だと思うが、この1週間近くはずっと一緒にいた為、今さらなのである。
「そういえば、A・Tの手本を見せてからいなくなっていたね♪」
「信乃にーさま自身が合宿の参加者です。
佐天さんから話が無い事から、別の場所で特訓をしているかもしれません、
とミレイは現状から推理します」
「先に部屋にいるかな♪?」
「今日は信乃にーさまには合宿初日になります。
初日では無理をせず、早めに切り上げたのではないでしょうか、
とミレイは一般的な意見を述べます」
「そうだよね♪」
そんな美玲の予想は半分正解で半分間違いであった。
部屋を開けると、目に入ったのは3人分の布団。
そして布団ではない所に倒れ込んでいる、浴衣姿の信乃であった。
「し、信乃!!?」「信乃にーさま!?」
急いで駆けより様子を見る。
「脈拍数、呼吸数、元に異常・・・・・力を使いすぎた時の症状と同じ・・
玲ちゃん、急いで私の薬箱持ってきて!
あと温泉をペットボトルに1本分ぐらい入れてきて! 容器はなんでもいいから!!」
「了解しました!」
とミサカは―――言い終わらずに部屋からダッシュで出て行った。
腰紐を外して浴衣を脱がし、触診で調べていく。
「間違いない。A・Tで力を使いすぎた時と同じ。
息から血の匂いがする。肺から少し出血がある。
手足は筋肉、血管の断裂が多数。倒れているのは過度な疲労。
それ以外は・・・・特に問題は無し」
触診による詳細な結果、初診と同じで信乃の症状はA・Tの過度使用だった。
この状態では、美雪に出来る事は少なかった。
専用の塗り薬を使いしかできなかった。
そう。出来る事は少な“かった”。できな“かった”。
今日、この旅館の温泉に入ることによって過去形に変化したのだ。
「雪姉さま! 薬箱と温泉を持ってきました!!」
隣の部屋に置いていた薬箱。薬箱といっても、小さなキャスターばっく程のサイズはある。
それにペットボトルに入れた白い濁り湯の温泉を左手に持ってきていた。
素早くそれを受け取り薬の入っている小箱を出していく。
「千振、川獅、石榴果皮、西洋栃ノ木、重薬、―――――――」
次々と調合されていく。
自分の命を救った能力だが、美玲は実際に見たの初めてであり、
素早く動く手に見惚れてしまった。
「忍冬、鉱泉水。抽出、排除、生成、加薬、排除、分解、加熱、凝固、粉砕、液化」
ものの数分で世界最高レベルの軟膏を生成した。
「玲ちゃん、桶に冷水と拭うのに使うタオル持ってきて。
私はマッサージしながら薬を塗るから」
「わかりました。他に必要なものがあれば何でも言ってください、とミレイは端的に聞きます」
「今は大丈夫」
「では桶とタオルを取ってきます」
再び美玲は部屋を出た。美雪は今作った軟膏を信乃の全身に塗ると同時に
マッサージをして体になじませていった。
「これで・・・・大丈夫だと思う」
「お疲れ様です。雪姉さま」
「ははは、なんだか前より薬の能力が上がった気がする。愛の力かな?」
それから1時間、入念にマッサージを終えた美雪は一息ついた。
「温泉湯を加える事で、薬の効果はかなり上がった。
専用に調合したから、明日には信乃が動けるようになると思う」
「雪姉さまが私達の薬を作ったのは知っていますし、
私の怪我とクローン体としての調整してくださったのも知ってます。
ですが言わせてもらいます。
パナいの、とミレイは驚愕してます」
「・・・・信乃にしてあげることは、これだけしかないから・・・ふぁ~」
口を押さえて大きなあくびをした。
「今日は慣れない運動をして大変だったと思います。
後片付けは私に任せてゆっくりと「ZZZzzzz…」 ゆ、雪姉さま?」
A・Tの練習をした上に、能力も限界まで使用した。
緊張の糸が切れて、美雪は信乃の傍で横になり、寝息をかきはじめた。
「・・・・まぁ、雪姉さまは信乃にーさまの近くで無いと眠れなかったので
ちょうどいいです、とミレイはお二人の写真を取ります」
携帯電話の中で厳重にロックを掛けた「信乃美雪愛の図」フォルダにまた新しい一枚が追加された。
取れた写真は、イチャイチャバカップルというよりは、
遊び疲れて一緒に眠っている子供2人に見えた。
「・・・・なるほど、色気が足りないのですね」
美玲は信乃、美雪の浴衣を少し肌蹴させた。
信乃は胸元を開き、美雪は肩を出させる。さらに胸元もギリギリピンクな先端が見えない位置までズらす。グラビア顔負けのスタイルをR-18のDVDに使いそうなパッケージでも通用するような格好にする。
「もう少し何か・・・・閃きました」
信乃の腕を横に出し、その二の腕に美雪の頭を乗せる。良く言う腕枕だ。
さらに美雪の腕を信乃のお腹の方に抱かせて
「できました・・・・・が驚くほどに色気を感じません。
何故でしょう? ここまで肌を見せているのに・・・
とミレイは言いつつ再び写真を取ります」
ピ、とカメラのシャッター音(?)を出しながら2、3枚角度を変えて撮影してく。
しばらくすると自分も疲れている事を思い出して、電気を消して布団に入った。
なお、信乃と美雪は夏用の布団を1枚被せただけで肌蹴させたままであった。
つづく
ページ上へ戻る