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久遠の神話

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第九十三話 炎の選択その三

「実際にな」
「神話にある通りですね」
「確かに世の中色々悪いことがあるさ」
 パンドラの箱、その中にあったものがだ。
「けれどどの悪いこと以上にな」
「希望があるんですね」
「光ってやつがな」
 それがあるというのだ。
「というか悪いことがないとな」
「いいこともありませんよね」
「ああ、希望もな」
 それもまたないというのだ。
「だからな、希望が微笑んでくれているからな」
「中田さんもこれで」
「最後に一戦やるだろうけれどな」
 ここでまた上城の目を見る、相手は気付かないが。
「降りるぜ、俺も」
「そうなることを祈っています」
「悪いな、君とは何か戦ってもな」
「不思議と悪いものはないですよね」
「全然な。敵同士っていうよりかは」
 むしろだ、どういったものかというと。
「先輩後輩だよな」
「そうした間柄ですよね」
「今もこうして二人でいるしな」
 中田は今は完全に友好的な笑顔で話した、それが出来た。
「俺達はお互いに嫌いじゃない」
「むしろ僕中田さん好きですから」
 上城は真面目な声で答えた。
「尊敬もしています」
「おいおい、尊敬なんてな」
 その言葉を聞くとだった、中田は苦笑いになって上城に返した。
「恥ずかしいから止めてくれよ」
「恥ずかしいですか」
「俺はそんな上等な人間じゃないさ」
 他人から尊敬されるだ、そこまではだというのだ。
「だからな」
「尊敬はですか」
「そんなのしなくていいさ」
 こう上城に言うのだった。
「軽蔑されるのも嫌だけれどな」
「そうなんですか」
「君だってそうだろ、誰かから尊敬されるって言われたらどうだろ」
「何か恥ずかしいですね」
 自分のことに当てはめて考えてみると実際にそうだった、上城は考える顔になってそのうえで中田に答えた。
「他の人にそう思われると」
「そうだろ、こそばゆい感じになるだろ」
「どうにも」
「確かに軽蔑されるのは嫌だけれどな」
 それでもだというのだ。
「まだな。尊敬されるよりは受け入れられるか」
「そういえば僕も」
「軽蔑されるってのは確かに癒さ」
「はい、誰でもですね」
「けれど仰ぎ見られるっていうのはな」
 即ちだ、尊敬されるということはというのだ。
「そんなのいいさ、俺は俺でな」
「ありのままで、ですか」
「同じ目線でいて欲しいさ、君じゃなくても誰にもな」
 こう上城に話すのだった。
「俺みたいないい加減な奴はな」
「僕もそうですね。仰ぎ見られると」
「何か嫌だろ」
「僕はそんな人じゃないです」
 彼もまただ、自分を尊敬される様な人間ではないというのだった。
「とても」
「そう思うのが普通だよ。間違っても自分を尊敬しろとか言ったら駄目だろうな」
「ああ、そういう人もたまにいますね」
「そんなことを言う奴はそれだけで駄目だよ」
 人間としてだというのだ。 
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