久遠の神話
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第九十三話 炎の選択その一
久遠の神話
第九十三話 炎の選択
コズイレフも戦いから降りた、その話を聞いてだった。
中田は笑みを浮かべた、そのうえで話を伝えた上城に対してこう言うのだった。
「よかったな」
「そうですね、コズイレフさんは幸せにですね」
「気付いたんだよ、戦わないでもね」
「それでもですね」
「もう手にしているってな」
彼はそのことに気付いたというのだ、もっとも気付いたのではなく気付かさせられたのであるが。三柱の女神達に。
「気付いたんだよ、あの人もな」
「そうですね」
「これでな、戦いはな」
「残るは二人ですね」
上城は中田の目を見て言った、今二人がいるのは中田の家だ。そこのリビングのソファーに向かい合って座って話しているのだ。
「中田さんと加藤さんですね」
「いや、多分な」
二人と言った上城にだ、中田はこう返した。
「もうすぐ一人になるだろうな」
「というとまさか」
「俺もな」
他ならぬだ、彼自身もだというのだ。
「若しかするとな」
「じゃあ中田さんのご家族も」
「女神さん達が手を尽くしてくれてるんだよ」
それでだというのだ。
「だから。若しかしたらだけれどな」
「戦いからもうすぐですか」
「降りられるかもな」
こう上城に話すのだった。
「有り難いことにな」
「そうですよね、中田さんも戦いは」
「剣道は活人剣だからな」
この考えをここでも述べるのだった。
「暴力じゃないからな」
「断じてですね」
「俺もそう思ってるさ、だからな」
「自分の目的の為に、例えそれがご家族の為であってもですね」
「他人を斬ることに使うものじゃないんだよ」
こう言うのだった、今も。
「だからな」
「この戦いからはですね」
「降りられるのならな」
その条件が揃えばだ、その時にだというのだ。
「降りるさ」
「そうですか」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「最後の最後にな」
上城の目を見てだ、微笑んでの言葉だった。
「ちょっとやってみたいことがあるけれどな」
「ちょっと?」
「まあ今は話さないでおくな」
それはというのだ。
「ちょっと話す気になれない、悪いな」
「そうですか」
「とにかくな、俺もな」
「戦いからですね」
「降りるさ」
そうなった時はというのだ。
「絶対にな」
「そうなればいいですね」
「だよな、本当に」
やはり上城を見ながらの言葉だった。
「俺もな」
「戦いから降りられて」
「ああ、それでだけれどな」
「それで?」
「君達は最後はどうするんだ?」
「最後ですか」
「俺が戦いから降りたら戦いをしたい奴はあいつだけだよ」
加藤だけになるというのだ。
「だったら君達戦いを止めたい剣士は五人だな」
「五人と一人ですか」
「五人であいつに向かうのかい?」
こう上城に問うのだった。
「そうして無理にでも止めるのかどうかだよ」
「皆で一人をですか」
「見たところ君も大石さん達もな」
戦いを止めたい剣士達はだ、どういった人間かというのだ。
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