八条学園怪異譚
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六十話 時計塔その十四
「皆のところにね」
「そうね、泉のこともお話しないといけないしね」
「終わったこともね」
そのことも伝えようというのだ。
「ぜんぶ伝えようね」
「そうね、それじゃあね」
こう話してそしてだった、二人は学園の方に身体を向けた。そのうえで夜の学園を見ながらそのうえでだった。
愛実からだ、聖花に声をかけた。
「行こうね」
「うん、皆待ってるしね」
「寒くなってきたし」
秋の夜だ、流石に寒くなってきている。冬のその時程ではないにしても。
「博士のところにね」
「研究室ね」
そこにだ、戻ろうというのだ。
「戻ってそしてね」
「すき焼きよね」
「そうそう、すき焼きね」
その話になるのだった、戻る前に。
「それ食べようね」
「そうね、すき焼きってね」
「久し振りに食べない?」
「ええ、確かにね」
愛実はそのことについて思い出した、聖花に言われて。
「夏の間は全然食べなかったしね」
「暑いとね、どうしてもね」
すき焼きだけでなく鍋もの自体を食べない、暑い時にこそ暑いものを食べることが身体にいいと言われているがだ。
「そうなるわよね」
「そうよね、そろそろなのよね」
「お鍋食べるのってね」
「だから久し振りよね」
「そうよね」
夏からだ、時間をjかなり開けてだった。鍋を食べるのだった。
しかもすき焼きだ、聖花はすき焼きについてにこにことして言った。
「私すき焼き大好きなのよね」
「知ってるわよ、それは」
「あっ、やっぱりね」
「だってずっと一緒にいるのね」
それこそ物心つくかどうかという頃からだ、愛実も聖花の好きな食べものを知らない筈がない。
「聖花ちゃんの好きな食べものならね」
「何でもよね」
「うん、すき焼きが大好きってこともね」
「そうなのね。あと愛実ちゃんもよね」
「ええ、大好きよ」
すき焼き、それをだというのだ。
「勿論ね」
「二人共なのよね」
「そういえば私達の好きな食べものってね」
「そうよね」
「同じのもの多いわよね」
「そうよね」
このことについても話すのだった。
「すき焼きだけじゃなくてね」
「他のものもね」
「お酒についてもだし」
「そうよね」
二人で話す、そしてだった。
今回も二人同時にだ、手を出して。
お互いの手を握った、それで言うのだった。
愛実はだ、聖花の手を握って笑顔になって言った。
「あったかいね」
「愛実ちゃんの手もね」
「こうしてずっとね」
「そうね、ずっとね」
「一緒に手を握っていようね」
「これからもね」
こう二人で話すのだった。
「二人だから最後の最後までいけたし」
「それならね」
泉を探していて二人の絆はより強まった、それならだった。
二人はこれからもだとだ、お互いに約束をしたのだ。
「じゃあね」
「うん、二人でね」
「何時までもね」
こう二人で話してだった、そのうえで。
二人が学園の中に戻るのだった、その正門のところに行くと。
茉莉也が待っていた、茉莉也は二人の姿を認めると微笑んで言った。
「おかえり」
「あれっ、先輩」
「待っておられたんですか?」
「今来たところよ」
こう二人に言葉を返す。
「駅前にあんた達の気配があるって言われてね」
「それって誰が言ったんですか?」
「妖怪さんの誰かですか?」
「ええ、そうよ」
「じゃあ一体その妖怪さんって」
「誰ですか?」
「九尾の狐さんよ」
その妖怪に言われたというのだ。
「あの人が気配を感じてね」
「それで、ですか」
「私達を迎えに来てくれたんですか」
「そうなのよ」
それでだというのだ。
「それで今私がここに来たらね」
「丁度私達が帰ろうとしていた」
「そういうことですね」
「そうなのよ、いいタイミングだったわね」
茉莉也が迎えに来たその時はというのだ。
「それじゃあ早速ね」
「はい、今からですね」
「博士の研究室で」
「ええ、すき焼きよ」
それを食べようというのだ。
「勿論お酒もあるからね」
「何かもう、ですね」
「用意されてるんですね」
「そうよ、もうね」
それは既にだというのだ。
「今博士の研究室でぐつぐつと煮てるからね」
「じゃあ博士の研究室に入ればですね」
「すぐに食べられるんですね」
「ええ、もう中に入ったらね」
「用意がいいですね、そこまで整ってるなんて」
「私達が研究室に入ったらもう食べられるって」
「皆食べることと飲むことにはせっかちなのよ」
茉莉也もだ、楽しげな笑顔で二人に応える。
「それにすき焼きはじっくりと煮た方が美味しいでしょ」
「お葱も辛くなくなりますし」
「お肉は柔らかくなって」
「そうよ、だからね」
すき焼きを早いうちに煮だしたというのだ、二人が博士の研究室に入ればもうそれで早速食べられる様にだ。
「もう煮えてるわよ」
「わかりました、じゃあ今から」
「博士の研究室に」
戻ろうと話してだ、そしてだった。
二人は茉莉也と共に博士の研究室に戻った、そしてそこで泉を見付けたことを話すのだった。二人の泉を探す為の長い冒険はようやく終わったのである。
第六十話 完
2013・12・12
ページ上へ戻る