久遠の神話
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第九十二話 百腕の巨人その十
「私の場合はそれです」
「わかりました。それでは」
「共にですね」
「飲みますか、今から」
「いいですね、それでは」
コズイレフは大石の微笑みでの誘いに彼もまた微笑みそうして頷いた、そうしてすべてを決めてであった。
場を去る、残ったのは女神達だったが。
智子がだ、聡美と豊香に声をかけた。
「では私達も」
「はい、これで」
「今夜は」
「去りましょう」
こう二人の妹達に言うのだった、そしてだった。
月の方角に、その妹達と共に顔を向けて彼女もまた声を送った。
「今宵はこれで」
「はい」
無念そうであるが毅然としてだ、声は答えた。
「またお会いしましょう」
「そうですね。では」
今は多くは語らなかった、そうしてだった。
女神達も場を後にした、声の主は破壊された戦場跡を元通りにしてから彼女もまた気配を消した。今回の戦いはこれで完全に終わった。
コズイレフは大石と共に帰路についた、そして。
二人でコンビニに入り酒とつまみを買った。そのうえでコズイレフの部屋に入り。
部屋の床の上に座布団を敷き二人で向かい合って座った、その間にある皿にはナッツ類やチーズがある。そのうえでそれぞれの酒で乾杯をしてだった。
飲む、その中でまずはコズイレフが言った。
「こうして貴方と飲むとは」
「思わなかったことですね」
「はい、とても」
剣士である戦っていた時はというのだ。
「思いも寄りませんでした」
「敵ならですね」
「僕は飲まないです」
共にだ、酒をだというのだ。
「とても」
「そうですね。そこは私とは違いますね」
「貴方はそうではないですか」
「私は戦わないので」
戦いはする、厳密に言うと。しかしそれは戦いを止めて終わらせる為のものだ。だからこうコズイレフに言ったのである。
「ですから」
「誰ともですか」
「はい、飲みます」
今の様にだというのだ。
「そうしています」
「そうですか」
「ですから貴方とこうして飲むことも」
不思議に思わないというのだ、彼もまた。
「当然だと思っています」
「そこは認識の違いですね」
「そうなりますね、ですが今は」
「はい、こうして」
「飲みましょう、友人同士として」
「そのうえで、ですね」
コズイレフも笑顔で応える、そしてだった。
乾杯をしてから飲む、そのうえでコズイレフはウォッカを一口飲んでからすぐに満面の笑顔になってこう言うのだった。
「こうして一口飲むだけで」
「違いますか」
「ウォッカは温まります」
まだ赤くなっていないが笑顔で言うのだった。
「お腹の中から」
「一気にきますね」
「それがウォッカです」
彼が今飲んでいる酒だというのだ。
「これがなくてはロシアの冬は過ごせないです」
「そこまでのものですか」
「ロシアでは。とにかく寒いですから」
「身体を温める為に必要ですね」
大石も飲みながら応える、ただ彼はウォッカではなくワイン、しかも赤ワイン即ちキリストの血である。
「そうですね」
「そうです、ただ飲み過ぎると」
「お酒ですから」
「身体を壊します。そして間違っても泥酔して外で寝てはいけません」
これは決してだというのだ。
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