八条学園怪異譚
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第五十八話 地下迷宮その一
第五十八話 地下迷宮
二人は博士の研究室に入った、そしてだった。
丁度中にいて自分の席で羊羹とお茶を楽しんでいる博士にだ、こう言った。
「じゃあ今から」
「今からですね」
「地下迷宮に入って」
「そうして」
「うむ、その部屋に入ろうぞ」
泉かも知れないその場所にだとだ、博士も笑顔で応える。
「ではな」
「はい、それじゃあ」
「自転車は」
「はい、これね」
早速一つ目小僧達がその自転車を持って来た。
「これに乗ってね」
「有り難う、じゃあ今からそれを地下迷宮に入れて」
「それに乗ってなのね」
「そう、行って来てね」
一つ目小僧が二人に述べる、ここで牧村も来た。
彼はいつもの冷静な物腰でだ、二人に言った。
「皆揃っているな」
「それじゃあ牧村さんもですね」
「今から」
「同行させてもらう」
牧村は二人に述べた。
「行くか」
「さて、次かも知れないですね」
「泉かも」
二人は自分達に緊張が走るのを感じた、そのうえで言葉を出す。
「ずっと探していた泉が」
「いよいよですか」
「普通の人間が泉に入るとな」
その場合はどうなるのか、博士が話してきた。
「学園の外、ここにおる妖怪や幽霊の諸君が入る前にいた場所に出る」
「それで、わかるんですね」
「泉かどうかが」
「泉でない場合はこれまで通りじゃ」
ごく普通にそこに入るだけだというのだ。
「そうなることはわかっておるな」
「はい、もう」
「そのことは」
「だからじゃ」
それでだというのだ。
「わかるからのう」
「それじゃあですね」
「今から行って」
「今度の場所が泉でなくとも」
そうでなくともだとだ、博士は言う。
「次で最後じゃからな」
「大学の時計塔ですね」
「あそこですね」
二人も博士の言葉に確かな顔で応えた。
「最後はあそこに行けばですね」
「地下迷宮がそうでなくとも」
「それで、ですね」
「泉に着けますね」
「思ったより早かったのう」
二人が泉に辿り着くのがだとだ、博士は言った。
「君達が入学して今は秋じゃが」
「夜しょっちゅう行ってましたし」
「そうしていましたから」
二人は博士の言葉にこう答えた。
「それに夏休みもありましたし」
「行く時間はありましたから」
だから結構早く行けたとだ、二人は博士にまた答えた。
「それで、です」
「秋にはって なりました」
「うむ、夜動いてしんどくなかったかのう」
「私達寝ようと思えばすぐに何処でも寝られますから」
「それで起きられるんで」
二人に共通しているその便利な体質故にだというのだ。
「それでなんです」
「夜動いていても寝られますから」
「ふむ、ならよいがのう」
博士も二人の体質を聞いてそれでよしとした。
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