少年と女神の物語
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第三十三話
「・・・は!?」
急に肩当と杖が消えたが・・・これは、あの時に・・・
「護堂と戦ったときに近い・・・」
「何を呆けておる、神殺し!」
驚きで固まっていたら、シヴァがその瞬間にナインディンに乗って突進してきた。
そして、避けることもできず・・・角が腹に刺さった。
「クソッタレ・・・」
「どうした?このまま死ぬのか、神殺しよ!」
「ンな訳・・・あるかよ!」
全力でナインディンの頭を蹴り、軽く後ろに距離をとる。
これくらいなら大丈夫だが、間違いなくこのままだといつか死ぬし・・・いつ致命傷を喰らうかわからない。
あんまり使いたくないこの権能、かなりの頻度で使ってる・・・
「我は永続する太陽である。我が御霊は常に消え常に再臨する。わが身天に光臨せし時、我はこの地に息を吹き返さん!」
その瞬間、俺の体から一切の治癒能力が消え、にもかかわらず異常なほどの、カンピオーネ以上の生命力が体中を満たす。
死なない代償が治癒能力を手放すことってのも、色々おかしいよな・・・自分以外の力なら、一気に治るんだけど。
「面白い力だな。生命力は上がっておるのに、傷は一切治る気配を見せておらん」
「いやぁ・・・便利なのに不便な権能なんだよ、これが!」
さて、次はどうするか・・・
「我は全ての武具を作りし者である。我はここに我が武を生み出し、使役せん!」
残りの権能の中でこの戦いで使えそうなのは、少ない。
なら、かえって切り札を取っておくのは危険だ。早々にきろう。
「それも権能か!神殺し、キサマは何柱の神から簒奪したのだ!」
「手札をばらす訳ねえだろ!契約によりし槍よ!我が手に現れ、我が敵を貫け!」
そして、そのままグングニルも使い、蚩尤の武器の雨を降らせつつ、シヴァに向けてグングニルを投げる。
武器の雨は広範囲なだけあってシヴァとナインディンに当たり、グングニルもトリシューラに弾かれつつも肩を抉る。
だが、それが傷をつけた瞬間には、また俺の中から権能が消えた。
「またかよ・・・どうなってんだ、本当に・・・」
「ただ技を使うだけで、我を殺せると思うなよ!進め、ナインディン!」
「ブモオオオオオオ!!」
そしてシヴァの乗ったナインディンが突っ込んでくるが・・・二度も喰らうつもりはない。
「我は緑の守護者。緑の監視者である。我が意に従い、その命に変化をもたらせ」
種を投げつつ言霊を唱え、ナインディンの足に絡みつかせてその動きを止める。
成長のしかたを操るのは初めてだけど・・・何とかなるもんだな。
「翠刃と紅刃の双剣よ。戦の女神が振るいしイガリマとシュルシャガナの双剣よ。今一時、我が手に宿りてその力を貸し与えよ!」
なれた武器ではないが、多少は崎姉に剣の使い方も聞いている。
その教わったとおりにザババの双剣を使ってシヴァを切るが・・・
「ふぅん・・・あんたに影響がないなら、権能は消えないんだな」
「ほう・・・中々に頭が切れると見える。引け、ナインディン!」
「待てコラ!」
シヴァの腕をつかんで逃げれないようにするが・・・そのまま腕を引きちぎり、ナインディンは引いていく。
選択ミスったな・・・片腕なくした。
が、代償にするにはつりあうだけのものも、手に入った。
「これで、ゼウス、蚩尤、オーディン、ザババが消えたか・・・」
戦闘系の権能は全て使えず、他のこまごまとした権能だけが残った。
使い方次第ではあるが・・・二人はもう別々に放れてるし、コイツも使い時だな。
「民の知は我が知。我が知は我が知。我はこの知を用いて叡智を手にせん!」
そして、この周囲でこちらを見ている人間の、視覚情報を手にする。
これで、俺の頭にはシヴァを前から見た映像と、左右から見た映像の三つが・・・
「なんだ、これ・・・」
それだけが流れてくる、はずだった。
だが、流れてくる映像は四つ。
「二度も戦場でほうけるとは、なっておらんぞ!」
「アグ・・・イッテエ・・・」
その隙にシヴァから弓による攻撃を受け、もう片方のうでも取られる。
何度も攻撃喰らったせいで治癒の霊薬もなくなってるのに・・・
でも、なんで・・・シヴァの光臨と同時に、神殿の周りにいた連中は全員死んだはずじゃあ・・・
「フン、つまらん・・・行け、ナインディン」
「クソ・・・」
意識がそれていたせいで反射的に避けてしまい・・・俺のいた背後、ゼウスで防いだ後ろ側に、まだ神殿の一部が残っているのを知り・・・
「え・・・」
そこに、日本人とは違う、茶色っぽい色の肌をした少女が残っているのを、見た。
「クソッタレ・・・!」
俺のせいで勝手に生き残ったのを、見捨てるつもりはない。
本気で走り、大口真神の権能で植物のバネを作ってナインディンを追い越し、その少女に追いついたところで、視界がゆがんだ。
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