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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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破滅の行進


遂に超反転魔法、ニルヴァーナが復活した。
その効果によって善へと変わったホットアイとジュラ、アルカはニルヴァーナの足を登り。
シャルルに抱えられたウェンディとヴィーテルシアに跨るアランとココロは空からニルヴァーナを目指し。
諦めかけていたジェラールは、差しのべられたエルザの手を握った。
―――――そんな中、この男はというと。

「メェン?こ・・・ここはどこなんだ!?オイオイ・・・生意気な小僧共はどこに行った!?」

豚の丸焼き状態はそのままに、木の枝に引っかかっていた。
しかも、かなりの高さがある。

「どうなっているんだぁぁぁ!メェーーーーン!ひー!ぎゃわー!ぴぇがぁぁ!」

一夜の叫びと悲鳴が、ニルヴァーナに木魂した。







そしてこちらはというと。

「うぷ・・・」

ニルヴァーナの足を伝って本体へ殴り込みをかけようとするナツ達だが、殴り込む前にナツには難関が待っていた。
そう・・・乗り物酔いである。

「何してんだ、ナツー!」
「こんな時でも酔うの!?」
「ちょっと!しっかりしなさいよー!」
「バカね」

ニルヴァーナは動いている。
それに乗るナツはニルヴァーナを乗り物と認識しているようで、グロッキー状態に陥っていた。
それを見たグレイ、ルーシィ、ルーは後ろに目をやり、ティアはぼそっと言い放つ。

「こ・・・これ・・・乗り物じゃねえのか・・・?」
「動いてるけど乗り物じゃねえ!そう思い込め!」
「キ・・・キモチ悪いィ・・・」
「こ・・・これ、タコの足だから!アンタ生き物の上なら平気でしょ!」
「タコは森にいねえし」
「妙なトコこだわらない!」

恒例行事になりつつあるグロッキー状態だが、今発動されては困る。
どうにかナツを復活させようと策を練るが―――――

『!』

完璧な策が出る前に、ナツの体がズリ・・・とズリ落ちはじめる。

「おおお・・・」
「ナツ!」
「このバカナツ!力抜くんじゃないわよ!」
「おおおおお・・・」

乗り物酔いで力が出ないのか、ナツはどんどんズリ落ちていく。
そして。

「お」
「きゃあああっ!」
「ナツーーーー!」

とうとう、ナツは落下した。
それを見たティアはルーに向かって叫ぶ。

「ルー!大空風翼(アリエスエーラ)であのバカ拾ってきなさい!」
「魔力が無いよう!」
「はぁっ!?」

そんな会話をしている間にも、ナツはどんどん遠く小さくなっていく。
地面が近づき空が離れ、もうダメだと全員が思ったその時―――――



――――――青い閃光が、ナツに向かって飛んで、ナツを掴んだ。


それはティアではない。



猛スピードで飛んで来た、ハッピーだった。

「ハッピー!」
「はぁ」
「ナイスキャッチー!」
「全く・・・心臓に悪いったらありゃしないわ」
「あい!」

それを見たルーシィとルーは歓喜の声を上げ、グレイは溜息をつき、ティアは呆れたように呟く。

「かっこよすぎる・・・ぜ・・・ヒーロー」

ピューッと空を飛びながら、ナツは力を取り戻していく。
徐々に酔いが醒めてきた。

「どう?ナツ。オイラと風になるのは気持ちいいでしょ?」

そう言うと、ハッピーは辺りを飛び回る。
遠くまで飛んだかと思えば、そこから円を描くように戻ってきた。

「ああ、最高だ」

茜色の空を桜色と青が飛ぶ。
ナツとハッピーが空中で動きを止めると、それを待っていたかのようにグレイが口を開いた。

「お前ら、そのまま上に行け。オレ達はそこにある穴から中に入ってみる」
「おう!」
「あいさ!」

ニルヴァーナの足の付け根、グレイが指さした先には穴がある。
それを聞いたナツとハッピーは返事をし、意気揚々と上へ飛んで行った。









「ついにやったな!ブレイン!ニルヴァーナを手に入れたぞ!」

ニルヴァーナで1番高い建物、ニルヴァーナの中心部。
そこに立つコブラは念願のニルヴァーナが手に入った事に歓喜の声を上げた。

「すげえ!これが古代人の遺産・・・キュベリオス、すげぇぞこりゃ」

パラパラと小さい瓦礫が落ちる。
コブラの言葉にキュベリオスが反応を示した。

「見よ、コブラ。眼下に広がるこの世界を」

ブレインの言葉に、コブラは下を見てみる。
先の尖った建物に正方形の建物、列車が走る鉄橋を思わせる橋。
そこにはかなり古そうな建物が立ち並び、巨大な都市となっている姿があった。

「古代人の都市。それこそがニルヴァーナの正体。この王の間において我が石により、思いのままに動く都市だ」

その言葉に、コブラが不思議そうな表情を浮かべる。

「動く・・・って、どっかに向かってんのか?コイツは」

その問いに、ブレインは薄い笑みを浮かべて答える。

「ここからでは狙えんからな、『あのギルド』は」
「最初の標的か」

コブラも笑みを浮かべる。

「光崩しの始まりの地とでも言っておこうか」

そう言いながらブレインが杖を揮う。
すると、長方形が王の間を囲むように展開し、巨大な魔法陣が現れた。

「進め!古代都市よ!我が闇を光へと変えて!」

ブレインが両手を広げて叫ぶ。
その瞬間――――その目の前を影が通り過ぎた。
空中で折り返したその影は光となり―――――王の間へと向かってくる。






「オレが止めてやるァアァアァァァアアァッ!」






そして――――螺旋の紅蓮が王の間を襲った。
ハッピーに抱えられたナツが放った炎は、王の間の床を破壊する。

「う・・・うぬは・・・!?」

予想外の事態に目を見開いて驚愕するブレイン。
ナツはブレインを睨みつけると、ぐりんと空中で回転した。
そして勢いよくブレスを放つ。

「ぐおっ!」

そのブレスはブレインを攻撃する。
が、それだけではなく、王の間の床や柱も片っ端から破壊していった。
狙っているのか否かは不明だ。

「コブラ!ここで暴れさせるな!」
「おう!キュベリオス!」
「シャアアッ!」

これ以上破壊及び暴れられればニルヴァーナどころではない。
そう判断したブレインはコブラに指示を出し、それを聞いたコブラがキュベリオスの名を叫ぶ。

「がっ!」
「うわっ!」

煙の中から飛び出して来たキュベリオスの体当たりを喰らったナツとハッピーは突然の事に防御できず、後方へと飛ばされる。

「んなもの・・・全部オレが燃やして・・・」

飛ばされながらナツはニルヴァーナを睨みつける。

「!」

が、ナツが再びニルヴァーナに接近するよりも早く、キュベリオスを伝い跳んだコブラがナツに接近した。

「うわー!」

そこから強力な打撃攻撃を放つ。
空中を回転するように2人は飛ばされるが、ハッピーが何とか踏み止まった。

「サンキュー、ハッピー」
「あい」
「!」

ハッピーに礼を言い、前を向いたナツは目を見開いた。
そこには敵であるコブラとキュベリオスがいる。

「シャアア・・・」

背に羽を生やし飛ぶキュベリオスと、それに乗るコブラが。

「ぬあ!」
「ヘビが飛んでるよ!」

まさか蛇が飛ぶとは思わなかったナツとハッピーは目を見開いて驚愕する。
が、コブラは特に慌てずに口を開いた。

「テメェ・・・オレの聞こえた話じゃ、乗り物に弱いと言われてなかったか?」
「ハッピーは乗り物じゃねえ!」
「そうだー!」

いつだったかにルーシィも同じ事を聞いていた(「火竜と空と猿と牛」参照)。
その言葉にナツとハッピーは憤慨するが、コブラは納得したような表情を浮かべる。

「なるほど・・・だから常に飛んでいるという訳か。乗り物(ニルヴァーナ)に立つ事は出来ないから」
「どけよ!オレはこのデカブツ止めるんだ!」
「やれるモンならやってみやがれ。ブレインには近づかせねえ」

その言葉にナツは視線を下げる。
そこにはこっちを見上げるブレインの姿があった。

「アイツが動かしてんのか」
「来いよ、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)
「おっしゃ・・・」

コブラの挑発に似た言葉にナツは意気込み―――――

「・・・と見せかけて狙いはアイツだ!」

コブラを無視し、ブレインへと向かっていった。
ニルヴァーナを止めるという事は動かしているブレインを倒せばいいという事でもある。
完全にコブラの意表をついたと思ったナツだが――――

「んが!」

キュベリオスの長い胴体。
正確にはその尾がナツの腹にクリーンヒットし、ナツとハッピーは吹き飛ばされた。

「軌道を読まれた・・・」
「え?」

ハッピーの言葉にナツは訝しげな表情を浮かべる。
だがハッピーの言う通り、軌道を読まない限りはナツを止める事は出来なかっただろう。

「聴こえるんだよ、テメェの動き」

コブラは笑う。
ナツはコブラを鋭く睨みつける。
コブラの口角が更に上がった。

「そうだ、それでいい。遊ぼうぜ」









同じ頃、化猫の宿(ケット・シェルター)メンバー+ヴィーテルシアはニルヴァーナの端っこにいた。

「はあ、はあ、はあ、はあ・・・」
「ごめんねシャルル、無理させちゃって」
「私の事はいいの」

シャルルは苦しそうに息をしながらも起きあがる。

「ありがとうございます、ヴィーテルシアさん」
「大丈夫ですか?」
「これくらい日常茶飯事だ。ティアと仕事に行く時の方がキツい」

アランとココロは翼を消したヴィーテルシアに頭を下げるが、当のヴィーテルシアは涼しげな表情で言葉を返した。

「それよりお前達・・・こんな所まできてどうするつもりだ」
「「「・・・」」」

ヴィーテルシアの問いに3人は言葉を詰まらせる。
体を小刻みに震わせながら起き上がるシャルルが口を開いた。

「まだジェラールってのを追って・・・」
「違っ!あ・・・えと・・・それも、ちょっとはあるけど・・・」

シャルルの言葉を反射的に否定し、すぐさま言い直すウェンディ。

「私・・・何とかしてこれを止めなきゃって!私にも、何かやれる事があるかもでしょ!?」
「ウェンディの言う通りだ。最初から出来ないって諦めるよりかは、力不足でもやれる事をするのがいいよね」
「そうね」

ウェンディの言葉に同意するかのように頷いてアランが続ける。
それを聞いたシャルルは少し笑みを浮かべて頷いた。

「ん?」

すると、ココロがピクッと反応した。

「どうしたの?ココロちゃん」
「あそこにいるの・・・ナツさんじゃない?」
「え?」

ココロが指さす先には、点。
距離があるのか、アランが目を凝らすがどう見ても点にしか見えない。

「本当だ、ナツさんと・・・ハッピー?」
「それと・・・六魔将軍(オラシオンセイス)のコブラもいる!」

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の為嗅覚・視覚・聴覚の優れるウェンディとココロは空を見つめ、目を見開く。
ココロは少し躊躇うような表情を浮かべ、すぐに覚悟を決めたように前を見据えた。

「ヴィーテルシアさん、お願いがあります」
「何だ?」
「ナツさんの所まで私を連れていって下さい」

ヴィーテルシアの紫色の目が見開かれた。

「何を・・・!まさか戦闘に混ざる気か!?」
「はい」

力強く頷く。
ウェンディのように少し気弱な少女は、力強く続けた。

「私だって滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)です!ブレスとちょっとの攻撃くらいしか出来ないけど・・・皆さんの役に立ちたいんです!」

その言葉にヴィーテルシアは視線を下げ、小さく溜息をついた。
魔法陣が展開し、ヴィーテルシアの背中から身の丈を超える大きさの翼が生える。

「乗れ。生憎だがハッピーのような姿は個人的に変身したくないのでな、戦いにくかろうがこれで許せ」
「あ、ありがとうございます!」

ココロはもう慣れたようにヴィーテルシアに跨ると、ウェンディとアランに目を向ける。

「それじゃあ・・・行ってくるね」
「頑張って!」
「気を付けて!」
「無茶はしちゃダメよ」
「うんっ!行きましょう、ヴィーテルシアさん!」
「了解だ!」

バサッと音を立てて翼をはためかせ、ココロとヴィーテルシアはナツの下へと向かっていく。
それを見送った3人は顔を見合わせた。

「ココロってば・・・大丈夫かしら」
「大丈夫だよ。ココロちゃん強いし」
「ヴィーテルシアさんもついてるし・・・心配はいらないんじゃないかな?」
「・・・そうね」

ウェンディとアランの言葉にシャルルは頷き―――――――

「!」

何かに気づいたように、目を見開いた。

「!?どうしたの、シャルル」
「何かあった?」

ぶるぶると震えながらてくてく歩いていくシャルルを見て顔を見合わせ、ウェンディとアランは声を掛ける。

「ま・・・まさか・・・偶然よね!?そんな事あるハズ・・・」
「どうしたんだよシャルル。説明してくれないと解らないって」

アランが困ったように言うと、シャルルは声を震わせながら呟いた。

「この方角・・・このまままっすぐ進めば・・・」

ニルヴァーナの進む先。
それをしっかりと見据え、シャルルは言い放つ。



化猫の宿(わたしたちのギルド)があるわ」



「「え?」」

言い放たれた言葉に、2人は呆然と目を見開いた。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
次回、ココロの戦闘シーン!
・・・だがなぁ、最初はココロもウェンディと同じように戦闘さっぱり出来ないキャラの予定だったんだけど。
ここらで変更・・・かな。

感想・批評、お待ちしてます。
ファンミーティング『竜王祭2014』・・・応募したけど、はずれた。 
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