八条学園怪異譚
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第五十七話 成長その十一
「考えてみたらそうした場所にどうこう出来るって特別な人よね」
「そうした力のある人だけだから」
「博士とか青木先輩とか」
「そうした人だけだからね」
だからだった、普通の少女でしかない彼女達だからあ。
「何かをしようにも出来ないわね」
「清めのお塩を置く位ね」
塩といっても妖怪達は普通に料理に使うし塩それだけでも酒を飲むことがある。この場合は清めた塩のことだ。
清めた塩は邪な妖怪や幽霊達には効果がある、だからそれを置くだけでも効果がある。しかしそれもなのだ。
「それって悪い妖怪とか悪霊には効くけれど」
「それでもね」
「あの人達悪い人達じゃないから」
「別だからね」
「封印とかもね」
「出来ないわよね」
具体的な方法も知らないのだ、二人は。それではどうするのかということだった。
「じゃあいいわね」
「別にね」
「何もしなくて」
「出来ないし」
実際にはその方法もなかった、これではどうしようもなかった。
二人はどうするかを決めた、愛実はそうするとすっきりとした顔になって聖花にかおを向けた。その顔は微笑んでいる。
「今日部活も終わったら」
「愛実ちゃんのお家に行ってよね」
「二人でお茶飲まない?それでお菓子食べよう」
このことに誘うのだった、二人がこれまでいつもしてきたことに。
「お饅頭あるから」
「どんなお饅頭なの?」
「栗饅頭よ」
饅頭といっても色々ある、日本の饅頭だけでもだ。
「それでいい?」
「愛実ちゃん知ってるでしょ、私栗饅頭好きなのよ」
「わかってるから誘うのよ」
愛実はその微笑みで聖花にこうも話した。
「だからなのよ」
「そうよね、それでお茶は」
「ほうじ茶だけれど」
「そう、私それも好きなのよね」
「そうよね、どのお茶もね」
「好きよ」
こう言うのだった、再び。
「それじゃあね」
「ええ、二人いえ三人でね」
「愛子さんも一緒ね」
「そう、だからね」
三人で楽しくやろうというのだ。
「そうしようね」
「そうね、ところで愛子さんって」
彼女の名前を聞いてだ、聖花は愛実にあることを尋ねた。二人はそのことについて久しぶりに話をした。
「結婚されることは」
「大学を卒業してからよ」
「じゃあもうちょっと先ね」
「そう、今じゃないわ」
姉の結婚についてだ、愛実は聖花に真面目な顔で答えた。
「だからね」
「もう少し先なのね」
「そう、、先だから」
だからだというのだ。
「もう少し待っていよう」
「そうね、それじゃあね」
こう話してだった、そうして。
二人は愛実の家で愛子と三人でほうじ茶と栗饅頭を食べた、食堂でもある愛実の家の居間においてそうした。
その中でだ、愛子が二人にこう言った。
「あんた達入学の時よりもいい顔になったわね」
「いい顔って?」
「どういうことですか?」
「だから言ったままよ」
ありのままの言葉だというのだ。
「明るくてね。成長したって感じよ」
「明るく、なの」
「成長してるんですか、私達」
「ええ、特に愛実ちゃんはね」
愛子は自分の妹のその顔を見て言った。
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