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万華鏡

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第五十六話 クライマックスその十一

「お酒はいいけれどドラッグはね」
「絶対ですか」
「駄目なんですね」
「悪い相手に引っ掛かることと同じだけね」
 ミュージシャン、アーティストにとって禁物だというのだ。
「駄目よ」
「それはですね」
「絶対になんですね」
「そのことは」
「そうよ、ドラッグは身体も心も蝕むわ」
 よく言われていることだ、それがわかっているのかわかっていないのか求める人間が後を絶たないのは嘆かわしいことだ。
「それで本当に破滅するから」
「だからドラッグはですか」
「絶対に駄目なんですね」
「そうよ、いい相手を見付けてね」
 そうしてだというのだ。
「ドラッグには手を出さないの」
「音楽をするからには」
「絶対にですね」
「刺激とかは別のことで求めるの」
 よくドラッグに手を出したアーティストが言う、刺激を求め手を出したと。そこから来る快楽で音楽のヒントを得ようとともするらしい。
「そんなのに頼って出した音楽もね」
「よくないんですね」
「お酒はいいけれど」
 人類の友であるこれはというのだ。
「それでもドラッグはね」
「悪い相手と一緒に」
「絶対に」
「そう、手を出さないの」
 断じてだというのだ。
「わかったわね」
「それで今はですね」
「いい相手とですね」
「踊りなさいよ」
 部長は部員達にあらためてこう言った。
「いる娘はね」
「わかりました、それじゃあ」
「踊ってきます」
 一年のうちの何人かが手を挙げて応えた。
「それで楽しんできます」
「そうしてきますね」
「他の娘はそうした相手を探すか」
 それかだというのだ。
「飲むのよ」
「そうして時間を潰すんですね」
「最後の宴会で」
「そうよ、そうするのよ」
 是非にというのだ。
「わかったらね」
「はい、じゃあいない私達は」
「そうします」
 こうしてキャンプファイアーのことが決まった、こうしてだった。
 軽音楽部の部員達はこぞってキャンプファイアーが行われるグラウンドに出た、勿論酒や肴も全て持って。
 そのうえで外に出た、するとだった。
 何人かは幸せそうに相手と一緒にいた、部長はその彼女達を見てにこにことして言う。
「そうそう、乙女よ恋せよ」
「そう言いながら飲むのねあんたは」
「いつもみたいに」
 部長はグラウンドの隅に敷きものを敷いてその上に座って早速飲んでいる、大杯に焼酎を入れてごくごくとだ。
 そうしつつだ、同じ場所に座っている宇野先輩と高見先輩に応えたのだ。
「というか彼氏いなかった?あんた」
「確かいたわよね」
「後よ、後」
 部長はあえて答えず飲むのだった。
「それはね」
「というか彼氏いることは否定しないのね」
「それはなのね」
「ノーコメントってことでね」
 やはり答えない部長だった。 
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