| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

SAO-銀ノ月-

作者:蓮夜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十話

 
前書き
記念すべき二十話。 

 
 レッドギルド、笑う棺桶《ラフィン・コフィン》のリーダーであるPoHとの戦い……いや、敗北から二週間がたった。

 俺も、このだいたい一年半に渡るアインクラッドの生活において、現実の生活以上に対人戦には慣れたつもりではいたが……上には、上がいたということだろう。

 それも当然と言えば当然で、PoHを始めとする殺人者たち……すなわち、自らをレッドプレイヤーと称する者たちは、もう既に人を殺しているのだ。
……何人もの、人を……!

 ……そのことから、彼ら《レッドプレイヤー》たちは対人戦だけでなく、殺し合いにも慣れていると言えば正しいか。

 ……殺人に関するキャリア、そして意識の差……こればかりは、俺がレッドプレイヤーにならなければPoHに肉迫できる筈もない。
だが、もちろん俺はレッドプレイヤーなどになる気は無い。

 今度会った時こそ、あいつを……PoHを行動不能にしてかれ監獄にぶち込む。
……もしくは、この手で……いや、これ以上は言うまい。
そう決意し、俺は再び元の日常に戻った。


 現在のアインクラッドの季節は、現実世界での5月と言ったところだろう。
ポカポカとした陽気が外を包み、ちょうど良い季節だった。
そんな中、俺が今いるのは第四十八層《リンダース》。
目的はただ一つで、愛刀である日本刀《銀ノ月》と、足刀《半月》の強化である。

 元々、ソロで倒したレアモンスターのインゴットを使い、自らの鍛冶スキルで作成・強化を行ってきたのだが、流石に、本職ではない俺ではこれ以上強化するのは荷が重くなって来ており、そもそもそのボスからドロップしたインゴットも足りなくなってきた。
そのインゴットを補充しようにも、俺の手によりそのレアモンスターはこの世界から永遠に消え去った。

 そんなわけで、本職の鍛冶屋に頼みに来たのだ。
鍛冶屋には、強化用のインゴットもあるためにインゴット不足も解消でき、何より強化成功率が俺より上だ。

「ここか……」

 《リンダース》をしばらく歩き、水車が回るプレイヤーホームに着いた。
先日、フレンド登録をさせてもらった《閃光》アスナに、『腕のいい鍛冶屋を知らないか?』とメールをしたところ、返ってきたメールに書いてあった場所がここ――《リズベット武具店》であった。


「いらっしゃいませ」

 中に入ると、まずは店番であろう、売り場に立つ少女NPCからの声がかかる。
ここはプレイヤーが経営する店だと聞いているので、店主は作業中であるのだろうか。

「武器の強化を頼みたいんだけど」

「しばらくお待ちください、店主を呼びます」

 一般品の売買ならばともかく、流石に武器の強化までいくとNPCに任せてはいないのだろう、少女NPCが隣の工房に入り、店主を呼んできた。

「い、いらっしゃいませ!」

 何故かいらっしゃいませを口ごもりながら、店主が出て来た……が。
ピンク色のフワフワしてそうな髪にエプロン姿であり、とても鍛冶屋には見えなかった。……アスナのメールにあった、『見たら驚く』とはこのことか。
……まあ、アスナがオススメして来た店だ、腕は確かだろう。

「この日本刀……いや、カタナか……の強化を頼みたいんだけど、《丈夫さ》用のインゴットはあるか?」

 このSAOには、強化パラメーターに五つの要素がある。
《鋭さ》《速さ》《正確さ》《重さ》《丈夫さ》の五つだ。

 その中で、俺は《鋭さ》と《丈夫さ》を優先して鍛えていた。
理由としては、《正確さ》はプレイヤースキルで補うことが可能であり、《重さ》は上げると、レベルアップが日常的に出来ない俺の仕様上、要求筋力値を満たせない可能性があるためだ。……《速さ》は、《重さ》を上げていない分、軽いので速さは補える。(まあ、少しは上げているが)

 そして、折れたら身も蓋もないために……いや、PoHに前の愛剣を斬られた為に《丈夫さ》と、切れ味命の武器として《鋭さ》を上げている。

 まあ、ここで問題が一つある。
先程挙げた各パラメーターを上げるには、《添加物》と呼ばれるアイテムが必要であるのだが、俺は《丈夫さ》を上げられるインゴットを持っていない。
……いや、《銀ノ月》を作った時に使ったインゴットが堅すぎて、並みの《添加物インゴット》では耐えられない、というのが正しい。

 このままでは、強化がこれで終わってしまうのだが、一縷の望みをかけてアスナ紹介の《リズベット武具店》に来たわけだ。

 目の前の少女店主(便宜上こう呼ぶ)も、自らの品揃えに自信があるのか、「ふふん」と小さく自慢気に笑いつつ、アイテムストレージを操作して、大量のインゴットを近くにあった机の上に並べた。
自慢気になるだけあって、素人眼から見てもなかなかに上質そうなインゴットが並ぶ。


 試しに、一番高そうなインゴットを手にとって見てみる。
俺は《鑑定》スキルを上げていないので、このインゴットの名前ぐらいしか表示されないのだが。

「そのインゴットは、ウチにある中で一番のインゴットでして……」

 やはりこのインゴットが一番か。
裏切って欲しかった予想が、当たってしまったことに落胆を感じながら、その一番いいインゴットを机の上に置いた。
「多少値が張りますけど……」と、話を続けている少女店主の話を聞き流して、自分の用件を手短に告げることにした。

「悪いけどこの強化依頼、中断させてもらって良いか?」

「…え? な、なんで……!?」

 少女店主が、訳が分からないといった様子で問いかけてくる。

「ここのインゴットは、確かに上質みたいだけど、この日本刀……カタナに使ってるインゴットに比べると見劣りする。……大分見劣りする素材をインゴットに使ったら、成功率が下がることは知ってるだろ?」

 客として頼んだ立場としては、大変心苦しいものがあるが、事実なのだから仕方がない。
失敗する可能性が大きくする鍛冶屋など、自分でやった方がまだマシだ。

 ……まあ、これは《リズベット武具店》の品揃えが悪い訳ではなく、一回しか現れない、名前付きのレアモンスターと同等ぐらいの素材が無くても仕方がないと言ったところだが……

「ふ……」

 そんな俺の思考を、少女店主の声が中断させた。
ふ?

「……ふざけるんじゃないわよーッ!」

 これが少女店主……いや、《リズベット》との出会いだった。
 
 

 
後書き
え〜はい。
色々すいません、謝らせてください。

鍛冶のくだり……特にインゴットや、《丈夫さ》用の添加物あたりはほとんどオリジナルです、すいません……
ここがおかしい、ここは原作にあった、などのアドバイスを待ち望んでおります。

そして、第二十話にしてようやく原作ヒロインの一角、リズ登場。
好きなキャラだけあって、可愛く書けるか心配です……まあ、それはどのキャラにも言えることですが。

あ、あと、まだリズはキリトと知り合ってはいません。
キリトが訪ねて来るのは6月未明、現在は5月の中旬です。

では、感想・アドバイス待っております。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧