久遠の神話
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第九十話 家族の絆その七
「私達は」
「本当にね」
その通りだったとだ、智子はここでも悔恨の言葉を出した。
「そうしているべきだったわね」
「ですね、しかし」
「ええ、終わらせるのならね」
それならとだ、智子はその言葉を強くさせて。
そのうえでだ、豊香に対してあらためてこう告げた。
「けれどね」
「この戦いは今完全に終わらせますね」
「その手は打っているわ」
既にだというのだ。
「一つ一つね」
「そしてまた一人」
「降りるわ」
このことは間違いないというのだ。
「終わりに。次第に近付いているわ」
「そうですね、セレネーお姉様もこれで」
「戦いから目を覚まして頂ければ」
有り難いとだ、こうも言う智子だった。
そうしたことを話してだ、二人共今は道を進んだ。
そして豊香はロシアから瞬時に日本に戻った、神々の力で瞬間移動を行いそれで日本に戻ったのである。
それからだ、豊香は学園の喫茶店のうちの一つである高等部普通科のすぐ傍の店に入って智子と会った。智子はその店、六十年代のアメリカを思わせるポップスな内装の店のカウンターに座っていた。そこから店に入って来た豊香に声をかけた。
「いらっしゃい」
「そちらでしたか」
「ええ、お疲れ様」
智子は微笑んで豊香に声をかけた。
「ロシアまで行ってもらって」
「いえ、楽しい旅でしたので」
豊香は笑顔でその智子に言う。
「お気になさらずに」
「そう言ってくれるのね」
「実際にそうでしたし」
また言葉を返した豊香だった。
「少しお茶も楽しんできました」
「ロシアのお茶ね」
「紅茶に」
それにだというのだ。
「ケーキも」
「ロシアのケーキね」
「硬いケーキです」
ロシアのケーキは独特だ、クッキーの様に硬い他の国のケーキとはまた違うものだ。
「それを頂きました、お店で」
「そうなのね」
「非常に美味しいものでした」
「ロシアもあれでお料理がいいわね」
「そうなのです」
豊香はカウンターに向かい智子の隣の席に座ってからまた述べた。
「お茶も」
「ロシアのお茶はジャムをね」
「入れるのではないです」
「そう、舐めながらね」
そうして飲むものなのだ、ロシアの茶は。
「そうして飲むからね」
「それがまた美味しいです」
「そうね、紅茶の飲み方としてね」
「いいものですね」
「私もそう思うわ。あとね」
智子は微笑みながら豊香に話していく。
「紅茶にそのジャムを入れるのもね」
「日本でのロシアンティーですね」
「そう、それもね」
好きだというのだ。
「このお店にもあるけれど」
「どちらでもいいですよ」
カウンターからウェイトレスが微笑んで言って来た。
「日本の飲み方でもロシアのそれでも」
「どちらでもいいのね」
「ジャムはケースに入れていますけれど」
言うまでもなくジャムを入れるケースだ。
「ロシアからの方が舐めながら飲んでおられまして」
「それまではだったのね」
「はい、入れる人が大抵でしたけれど」
ロシアンティーは日本では長い間そうして飲むと思われていたからだ、このことについてどうやら誤解があったらしい。
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