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フェアリーテイルの終わり方

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九章 湖畔のコントラスト
  11幕

 
前書き
 妖精 の 決意 

 
(お姉ちゃんがわたしのお姉ちゃんである限り、この世のどんなことも怖くない)

 エルと存分に抱き合って、ぬくもりを体中に刻んで、勇気をフルスロットルに。

 フェイはエルから離れてヴィクトルの前に出た。およそ父親のものではない、尖った眼光がフェイを射抜く。

「パパがフェイをキライなのは知ってた。イラナイ子だってのもよく分かってた。でも、考えたの。パパがわたしをどう想ってるかで、わたしのパパへのキモチは変わるの? って。――変わらなかった。わたしはやっぱり、どうしてもパパがスキで、パパにスキになってもらいたかった」

 冷たくて、無関心。フェイをずっといないものと扱ってきた父親。

(それでも、よ。お姉ちゃんみたいに、わたしも自分の力で立てるようになりたいから)

 ヴィクトルの腕で届くか届かないかギリギリの位置まで行き、フェイは左手を差し出した。

「わたしはパパと手を取り合いたい。パパの願いを叶えたい。ルドガーが死ななきゃ正史世界に行けないのも、お姉ちゃんの思い出が最初からやり直しになっちゃうのも、わたしが何とかしてみせる。これがわたしにできること。今のわたしに思いつくこと。フェイがパパの娘だから、言えるの。パパ、もうやめて。お願い。ルドガーとお姉ちゃんをこれ以上傷つけないで。パパもこれ以上傷つかないで」

 フェイは震えを堪えてヴィクトルに差し伸べる手を維持した。

 叶うなら取ってほしい、でもきっとヴィクトルは取るまい――と、暗い未来を想像しかける自分を叱り飛ばす。

 ガイアスはできることを考えろと言った。マクスウェルのミラは、甘えるなと言った。
 今のこれは、フェイなりに努力してきたものの集大成。
 あとはヴィクトルがその手を取るかだけ。

「ふざけるな」

 バチィ…イン!!

 ヴィクトルは手加減なく、フェイの伸べた左手を叩き返した。
 傷が開く。白い包帯に赤が滲んでいく。フェイはとっさに右手で左手を押さえ、きゅっと目を閉じた。

 再び目を開けた時には、正面にいた父は、剣を振り被っていて。
 ああ、死ぬんだ、と頭のどこかが冷静に思った。


 フェイが動けないでいると、反対側からジュードが駆けてきた。背後からの奇襲狙いで拳を脇に撓めてヴィクトルに飛びかかる。
 フェイには分かる。ジュードの攻撃は当たらない。ヴィクトルが気づいてしまった。

「イヤ……ジュードぉ!!」

 風と土を駆使して転位同然の速さでジュードとヴィクトルの間に割り込む。当然の帰結として、フェイはその背にヴィクトルが振り抜いた斬撃を受けた。

「フェイぃっっ!!」

 斬撃の衝撃で、フェイの体はジュードにぶつかり、ジュードはそれを受け止めようとして。
 二人ともが湖へ吹き飛ばされ、水没した。 
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