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万華鏡

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第五十六話 クライマックスその三

「そのままじゃないですか」
「飲んでると脱ぐ娘がいるのよ」
「私達は一応着てるから」
 例えはだけてもだ、流石にジャージではそうならないので最近は大丈夫だが。
「下着だけならまだいいけれど」
「一糸まとわぬってなるから」
 こう言うのだった。
「全裸で雑魚寝とかね」
「そうなるから」
「それ絶対にやばいですよ」
 泥酔し全裸で雑魚寝だ、美優はそう聞いてすぐにこう返した。
「寮大丈夫なんですか?」
「そういう娘は無理に服を着せて自分のベッドに放り込むから」
「それで朝はお風呂に放り込んでね」
「二日酔いも解消させるんですね」
「そう、それがうちの寮よ」
「八条学園の女子寮よ」
 そうした荒っぽいものだというのだ、八条学園の女子寮は。
「凄い世界だから」
「飲むことについてはね」
「そうしていい女になっていくのよ」
「飲んで飲んでね」
「あの、それって」
 流石にだ、飲む方である琴乃も難しい顔で述べた。
「女を磨くんじゃなくて肝臓をいじめてません?」
「むしろ飲まない日の方がずっと多いから」
「毎日そうじゃないから」
「その辺りはちゃんとしてるからね」
「安心してね」
「だといいですけれど」
 しかしそれでもだ、琴乃は内心呆れてもいた。そうしてだった。
 そうした話をしながらだ、先輩達はステージに向かう。既にその手には楽器がある。宇野先輩はサックス、高見先輩はベースだ。
 そのそれぞれの楽器を見てだ、景子は言った。
「あれっ、普段と違いますね」
「ちょっとね」
「今日は変えてみてるの」
 演奏する楽器をだというのだ。
「実はね」
「これも音楽のうちよ」
「いつも同じ楽器を演奏しているとマンネリになるから」
「それでなのよ」
「ううん、だからですか」
 琴乃は先輩達の話を聞いて述べた。
「今日はその楽器にされるんですか」
「サックスもね」
 宇野先輩は今手が持っているサックスを見て言った。
「やってみると面白いわよ」
「サックスっていいますと」
 琴乃は首を傾げさせつつ話す。
「ジャズですよね」
「ロックでも使うわよ」
「そうなんですか」
「チェッカーズっていうグループあったでしょ」
 福岡の久留米出身の七人グループだ、八十年代の日本の歌謡界を席巻した伝説的グループとしてその名を残している。
「あのグループが使っていたのよ」
「チェッカーズですか」
「チェッカーズは知ってるわよね」
「そういえばサックス使ってましたね」
 言われて思い出した、琴乃も。
「あのグループ」
「藤井尚之さんがね」
「郁弥さんの弟さんですね」
 この頃は藤井郁弥といった、ソロになってから藤井フミヤになった。チェッカーズの顔と言っていいリードヴォーカルだ。
「そうでしたよね」
「そうよ、最初はベースだったけれどね」
「ベースの大土井裕二さんが加入したからサックスになったの」
 高見先輩はそのベースを手に話してくる。 
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