不老不死の暴君
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第四十二話 千年神戦争
「御伽噺を聞きたい・・・?」
「魔人といい、先の異形者といい、貴方の知っている御伽噺がある程度の真実を含んでいる可能性があります。現に王家にしか伝わっていないはずの魔人の伝承を貴方は知っていた」
「確かにそうかもしれませんが、その御伽噺の中では彼ら異形者は人が倒せるような存在ではない筈ですが・・・」
「どうだかな。神話や伝説なんてものは大抵誇張されてるもんだ」
バルフレアの言葉を聞き、セアは暫く頭を悩ませていた。
そして・・・
「参考になるか知らんが俺の知ってる御伽噺は数百年前のバレンディア西部で伝わってた話だぞ」
そう言ってセアは御伽噺を語り始めた。
遥か昔、日の昇る場所から日の沈む場所まで支配していた神々がいた。
その当時の人は知恵を持たずに寒さに打ち震えていた
それを哀れんだ神が火の扱い方を人に教え、大地に楽園を築き、そこに人々を住まわせた。
みるみるうちに知恵を付け、多くのものを生み出していった。
しかし、知恵を身につけた人々は楽園だけでは満足できず、外の大地を開拓していった。
そして外の大地で人々が土地を巡って戦乱を起こすようになり、神が教えた火も使われていました。
それを知った神々は怒り、外の大地を業火で薙ぎ払い、燃やし尽くした。
しかし暫くたつと再び外の大地を開拓し、戦乱を起こしました。
神々はその度に外の大地に出て行った人々を滅ぼしました。
ある時は外の大地にいた人に雷を落として、ある時は外の大地ごと人を吹雪で氷漬けにして、
ある時は地割れを起こして人を奈落の底に落として、ある時は津波を起こして人を水の底に沈めた。
それでも人々は時間がたつと楽園を捨て、外の大地を開拓していきました。
神々は自分達は人々を導くには次元が違いすぎるのではと考え、異形者を創造しました。
彼らは地上で神々より与えられた使命に従い、地上を統治していた。
しかし彼らの一部が生物の悪意をまのあたりにして徐々に変わり始めていた。
そんな時、黒き翼を持つ堕天使アルテマが異形者達の最高位である聖天使アルテマと接触。
この接触が切欠で黄金の翼を持つ聖天使アルテマは神々に反旗を翻した。
するとすぐさま人々を導く立場にあった統制者ハシュマリムが聖天使アルテマに従った。
神々に従順であった他の異形者達も長き時間の間に変わってしまっていた。
魔人ベリアスは失敗作と位置づけられ、何の役目も与えられなかった事に怒り、
背徳の皇帝マティウスは下界の統治中に欲望の素晴らしさを知り、欲望のままに生きることを望み、
密告者シュミハザは己が神の護衛というやりがいのない仕事だった事に不満を抱き、
暗闇の雲ファムフリートは神々が己が姿をおぞましいと鎧に閉じ込め封じ込めた事に怒り、
憤怒の霊帝アドラメレクは異界の魔物達に慕われ、彼らの主として外の世界に行くことを願い、
死の天使ザルエラは天を呪う者たちに魂を侵されてしまい、
不浄王キュクレインは神々が己を汚れを吸う存在として生み出したことに
断罪の暴君ゼロムスは人を断罪する時の快感に心を奪われ、
審判の霊樹エクスデスは審判者として心を無にしてきた結果、世界を無に返そうとし、
輪廻王カオスは世の中にはびこる混沌の渦に巻き込まれ、
このようにして変わってしまった彼らは聖天使アルテマを盟主として神々に反旗を翻した。
この時に聖天使アルテマに従った異形者達を俗に闇の異形者という。
神々と闇の異形者達は争いは1000年もの長い時間に及んだ。
この戦争を千年神戦争と呼ぶ。
最終的に闇の異形者達に勝利した神々は彼らに獣印を刻み、封じた。
その後、人に失望して神々は楽園を海の底に沈めて姿を消した。
こうして神の時代は終焉を告げ、現在のように血で血を洗う力の時代を迎えることになる。
「これが俺の知っている御伽噺の内容ですね」
「獣印というのがン・モゥ族の伝承にある魂がミストに繋がれた事かしらね」
「さぁ、今のところ御伽噺に登場した魔人と背徳の皇帝は実在したってことくらいしかわからん」
セアは首を振りながらそう言った。
「そんなわかんないことよりさ、早く奥の部屋に行って【覇王の剣】をとったほうがいいんじゃない?」
ヴァンの言葉に全員が思考を中断する。
そしてヴァンの方を全員が見た。
「な、なんだよ?」
「とりあえず馬鹿弟子の言うとおりだな。とっとと【覇王の剣】を持って神都に戻ろう」
セアはそう言うと奥の扉を開き、入っていった。
他の全員もそれに続いた。
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