首縊り
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六章
「これでじゃ」
「鬼のこともですね」
「これで」
「うむ、この納屋に入っても何もない」
そうなったというのだ。
「安心せよ」
「はい、それでは」
「これで」
「安心して暮らすのじゃ」
関羽の声には微笑みもあった、その微笑みと共に。
彼は二人にだ、こうも言った。
「ではな」
「はい、これではですね」
「関羽様も」
「また何かあれば呼ぶがいい」
二人に今度は穏やかな声で告げる。
「拙者は常にそなた達と共におる」
「そしてですね」
「私達を」
「拙者の務めは民を守り助けることだ」
「ご生前の頃からですね」
「人であられた頃から」
「そうじゃ、だからこそじゃ」
神である今もだというのだ。
「そなた達に何かあれば現れる、ではな」
「はい、それでは」
「有り難うございます」
二人は関羽に深々と頭を下げた、そうして。
関羽は姿を消し二人も深い眠りに入った、そして目覚めて。
起きてだ、二人は朝飯を食べながら話をした。
「この屋敷の前にそんなことがあったとはな」
「思いも寄りませんでしたね」
「まことにのう、このことは」
「関羽様に助けて頂きました」
「それでじゃが」
呉は朝の粥を食べながら話していく。
「納屋のことじゃが」
「そのことですか」
「うむ、それじゃ」
まさにそれだというのだ。
「一度行ってみるか」
「そうですね、食べた後で」
「そうしよう」
こう話して実際に朝飯の後でだった、そのうえで。
二人でその納屋に行った、それからだった。
納屋を開く、そこには。
何もいなかった、あの鬼の姿形も影もなかった。
それでだ、呉はその納屋の中を見て言った。
「さて、では」
「鬼の供養をですね」
「知らなかったkととはいえこの屋敷でのことじゃ」
だからだというのだ。
「弔おう」
「そうですね、それでは」
「我等もな」
「はい、それでは」
こう話してそしてだった、彼等は。
鬼の供養もした、それから。
二人で関帝廟にも言った。そのうえで再び供えものをした。そこにいる関羽は像であり今は何も言うことはない。
しかしその関羽にだ、二人は頭を下げて言った。
「有り難うございました」
「まことに」
こう礼を言ったのである。
「これはそのお礼です」
「お収め下さい」
「それでは」
「またその時に」
二人は関羽に心から感謝した、縊鬼は去りそのことを感謝せずにはいられなかったからである。その後納屋には鬼を供養するものが常に置かれ以後鬼が出ることはなかった。
首縊り 完
2013・9・24
ページ上へ戻る