首縊り
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第三章
「余計に怨むのだ、それでだが」
「それで?」
「それでといいますと」
「その縊鬼のいる場所は何処だ」
今度はだ、関羽はその鬼がいる場所のことを二人に尋ねてきた。
「そなた達の屋敷の納屋というが」
「ええと、そういえばここは」
「何か」
二人はここで自分達の周りを見回した、白く何もない場所だ。足元さえ白く足場も見えない。
その場所に気付いてだ、こう言うのだった。
「何もないですね」
「何処でしょうか」
「そなた達の夢の中だ」
それがここだというのだ。
「だが何時でもその場に行くことが出来る」
「屋敷の納屋にですか」
「あの場所にですか」
「そうだ、行ける」
まさにすぐにだというのだ。
「そなた達が行きたいと言えばな」
「関羽様もですか」
「いらして下さるのですか」
「無論だ、その為に拙者を呼んだのであろう」
「はい、そうです」
「その通りです」
二人は関羽の問いにすぐに答えた、その通りだと。
「それでお願いしました」
「お供えも捧げて」
「それなら当然のことだ」
彼が赴くのもだというのだ。
「では参ろうか」
「はい、それでは今より」
「お願いします」
二人も応えそうしてだった。
同時にその屋敷の納屋に行きたいと念じた、すると。
一瞬でその納屋の前に来た、そこには関羽も一緒だった。馬に乗って青龍偃月刀は今もその手にある。刃の輝きが闇夜の中で眩い。
その彼がだ、二人に言って来た。
「確かにな、これはな」
「はい、感じられますか」
「関羽様も」
「これは相当なものだ」
強いというのだ、怨みが。
「並の道士や狐では適わぬ」
「しかし関羽様ならですね」
「貴方ならば」
「任せてもらおう、ではだ」
関羽は馬に乗ったまま前に出た、そして。
納屋の扉に対して開いた右手を向けた、武器は左手にある。
その右手から念を放った、すると。
納屋が開いた、そしてその納屋の中に。
首を吊った女がいた、唐代の古い服を来て目は異様なまでに吊り上がり爛々と赤く輝いている。舌は長くだらんと出ている。身体は力がなく吊られている。身体はそうしたもので。
その気は黒くおぞましいものだった、異様に大きく。
二人にも迫っていた、関羽はその二人に言った。
「案ずるな」
「この気に触れるとですか」
「首を」
「今までよく誰も首を吊らなかったものだ」
実際にそうならなかった、それは僥倖だったというのだ。
「まことにな」
「はい、家の者は噂が出てから近付けなかったので」
「どうしてそうした噂が出たのか不思議ですか」
「鬼は何処にでもいる」
その様々な鬼達がというのだ。
「彼等の話が生きている者達の耳に入ったのであろう」
「それでなのですか」
「噂になったのですか」
「そうだ」
関羽はこう二人に話すのだった、噂のことも。
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