魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~
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大切なもの
†††Sideフェイト†††
ドクター、ジェイル・スカリエッティ一派の襲撃を受けて破壊されていた隊舎と六課隊員寮の修復が完了して、六課の隊員たちの引っ越し作業も無事に終了。そして今日は荷物整理を行う時間ということで、みんなはそれぞれ荷物整理を行っている。そんな私も今は運んできた荷物を整理中だ。
「・・・あ」
いろいろと私物を漁っていると、出てきたのは小さいながらも装飾の施された赤い箱。それは私の大事な大事な宝物がしまってある箱だ。
「どうしたの? フェイトちゃん」
「フェイトママ、なにかあった?」
ルームメイトのなのはと、なのはが保護責任者になって、私が後見人になっているヴィヴィオが後ろからそう訊いてきた。なのはも私と同様に私物の整理中で、ヴィヴィオはそれを手伝っている。
「うん。これ・・・」
2人へと振り向いて、両手に乗せた私の宝箱を見せる。以前にも見せたことのあるなのはは「あ、それって・・・」懐かしそうにして、ヴィヴィオは当然の如くこの箱は初見だから、?顔になった。それだけでもう可愛いんだ。
「てっきり寮に大事にしまってあると思ってたんだけど、持ってきてたんだね」
その赤い宝箱を優しくそっと胸に抱く。ちなみに寮とは六課のじゃなくて、本局内の市街区画にある本来の私の住まいのことだ。
(でも六課へ来た時やアースラに行く時でも、こっちには無かったような気がするんだけど・・・)
もし単純に気付いていなかったなら、それはかなり最悪だ。宝物とか言っておいて持っていたのに気付いていませんでした、なんて・・・。
「フェイトママ、それなーに?」
トテトテ歩いて来るヴィヴィオに蓋を開けて中身を見せる。するとヴィヴィオは「わぁ!」と目を輝かせた。
「これはね、フェイトママの宝物なんだ」
「たからもの・・・。すごくきれい♪」
ヴィヴィオは完全に箱に納められたソレに心を奪われてしまったみたい。私はソレを手に取って、「あ、今でもなんとか入る」左手の小指にはめた。あれから10年と経つから無理だとは思っていたけど、意外にそうキツくはなかった。
「フェイトちゃんの指は細くて綺麗だからだね♪」
そんな恥ずかしくなるようなことを言いながら、なのはが私の小指にはめられたソレを見る。私の小指にはめられた“指環”。ルシルから貰った私の一番の宝物。5つの小さな宝石と十字架に備えられた円環が昔の私たちの関係を表しているものだ。
「そう言えばフェイトちゃん。それってルシル君に一人前に認めてもらえるまではめないって言ってなかったけ?」
「あ、うん。それはもう大丈夫だよ。ゆりかごから脱出するときにルシルが、もう一人前だな、って言ってくれたから」
「そっか。それは良かったね、フェイトちゃん♪」
実戦で使ったのは“闇の書”事件の頃。シグナムと初遭遇した際だ。その効果には本当に助けられたけど、そのあまりに強大な効果に甘えそうになったことが何度もあった。でもそれじゃ私は成長できない。そう考えた私とアルフは、ルシルと約束をした。それが指環の効果に頼らない程までに成長して、ルシルに一人前だって認めてもらえるまでは封印しておくって。しばらく思い出に浸っていると・・・
「なのはママ、フェイトママ、早くしないと終わらないよ?」
「ごめんね~」
「そうでした」
ヴィヴィオに諭されて、すぐさま整理を再開。それから昼食を摂るにはいい時間となった頃・・・
「それじゃあフェイトちゃん、ヴィヴィオ、お昼ご飯にしようか」
「うん」
「はーい!」
なのはに昼食を摂りに行こうって提案を受けたことで、荷物整理を一度切り上げて食堂に向かうことにした。
(と、その前に指環を外しておかないと・・・)
このままでも良いかな、って思ったけど、職場でこういうのはやめておいた方がいいと思った。ちょっと名残惜しいけど。うん、次の休暇の時にでもまたはめよう。もし休暇が重なったら、ルシルとエリオとキャロの4人で遊びに行こう。遊園地とかショッピングとか、いろいろな行先やスケジュールを考えながら、指環に手を掛ける。
「よいしょ・・・あれ?・・・んー!・・・あれ?」
「フェイトちゃん・・・?」
私がついて来ないことに気付いたみたいで、先に部屋から出たなのはとヴィヴィオがドアの向こうから戻ってきた。
「ちょっと・・・待ってて・・・。ううん、やっぱり先に行ってて、なのは、ヴィヴィオ」
必死に指環を小指から外そうとするけど外れない。はめる時は意外とはいえ簡単にはめられたのに。
「もしかして・・・指環が外れない・・・?」
「あ・・・うん・・・」
私の小指にはめられた指環をなのはが覗き込む。なのはが「う~ん」と少し考えて、「ちょっと引っ張ってみようか」って手伝いを買って出てくれた。2人して床に座って、指環を外すために行動開始。指環に指を掛けるなのは。私は関節が外れないように小指の付け根を持つ。そして「せーのっ!」お互い引っ張り合う。正直痛いというか痛すぎる。この選択は間違いだった。その結果・・・
「「っ!?」」
ゴチッ☆
「「っ~~~~~~~!!」」
突然なのはの指が指環から離れて、お互い勢い余ってひっくり返り、後頭部を床にぶつけた。なのはと2人して後頭部を押さえながら蹲って痛みに悶える。☆が見えた。ひよこが見えた。ちょっとした花畑が見えた・・・気がする・・・。
「っ!? なのはママ! フェイトママ!」
それを見ていたヴィヴィオが駆け寄ってきて、私となのはの後頭部を優しく擦ってくれた。2人で「ありがと~」ってお礼。それからしばらくヴィヴィオに擦ってもらって、ようやく痛みが治まった。
「ねぇ、フェイトちゃん、そのままはめてても良いんじゃないかな?」
「でも・・・いいのかな・・・?」
「取れないんじゃ仕方ないよ。あとでいろいろと試してみよ」
「うん・・・」
結局、指環をはめたまま昼食へと向かうことになった。でもどこかそれが嬉しかった。
†††Sideフェイト⇒なのは†††
「「・・・」」
さっきからフェイトちゃんに向けられる視線がすごい。ううん、フェイトちゃんに――というよりは、その小指に輝く指環へと向けられている。女性隊員は「綺麗」とか、「高そう」とか。そして男性隊員にはどこか陰りが見える。「まさか」とか「やっぱり」とか。少し落ち込み気味だ。
「あぅ~~~・・・」
食堂へと入ろうとしたところで、前の方からシャルちゃんが項垂れながらフラフラ歩いて来た。その格好は黒を基調とした、ヘッドドレスまで付いた本格的なメイド服だ。髪型はストレートからポニーテールになっている。
「もうそろそろその格好にも慣れた、シャルちゃん?」
「あ、なのは・・・お嬢様、フェイトお嬢様、ヴィヴィオお嬢様」
顔を上げたシャルちゃんはやっぱり顔がうっすら赤い。
「むぅ~、慣れるわけないよ、なのは。じゃなくてなのはお嬢様・・・(泣)」
軽く涙目ながら言い直すシャルちゃん。フェイトちゃんはそんなシャルちゃんを見て苦笑いするだけだ。私も苦笑を浮かべるしか出来なかった。
「シャルさん、すごくかわいいです!」
「・・・ありがとう、ヴィヴィオ。ヴィヴィオも着てみる?」
「ううん♪」
それはもう満面の笑顔で首を横に振りながらの拒否だった。
「フッ・・・(泣)」
さて、どうしてシャルちゃんがメイドをやっているのかと言うと、それは先日のアースラで起きた惨劇が原因だ。“酔いの鬼神事件”。それの犯人であるシャルちゃんへの罰ゲームがメイド服での雑用係だ。期間は2週間(仮)になっている。期間内にまた馬鹿をすれば、延長みたい。
女性隊員にはお嬢様って名前の後に付けるようにして、そして男性隊員にはご主人様って言うようにされた。ちなみに口調もメイドのようにと決められている(あまり守ってないけど)。それはやりすぎじゃ・・・と思ったけど・・・
――やるなら徹底的に、だ。今後、あんな馬鹿な真似をしないように肝に銘じさせておく――
今は六課に居ないルシル君がそう判断して今のようになった。そんなシャルちゃんを連れだって一緒に食堂に入る。食堂に居た男性隊員の視線が一斉にこちらに――シャルちゃんへと向くと、「今日も可愛いっす」だとか、もっとストレートに「好きです」とか聞こえてくる。シャルちゃんはもう開き直ったかのように歩く。私たちもそれに続いて、日替わりの昼食を受け取って、空いているテーブルへと向かう。
「あ、なのはさん達も今からですか?」
イスに座って食べ始めようとしたところで、スバル達がトレイを持って隣のテーブルに着いた。軽く挨拶を交わして昼食を食べ始める。
「ん? ねぇ、フェイト・・・お嬢様。左手の指環って、確かあのルシルから貰ったやつだよね」
ルシル君をあの野郎って・・・。そんな格好をさせられてしまうような事を仕出かしたシャルちゃんも悪いと思うんだけど。
「え? うん・・・はめたら取れなくなって・・・」
フェイトちゃんが少し照れながら、左手の小指に嵌められた指環を見せる。
「フェイトちゃん、それってルシル君に貰った指環か?」
「あ、はやて」
「ヴィータちゃん達も」
そこにはやてちゃんを筆頭とした八神家も合流。軽く挨拶を交わして、はやてちゃん達も隣のテーブルに着く。
「ごめん、はやて。取ろうとしたんだけど・・・」
「ええよええよ。って、取ろうとした・・・?」
「なんだテスタロッサ、その指環が取れないのか?」
「え~と・・・・うん」
フェイトちゃんが困ったように頷いた。
†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††
私たちの会話がフォワードにも聞こえたらしくて、興味深々でフェイトの指環を見る。あの指環はルシルが創造した概念兵装の一種だ。指環のデザインに、というよりはその神秘に魅かれてしまっているんだろうね。だからあんなにも興味を示している。
「綺麗ですねー」
「これってルシルさんからのプレゼントなんですか?」
「どうして薬指じゃなくて小指なんですか?」
「もしかして婚約指輪とか・・・?」
「この宝石って本物・・・?」
「こ、婚約!? ち、ちちちち違うよ! これはお守りとしてくれたものであって、そ、そそそそそんなななな・・・!!!」
フォワードやリインからの質問攻め。特にティアナからの質問に、フェイトは顔を真っ赤にした。少しは落ち着こうよ、フェイト。仕方ない。ここは私が少し助け船を出すとしますか。
「えっとね、まずは左の小指に指環をはめるのは、願望成就のためなんだよ。きっとフェイト・・お嬢様には何かお願い事があるんだよ。それにさっきフェイト・・・お嬢様が言ったとおり、ピンキーリングと言って、お守りとしての意味合いを籠めて、小指にはめるってのもあるんだ」
ちょっとした豆知識を披露。ふんふん、と頷きながらみんなが聞いている。というか、いちいち名前の後に、お嬢様、を付けないといけないなんて超面倒くさいんだけど。ルシルの奴め、絶対に何かしらの手段で仕返ししてあげるんだから。
「んで、その指環はルシルがフェイト・・・お嬢様とその使い魔アルフの契約記念日に贈ったもの。みんなが期待するようなものじゃないよ。まぁおまじないとして、左の小指は恋愛のお守りとしての意味も出てくるけどね」
「「恋愛ですか!」」
「フェイトさんとルシルさん・・・」
「お似合いだと思います!」
ふぅ、豆知識終了。最後の私の、恋愛のお守り、にひどく食いついてくるフォワードの子たち。
「楽しそうなお話をしてますね! 混ぜてください!」
「わぁ♪ フェイトさん、すごく綺麗な指輪してますね~」
「恋愛とか聞こえてきたんですけど、どんな話をしてますか♪」
そしていつの間にやら来ていたシャーリー達も食らいついてきた。恋愛と聞いて、シャーリー達が立場を忘れてフェイトをもみくちゃにしている。ごめん、フェイト。最後のはちょっと余計だったかもしれない。それから私は指環をはめる指のおまじないの質問攻めを受けた。
「右の人差し指はリーダーシップがとれて、中指は恋人募集中、薬指は恋人有り、とか。左の中指は幸せチャージ、薬指は男除けだとか・・・かな」
だからその他にもいろいろ教えた。やっぱり女の子。こういうのにも興味を持ったりするんだねぇ。んで、本題になる。フェイトの指環をどうやって外すか、というものだ。そのままでいいんじゃない?というのも出てきたけど、サイズが合わないのなら血流が止まるかもしれないって心配事もあるわけで・・・。実際にサイズが合ってないから外れないわけだし。下手したら指をちょっきんする羽目になるかもしれない。さすがにそれは黙って見ているわけにはいかない。
「えっと、今に時刻は・・・っと」
時計を確認すれば昼休みが終わるまであと28分となっている。ルシルが居ればいいんだけど、生憎と今は別世界での契約執行中。レヴィヤタンと紋様を破壊したら、狙ったかのように契約が発生したからだ。“界律”干渉の紋様というのは本当だったということだ。ルシルにだって、みんなと楽しい時間を過ごさせてあげたいのに・・・。
†††Sideシャルロッテ⇒フェイト†††
「やっぱり王道で、滑りやすくしてから、というのが良いんじゃないでしょうか」
スバルが手を挙げて案を出す。
「滑りやすく・・・と」
シャルがどこから出したのかホワイトボードにスバルの意見を書いていく。
「というか、それしかないと思います」
ティアナが挙手してスバルの案に賛同して、私も含めたみんなが頷くことで賛成の意を示した。それ以外の方法と言えば、壊すということしか選択肢がないから。早速、私の前に石鹸水や食用油とかのヌルヌルしたものが集められた。まずは石鹸水に左手を入れて、少しの間待つ。少し時間がもったいないな、とか思っていると・・・
「そうだ。ねぇ、みんなは何か大事なものとかある? もちろん家族とかは当然だからそれ以外。何でもいいよ。なんとなくだけどこれが大事。とかでも」
ホワイトボードに可愛らしいデフォルメされた犬(かなり可愛い)を描きながら、シャルが訊き始める
「んじゃ、スバルとギンガは?」
「「え?」」
いきなり話を振られたから、少し考える素振りを見せる。そしてシャルには、「お嬢様が付いてねぇぞ~」ヴィータからの注意が入った。だから「うぅ・・・、スバルお嬢様、ギンガお嬢様・・・」そう言い直した。
「「これです」」
スバルとギンガが同時に出したのは“リボルバーナックル”。それは2人のお母さんが遺してくれたもの。うん、確かに大事なものだ。
「ん、なるほど」
シャルは満足そうに頷いて、ホワイトボードの犬の隣に“リボルバーナックル”と書いていく。
「フェイトお嬢様、もうそろそろじゃない」
「うん。んっ・・・!」
みんなが見守る中(随分と大事になっちゃったなぁ)、小指にはまった指環を引っ張る。痛い。まだ抜けそうにない。
「フェイトちゃん、次はこれ」
なのはが私の前に用意したのはオリーブオイル。少し勿体ない。普通の油とかでいいと思うんだけど・・・。でも折角用意してもらったのだから、黙って手を浸ける。
「そんじゃティアナお嬢様、ご主人様、キャロお嬢様。3人は何かある?」
そう訊かれたエリオとキャロとティアナが考え始める。まずエリオとキャロは「アルバムです」と答えた。自分たちの成長の記録、楽しい時間がたくさん納められたアルバムだった。そしてティアナは、シャルの隣まで近寄って耳打ち。シャルはティアナに何を言われたのか知らないけど、一度頷いてティアナに微笑みかけた。
「あー、ティアずるーい! シャルさんに何て言ったの!?」
「う、うるさい! 何でもいいでしょ!」
少し赤面したティアナにしつこく訊きまくるスバル。
『ねぇ、シャルちゃん。もしよかったらティアナ、何て言ったのか教えてもらえる?』
なのはからの念話。たぶん、シグナム達を含めた隊長陣全員に繋がっている。シャルは少し考えた後・・・
『ごめん、ティアナ。・・・ティアナはね、今の“時間”を大事に思ってるの。腐れ縁なスバルや、可愛い弟分・妹分なエリオやキャロ。そして私たちのいる機動六課。その“時間”がティアナにとっての大事なもの』
ティアナが赤面するのも解る答えだった。それからいろいろと試したんだけど結局、外れることはなかった。その間、他のメンバーの大事なものを聞いたりして、お昼休みは終了。指環外しの続きはまたあとで、ということになった。そして荷物整理を再開するために部屋へと戻る途中・・・
「あ、ルシルパパだ!」
寮へと続く道の途中、こちらに歩いて来るルシルの姿を見つけた。ヴィヴィオがルシルに一番早く気付いて、「ルシルパパー♪」って名前を呼びながら駆けて行って、「おかえり~♪」飛びついた。
「ただいま、ヴィヴィオ。ん? フェイトとなのはも、ただいま」
「おかえり、ルシル君」
「うん。おかえり、ルシル」
ヴィヴィオを抱き上げたルシル。そんなルシルと挨拶を交わして、寮へ帰る道すがらなのはがさっきまでの話をルシルにした。するとルシルは何か呆れたような、でもどこか嬉しそうな笑みを浮かべた。
「そうか。・・・よし。フェイト、少し見せてみろ」
私は頷いて、左手をルシルに差し出す。ルシルは抱っこしていたヴィヴィオを下ろして、「あ・・・!」そっと私の左手を挟むようにして両手を重ねてきた。いきなりの事で驚いたけど、その大きな手に覆われた私の左手から伝わってくる熱にドキドキする。なんとなくなのはを見たら、なのははニヤニヤしながら私とルシルを見てた。
「「「っ!?」」」
いきなりの蒼い光。
「さあ、これでもう大丈夫だ」
私の左手が解放される。もう少しああしていたかったかも。
「フェイト、指環が取れるか見てくれ」
「あ、うん。・・・え? 簡単に取れた・・・!」
「ホントだ。ルシル君、今何したの・・・?」
「ん? 指環は私の魔力と、まぁ他にもちょっとした材料で創ったものだから、私の魔力を通せばサイズ変更くらいは出来る」
「「へぇ~」」
昔から解っていたことで、ルシルは何でもありということだった。うん、だからもう何があっても驚かないよ。
「おーい、フェイトーーーー!」
隊舎から私を呼びながらシャルが駆け寄ってきて・・・
「いけないなぁ、シャル。お嬢様が抜けているぞ?」
「ル、ルシル・・・!」
ルシルを見た瞬間、警戒心丸出しになった。
「おいおい、男性に対してはご主人様、と言うのが決まりだったはずだが・・・?」
「むぅぅぅ・・・・ご・・・人さ・・・」
「聞こえない」
まずいよ、ルシル。
「ごしゅ・・・ま」
「散々酔っぱらって迷惑をかけて、その罰がこの程度で済んだ事、感謝してほしいな」
ブチブチッ
「ご主人様・・・お、おかえりなさいませ・・・」
「・・・フッ」
プッツン
あ、キレた。
「今鼻で笑ったなぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「うおおおおおお・・・!?」
ルシルが襲われ始めた。
「もうやってられるかーーーーーーッ!!」
「まずい、本格的にキレた。逃げろっ、フェイト、なのは、ヴィヴィオ!」
ヘッドドレスを地面に叩きつけて、うがぁーっって吼えるシャルから一斉に逃げ出す。今のシャルに巻き込まれたら、またアフロとか、下手したらもっと酷い目に遭うかもしれない。
「我が手に携えしは確かなる幻想ぉぉぉぉぉ!!」
「おっと、そうはさせないぞ! 我が手に携えしは確かなる幻想!」
それからルシルとシャルの強制コスプレ合戦が繰り広げられた。それは壮絶とも言える戦いで、観戦者が次々と増えていく。そして・・・
――シャルロッテ・フライハイト、メイド服での雑用期間をさらに1週間延長。
ルシリオン・セインテスト・フライハイト、2週間の執事服での雑用を命ず――
はやてから2人に対しての罰が言い渡された。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「・・・・・・・・・(泣)」
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