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戦国異伝

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第百五十三話 雲霞の如くその十一

「何じゃ、織田家は強いぞ」
「我等より遥かに強いぞ」
「我等の武器ではとても適わぬぞ」
 その鉄砲や弓矢を見ての言葉だ。
「あれでは近付くことも出来ぬ」
「今攻めておる黒い服の者達も攻めきれておらん」
「あの者達、見たことはないが大層動きがよいが」
「それでもな」
 勝てぬというのだ、彼等から見ても。
 それでだ、彼等を率いる僧侶達も言うのだった。
「ここはな」
「うむ、そうじゃな」
「勝てぬ相手じゃ」
「蓮如様も言っておられるし」
「それではな」
 こう話してだ、そしてだった。
 彼等は百姓達に穏やかな声でこう語った。
「よいか、命は粗末にするな」
「無駄に死ぬことはないぞ」
「蓮如様の御教えは守るのじゃ」
「死ぬでない」
 こう言ってだ、そのうえで。
 彼等は門徒達に前に行かせなかった、しかも。
 織田軍から武器を捨て村に帰れば不問にするという言葉を聞いた、これでさらにだった。
「確かに命を無駄にすることもない」
「ここは逃げるべきか」
「うむ、それもよいな」
「頃合を見てな」
 彼等はこう言ってそしてだった、そのうえで。
 彼等はさらに動かなくなった、門徒の主力はそうするのだった。
 しかし闇の服の者達は違う、彼等はというと。
 まだ攻め続ける、それでなのだった。
 織田軍も守りつつ攻める、その戦ぶりを見てだった。
 信長は難しい顔でだ、こう家臣達に言うのだった。
「あの者達は十万程じゃな」
「ですな、他の門徒達が十二万で」
「それ位ですな」
「うむ、それ位じゃ」 
「どうも数では有利ですが」
「それでもですな」
「油断してはならん」
 このことは絶対にというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「我等はこのまま」
「敵が退くまでこのままじゃ」
 守りに徹せよというのだ、攻撃は仕掛けるが。
「よいな」
「ではこのまま」
「今は」
「まずはこの一戦じゃ」
 越前の戦はというのだ。
「ここで勝てばかなり進める」
「一乗谷の辺りまでは」
「そこまではですな」
「うむ、行ける」
 金ヶ崎から一乗谷まで一直線だ、それでだというのだ。
「だからじゃ」
「ですな、では」
「ここで勝ち一乗谷まで」
「進むぞ」
 こう言ってだった、信長は今は耐えつつ戦うのだった。
 織田家は戦い続けそうしてだった。
 夕刻になるとだ、遂にだ。
 敵の数は半分を切った、それでも彼等はまだ攻めて来るが。
 信長は全軍にだ、こう命じた。 
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