久遠の神話
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第八十六話 運という実力その十
「いや、社長凄いな」
「全然平気だな」
「国会議員に当選されたのにな」
「全然変わらないな」
「今までとな」
「まるで何もなかったみたいだな」
そこまで普通だというのだ。
「それかえって凄いな」
「大物だよな」
「流石俺達の社長だよな」
「浮かれることなく冷静にか」
「あの人ならこれからもやっていけるな」
「そうだよな」
こう言って彼に頼もしいものさえ感じていた、社員達の間では一層人望が深まった。
しかしその話についてもだ、権藤は淡々とさえしていた。それで社に彼が戦いから降りたことについて聞きに来た中田にもこう言うのだった。
「有り難いことだがだ」
「あまり嬉しくなさそうだな」
「社員から人望がなくては企業は上手くいかない」
これは正論だ、トップに人望がなければ企業はどうしようもない。
それでだ、こう言うのだ。
「まとまらないからな」
「だよな、あんたいい社長みたいだな」
「給与と勤務時間、福利厚生も考えている」
「正社員優先だよな」
「その方が社員も働いてくれる」
待遇の問題も考慮して採用しているというのだ。
「少なくとも後ろ指を差される様な経営はしていない」
「ブラックじゃないんだな」
「ブラック企業か」
「あんたそういう経営はしないんだな」
「ブラック企業は目先の暴利を貪るだけのものだ」
そうしたものに過ぎないというのだ、ブラック企業は。
「無理をすればそれが必ず返って来る」
「それで元も子もなくなるよな」
「人は見ている」
そして世間もだ。
「必ずそれが己の首を絞めることになる」
「社員のことも考えていないとな」
「組織は人で動くものだ」
企業もまた然りだというのだ、組織であるから。
「だからだ」
「ブラックよりもホワイトか」
「企業の経営は人を考えて綺麗にしておかないとな」
「後で返って来るよな」
「私はそう考えている、出来るだけ汚いことはしないことだ」
どうしてもという場合以外はというのだ。
「それが結果としていい」
「それであんた社員さん達からも人気があるんだな」
「そうだろうな」
「いい社長さんなんだな」
「少なくとも普通の経営を心掛けている」
そうだというのだ。
「人望があることはそこから来るのだろう」
「しかもカリスマもあるよな」
中田はこのことは自分から言った。
「あんたはな」
「そうか」
「ああ、あるよ」
それもだというのだ。
「それもな」
「それは私も自覚しているが」
「いいことだよ、やっぱりトップにはカリスマが必要だな」
「人はそれに惹かれるからな」
「そうだ、トップに必要だ」
「割り切ってるね、しかし本当にあんた動じないな」
「誰かに好かれていて人望もあることにか」
権藤は自分から話した。
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