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フェアリーテイルの終わり方

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八幕 Sister Paranoia
  7幕

 
前書き
 キ モ チ ワ ル イ 

 
 船内に潜入してからアルクノア兵を撃破しつつ、ついに一行は中央ホール前に着いた。

 銃を使えるアルヴィンとルドガーを先陣に、ドア前で左右に分かれて展開する。

「――行くぞ」

 全員が、硬く肯いた。
 ルドガーとアルヴィンが銃を構えながらホールに飛び込んだ。
 フェイたちは銃で警戒態勢の二人の後ろに続いた。

「近付いてはいけません!」

 はっとする。フェイは誰の声を聞き間違えても、この声だけは間違えない。

「おばちゃん!」

 雛壇の最前列で、紅い男に頭を押さえつけられているのは、マルシアだった。

「まさか……フェイリオ!? だめよ、来ないで!」
「――余計な発言はお控えを」

 紅い男がマルシアのうなじに手刀を落とした。マルシアが動かなくなる。

「リドウさん……? 何であなたが!」
「マクスウェルの召喚を手伝ってやろうっていうのに、そんな顔するなよ」

 リドウは雛壇を降りると、拘束された男の顔面に蹴りを入れて、背中を向けた。突如として現れた紅の歯車がリドウの姿を変質させる。

(ルドガーやメガネのおじさんと同じ――骸殻!)

 次の瞬間には、リドウはフェイたちの輪の中に潜り込んでいた。
 フェイは心臓が絞られる心地で、エルとルルを抱えて隅に転がった。

 その間にもルドガーたちはリドウに応戦する。

「何で? 4対1なのにっ」
「ナァ~!」

 体の下に庇ったエルが悲鳴じみた声を上げた。

 リドウはただ一人でルドガー、ミラ、ジュード、アルヴィンの全員を翻弄している。
 強い。シロウトのフェイにもぞっとするほどよく分かった。

「どうしよう…っフェイ、何とかできない?」
「……やってみる」

 フェイはエルとルルをホールの隅に立たせ、自分は前に出て、戦いの場にできるだけ近寄った。

 目を凝らす。乱戦になっていてリドウだけ別に捉えるのは難しい。それでも、フェイ・メア・オベローンは〈妖精〉を冠する少女だ。彼女にとっての精霊術は呼吸やまばたきに等しい。

 リドウに傷を与え、ルドガーたちにはパワーアップしてほしい。そういうイメージを頭で組み立てる。そうなれと頭で強く念じる。
 戦いに精霊術を使うのは初めてだが、失敗しないだけの自信はあった。

「――パーティクルロンド」

 乱闘でありながら均衡を保っていた戦いが破られる。
 何度攻撃を仕掛けても当たらなかったルドガーたちの武器捌きのスピードが唐突に上がり、リドウに傷をつけたのだ。

 リドウは不利を悟ってか、忌々しげにルドガーたちから距離を離した。

「今の…」
「フェイ……あなたっ」

 パーティクルロンドは本来、術者自身を光速化させる算譜法(ジンテクス)だが、フェイはこれをルドガーらに作用させて、彼らのスピードを上げたのだ。

「やっぱ気持ち悪いよね。黒匣(ジン)なしでここまで算譜法を自在に操るなんてさ」
「え」

 キモチワルイ。

 〈温室〉にいた頃は言われ慣れていたコトバなのに、何故か今、それはその時以上の威力を持っていて、フェイの思考を停めた。

「フェイ、避けろ!」

 ルドガーが叫んだ意味を理解する間も与えられず。
 フェイの背中に大きな何かが着弾した。 
 

 
後書き
 ルドガーたちに優しくされた分だけ、自分への悪評耐性が落ちてしまったオリ主でした。果たしてこうなったのは幸か不幸か。情けは人のためならずとは言いますが、ルドガーたちのオリ主への善意は巡ってオリ主に隙を作ってしまいました。 
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