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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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記憶なき者②

 
前書き
少年は取り戻せるのか、自らの記憶を、約束を・・・。

ではどうぞ!! 

 
あれから二週間が過ぎた。
あれから毎晩のようにあの夢を見るようになり、目覚めると朝になっている。
こんな日々が続くと、気になって流石に寝不足になりそうである。
そんな風に悶々と過ごしていると、部屋の扉から一人入ってきた。

「こんにちは」

入ってきたのは黒髪の少年立った。女の子のような顔が印象的で体も男にしては細かった。

「あの、どちら様ですか?」

「桐ヶ谷 和人。キリトって言えば分かるか?」

俺は首を横に振った。

「そうか、やっぱり記憶喪失って話は本当だったんだな・・・」

「・・・誰からその話を?」

「ちょっと知り合いにな、それより・・・」

「あなたは、何者なんですか?」

「強いて言うなら・・・、お前の過去を知っている人間だ、この二年間のな」

「えっ・・・」

彼が俺の過去を知っている、だと・・・。しかも、この二年間の記憶を・・・。

「どうして、それを・・・」

「お前のお袋さんに頼まれたんだよ」

「母さんに?」

和人は頷いた。

「『息子の記憶を取り戻してくれ』って、正直最初は驚いたよ」

「でも、あなたは来た。俺の記憶を取り戻すために・・・」

「あぁ、俺がお前の空白の二年間を埋めてやる!」

「・・・はい、お願いします!桐ヶ谷さん」

「和人でいいよ、それに俺は君より一つ年下だし・・・」

「そう、なのか?」

こうして俺は和人から過去の俺を知ることとなる───。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

話が終わった時にはもう夕方になっていた。

「これが、俺の知るこの二年間のお前の姿だ」

「俺が、攻略組?白の剣士?そんなバカな・・・」

「・・・大丈夫か?」

「・・・悪い、今日は帰ってくれないか?」

「・・・分かった、また来るよ」

そう言って和人は立ち上がった。帰り際に彼はこう言った。

『焦るなよ』と───。

雪羅はしばらく外の景色を眺めていた。和人の話を整理しながら───。

『攻略組・・・。彼の話は本当なのだろうか・・・』

「はぁ・・・」

季節は冬、年が明けてまだ、間もない。冬の冷たい風が吹き、外を出歩く人は殆んどいない。サラリーマンが急いで家に向かう姿が見てとれる。入院するまではそんな姿気にもとめなかった。しかし、今になって分かる。彼らもまた闘っているのだと。社会と、現実と───。
そして今の自分を含めて、世の中の人々も場所や種類は違えど、闘っているのだと───。そんな風に考えるようになったのは入院してからいつの頃だったか。

雪羅は黙って車椅子に乗り、ある病室へと向かった。
雪宮 雫の病室である。
中に入ると、そこには変わらない寝顔があった。表情一つ変えず、ナーヴギアを被った少女が。
雪羅は少女の顔をじっと見つめた。

「君は、記憶を亡くした者の気持ちって分かるか?」

その答えは当然のように返ってこない。しかし、雪羅は続けた。

「俺、この二年間の記憶が無くてさ、はじめは何ともなかったんだけどこの間になって急に気になりだしたんだ。おかしな話だよな、眠ってたのに・・・。でも・・・」

雪羅は雫の手に自分の手を添えた。その手は温かく、柔らかかった。

「俺は、知りたい。たとえどんな悲惨な過去だったとしても、俺は知らなきゃいけない気がするんだ。だから・・・もし、記憶が戻ったその時は君に聞かせてあげるよ・・・」

雪羅は眠っている雫と小指を絡めた。

「約束だ。だから早く目覚めてくれ・・・」

すると、雪羅の頬に涙が流れた。

「あれ?おかしいな、何で・・・何で・・・」

雪羅は涙を拭う、しかし涙は止まることなく流れ続ける。

「どうして、こんな・・・こんなことになるんだよ・・・」

雪羅はベッドに顔を埋めた。そして雪羅は声を荒げた。

「何でだよ、何でだよ!教えてくれよ、お前はどうして目を覚まさない?答えろよ、答えてくれよ!!」

しかし、答えは返ってこない。その叫びはただ虚しく部屋の中に響く。

「頼む、目を、開けてくれ・・・」

そして雪羅はある名前(・・・・)を叫んだ。

「エリー!!!」

その名前を叫んだ直後、雪羅の叫びは止まった。

「えっ・・・?」

雪羅自身、何故その名前を叫んだのか分からなかった。
自分が知る限り、そんな名前をした人には会ったことがないはず。なのにふとその名前が頭をよぎった。

「エリー・・・どうして、俺は・・・」

すると今度は激しい頭痛が雪羅を襲う。

「グッ!ぁああああ!!!」

頭の中に映像のようなものが流れてくる。夕陽、小さな丘、森、そして小さなログハウス。そこで暮らす五人の男女。
今度は顔がハッキリと見える。

『今回は、違う・・・?』

そこには、雪羅に似た少年がいた。

『アイツは・・・俺なのか?』

映像が切り替わると、そこには部屋で一人泣く少年が・・・。

『どうして、泣いているんだ・・・』

少年は一つのキューブのようなものを出現させるとその角を押した。すると女の子の声が聞こえた。

『ヤッホー、シオン。これを聞いてるってことは、私はもう死んじゃったわけなんだけども、シオンが寂しくないように、早まって自殺しないようにこれを送ります。』

その声はどこか明るく、そして暖かい声だった。

『まず先に言っとくことは、今までありがとうね。シオンがいなけりゃ私、もっと前に死んでたかも。最初、このゲームが始まった時、すっごく落ち込んでたんだ。でも、シオンたちと出会ってまた頑張ろうって思えるようになった。だからシオンにはこれからも頑張って欲しいの、このゲームをクリアして欲しいの。そして、もう一つお願い。もし、エリーがまだ生きてたら・・・その時は、エリーを守ってあげてね♪それじゃあねシオン、会えてよかった。ありがとう・・・』

彼女はシオンという名前を続けていた。そして、最後に───。

『シオン・・・大好き!愛してます!』

それを最後にメッセージが終了した。聞き終えたシオンという少年の頬には涙が伝っていた。
雪羅はその映像をなぜか懐かしいと思っていた。
すると誰かに背中を押された気がした。振り返ってみると、そこには先ほど映っていた少年少女三人がいた。
一人は長身で筋肉質な男、もう一人は眼鏡をかけた少年。最後に黒髪ショートヘアーの美少女だった。

長身の男は、

『シオン、お前は前に進め!ここで、止まってたらエリーシャは救えねーぞ!!』

眼鏡の少年は、

『君は止まるより、走っていた方がお似合いです!エリーシャのこと頼みましたよ!!』

そして黒髪の少女は、

『シオン、こんなとこで立ち止まってるなんて君らしくないよ!さっさとエリーシャ、救ってきなよ!!』

黒髪の少女は雪羅になにかを手渡した。それは中に写真が入っているペンダントだった。写真には五人の少年少女の笑顔があった。そして蓋の裏にはこう書かれていた。

《 Giuro amicizia per sempre 》

この文字を見て雪羅は頭の奥にある何か(・・)が弾けた。

「ッ!」

雪羅はゆっくりと右手を顔に置いた。

『俺は・・・』

その直後、雪羅は目を覚ました。あの頭痛はいつの間にか収まっていた。

「・・・・・」

雪羅は雫の手を黙って握った。
その感触を確かめるかのように・・・。
 
 

 
後書き
遅れました。申し訳ありません。
人類はインフルエンザに勝てないのでしょうか・・・。
コメントお待ちしております!!
ではでは~( ゜∀゜)ノシ
 
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