戦国異伝
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第百五十三話 雲霞の如くその五
「都ですれ違った時は背筋が凍ったわ」
「凄まじい気でしたな、確かに」
「あの気は」
「まさに龍じゃ」
そう呼ぶに相応しかった、謙信とすれ違った時に感じたものは。
「龍が来ればな」
「一乗谷では」
「とても防げぬ」
このことも考えてのことだった。
「だからじゃな」
「はい、これからは一乗谷ではなく」
「城を築くか」
あらたに、というのだ。
「その北ノ庄にな」
「さすれば」
「見てもみる」
その北ノ庄の場もだ、信長のその目でだというのだ。
「城を築くからにはどういった場所をな」
「殿ご自身で、ですな」
「そうもしてみる、越前に確かな城を築ければ」
どうなるか、信長は詳しく話していく。
「そこを拠点として北陸を治められる」
「一乗谷以上に」
「それにじゃ」
見ているものは政だけではなかった、さらにだった。
「上杉謙信が来ても抑えられるからな」
「上杉と城の外で戦うとなると」
どうかということはだ、林が話した。
「勝つことは」
「無理じゃな」
「はい、それこそ三倍の兵でも」
「確かに、それがしでも」
柴田も言うのだった、織田家随一の攻め上手の彼でもだ。
「謙信殿と正面からぶつかっては」
「御主でも勝てぬな」
「あの御仁はまさに軍神です」
柴田も都で謙信とすれ違いその気を見ている、それで言うのだ。
「外で戦って勝てるものではありません」
「うむ、上杉とは下手に戦うべきではない」
間違っても外では、というのだ。
「城に篭った方がよい」
「そして守るべきですな」
「うむ、北条家がした様にな」
北条氏康は小田原城に篭もり謙信とぶつかることを避けた、信玄にもそうしたが謙信に対してもそうしたのだ。
「囲まれても兵糧に武具はあればな」
「城を守れるからですな」
「それで」
「上杉が攻めてきても最悪食い止める為に」
まさにその為にとうのだ。
「城は必要じゃ」
「では」
「まずは越前と加賀を収め」
そうしてだというのだ。
「越前にも城を築くとしよう」
「無論近江の城もこのままですな」
丹羽がここで信長に言う、その城の普請の奉行である彼がだ。
「安土の」
「うむ、無論じゃ」
「では」
「安土の城は天下を治め都を守りじゃ」
そしてだというのだ。
「上杉だけでなく武田にもじゃ」
「備えられる城ですな」
「そうした城なのですな」
「そうじゃ、だからじゃ」
それ故にというのだ。
「このまま築くぞ」
「では」
こう話してだ、そしてだった。
信長は城の話もしてそのうえでだった、まずは金ヶ崎からだった。
織田軍は反撃に出た、まずは城の傍まで来ていて長政が夜襲で退けた者達だった、その者達に対してだった。
織田軍は攻めた、その数はというと。
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