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八条学園怪異譚

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第五十五話 百鬼夜行その十六

 聖花はその中で愛実に尋ねたのだった。
「あの、ちょっといい?」
「どうしたの?」
「見たの?」
 愛実にこう尋ねたのだった。
「私のスカートの中」
「そのこと?」
「ええ、見てないわよね」
「見られて恥ずかしい?」
「そう言われると。同じ女の子だし」
 それにだというのだ、愛実は聖花に答えて言う。
「愛実ちゃんだから」
「別に恥ずかしくないでしょ」
「それはね。けれどね」
「見たかどうかなのね」
「見たの?それで」
 尋ねるのはそのこと自体についてだった。
「今日はあまり。いい下着じゃなかったから」
「そうだったの」
「そうだったのって。見てないのね」
 聖花は愛実の今の言葉でわかった。
「スカートの中は」
「それどころじゃなかったからね」
 空井戸を降りるだけでだというのだ。
「危ないから」
「それでなのね」
「そう、聖花ちゃんだって若し私が上にいてもね」
 その場合でもというのだ。
「みる余裕ないでしょ」
「上を見ていてもね」
 聖花自身こう愛実に返す。
「そんな余裕はないわ」
「そうでしょ。だからね」
「愛実ちゃん見てなかったのね」
「そう、とてもね」
「そうなのね。じゃあいいわ」
「ええ、それでだけれど」
 その話をしてからだった、愛実は聖花に言った。
「今からね」
「上に上がってね」
「そうしよう、ここにいても仕方ないから」
「そうね、それじゃあね」
 聖花も愛実のその言葉に頷く。そうしてだった。
 二人で上がる、そして空井戸から出ると。
 妖怪達も幽霊達も待っていた、茉莉也が空井戸から出て来た二人に言って来た。
「お帰り、じゃあね」
「今回も違いましたけれど」
「そのことは」
「次ってことでね」
 特に気に止めないというのだ。
「それでいいでしょ」
「それで終わりですか」
「今回のことも」
「そう、じゃあね」
「今からですね」
「お酒ですね」
「そう、飲みましょう」
 茉莉也は早速その手に大杯、赤いそれを出して二人に言って来た。
「今日もこれで飲むわよ」
「無事に戻って来て何よりだ」
 一つ目入道はその一つ目をにこりとさせて二人に声をかけてきた。その目は善良な人間のものと同じく優しい。
 その優しい目で二人を見つつだ、こう言うのだった。
「ではこれからどうする」
「ううん。今日は学園の皆もいるし」
「よく見たら」
 ふとだ、妖怪達の中を見れば。
 やたら大きな鼠がいる、その毛は黒くしかも硬い。二人はその鼠を見て何かすぐにわかった。 
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