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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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五章
  堺×教会

「おい姉ちゃん、そこで止まれ!何者や!」

「尾張国長田庄住人、長田三郎。堺見物に参った」

「田舎の小名が堺見物か。この乱世に、お気楽なご身分やのぉ」

「部屋住みの気楽さだ。姉が当主をやっている故、気楽なもんさ」

「二女か。ええのぉ。・・・・で、何日おるんや?」

「五日程度を予定している」

「宿は?」

「信濃屋だ」

「三家か。まあ尾張もんなら当然やな。ええやろ、通したろ。ただしや、姉さん。堺では二本差しの喧嘩は御法度や。その辺りは充分気ぃつけや?」

三家・・・・尾張を本拠地に置く尾張出身の商人の事。代表的な商人が三人居た。

二本差し・・・・武士の蔑称・隠語

「承知している。しかし忠告、感謝する」

「おう、素直でええ姉さんや。何かあったら、この矢吉が面倒みるさかい、気軽に言うてきぃ」

「ふふっ、申し出は嬉しいが、世話にはならんさ」

「おう。そう頼むわ。・・・・おーい、開門や」

「へーい!」

「ご一同、堺へようおこしー」

と入場したが、堺は凄く賑わっていた。ちなみにトレミーは俺の真上にいる。高度五千mだから気付かないと思うけど。堺に入り大通りを歩いていたが、通りの両端には比較的大きな商店が数多く並び、人足や町娘、商人達がごった返していた。

「反物や材木、鎧刀に鉄砲。食料も豊富で、ホント、何でもござれですね、この町は」

「ああ!あの髪飾り可愛い!あんな意匠の、清州では見た事ない!」

「あ、ホントだ。でもちょっと高い。・・・・あ!あっちのも可愛くない?」

「うわー!すっごく可愛い!欲しいなぁ・・・・」

「うーん、これは一日でお金が無くなっちゃいそうね」

「隊長、よろしいのでしょうか。あんなにはしゃいで」

「いいのいいの。どんな理由があったとしても武士同士の争いは御法度だ。堺に入ってしまえば、比較的安全と言われる町だ」

「この町で喧嘩をすれば、会合衆を敵に回しますから。会合衆が物を売らない、と決定すれば、小名ならばすぐに干上がってしまうでしょう。会合衆の力・・・・というよりも銭の力を怖がって、皆、堺では規則を守って大人しいのですよ」

という事らしいので、沙紀も納得した。まあ、あれ位が丁度いいかもなと思ってしまうけど。久遠に聞くと、先に店々を回ってから湊に行きたいそうだ。

「堺津は西国海運の中心。それに大陸や南蛮貿易によって、昨今は特に繁栄していると聞きます。狙いは一真様の言うとおり南蛮ですか」

「うむ。さっき一真が言ってたように南蛮商人と繋がりを持ち、鉄砲の調達量を増やしたい。それに玉薬は国内では安定供給ができんからな。だが残念ながら南蛮人に知り合いはおらん。一真、何とかならんか?」

早速沙紀の出番ではあるがが、生憎俺も知り合いはいない。となれば、南蛮=外国人だから宣教師も来ているはず。そのツテで案内されるはずだ。

「南蛮人が来てるとなると宣教師も来ているはずだ」

「宣教師というと、天守教の宣教師ですか?」

「それそれ、その人に聞いて紹介してもらえば、後は沙紀の出番だ。久遠の言葉を通訳してもらえるからな」

「ふむ。確かに堺には天守教の宣教師が寺院を構えていると聞いた事ありますね」

「ならば、そこで南蛮商人を紹介してもらうか」

それでいこうと言って、ひよところを呼び戻して向かった。一応スマホには、この堺全体のマップで見ている。この情報はトレミーからだけど。俺の真上にいるという事は、この堺の町の真上にいるからな。俺を先頭に久遠達がついて行くが、俺はマップを見ながら進んでいるので、人に聞かなくて大丈夫か?と聞かれたが、代わりに沙紀が答えてくれた。一応この外史に来た後、大気圏突入前に衛星を飛ばしておいたから、今現在GPSとトレミーの情報の地図情報で進んでいる。

「どうやらここらしいぞ」

立派ではないからといって見窄らしくもない、特徴と言えば、門の上に小さな十字の装飾が飾られていた建物。まあ知らない人が見ても、ここは教会だとは思わないだろうな。

「何か俺がいた世界にあった教会よりも、普通な建物だな」

「そうなんですか。天守教はまだまだ信徒が少ないですからね。それに目立てば寺からの報復があるそうなので、このような質素な佇まいなのでしょう」

報復、ねえ。確か山から下りてきた僧兵が邪教と連呼しながら教会を叩き潰すんだっけ?この辺りの僧兵って石山だったか。

石山・・・・ここでは石山本願寺を指す。金・人・物と三拍子が揃い、大勢力を誇っていた寺社である。

坊主が圧力をかけて喧嘩を吹っ掛けたら、さすがの会合衆でも坊主には勝てないだろうな。

「銭は力を持ってますが、それ以上に力を持つのは、死への恐怖、という事でしょうか」

「皆、死ぬのは怖いですから。死んだ後だからこそ幸せになりたいんですよ」

「現実は辛いことも多いもんね・・・・」

まあ確かに、神仏が支えになるっていうし。友人、恋人、仕事が自分なりに支えになってくれなけらば、人は倒れる。

「それ以上に、縄張り争いという側面もあるでしょう。・・・・昨今の仏門というのは得てして生臭いものですから」

「それはそれで嘆かわしいですねぇ・・・・」

まあ俺も神なんだけどね。皆はそれぞれの気持ちを持ちながら、小さな教会に入った。小振りなステンドグラスから光が差し込み、大きいという程ではないが、十字架を背後にして照らしている。その十字架の下で、跪き、両手を組み合わせて祈りのポーズを取っている少女が居た。日光を浴びた髪はキラキラとオレンジに輝き、まるで金砂が反射しているような、荘厳であり、美しい雰囲気を見せていた。

「(ほお。あれが南蛮人という奴か。初めて見たな)」

「(久遠。俺の隊にいたぞ。稲葉山落とした時に)」

「(綺麗な人ですねぇ・・・・長い髪が黄金みたいにキラキラ光っていて。まるであの御姿をしたお頭みたいです)」

「(だけどあの人、武人ね。身のこなしが違うもの)」

「(西洋の剣を帯びていますし、宣教師の護衛武官・・・・という奴でしょうか?)」

「(まあ今は静かにしておこう。祈りの邪魔になるからな)」

で、今はとある部屋に通された。俺達が見ていたら、他の信者に連れられてきた。どうやらお祈りの邪魔をさせたくないらしい。それにしてもあの少女がデウスから聞かされた者か、いずれあの少女とは戦うかもしれんが今は俺の頭の片隅に入れておこう。お祈りが終わったのか、少女がこちらに来た。 
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