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dark of exorcist ~穢れた聖職者~

作者:マチェテ
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第9話「風の悪魔」

5人の悪魔狩りと、灰髪の男………"風の悪魔 フォカロル"との戦いが始まった………






先制を仕掛けたのは、パトリックとアリシアだった。
パトリックは長槍を脇に抱え、アリシアは左の拳を構えて駆け出した。

しかし、2人の攻撃がフォカロルに到達することはなかった。








「"風よ"」




フォカロルのこの言葉と同時に、まるでハリケーンのような暴風が吹いた。
ハリケーン並の暴風を正面から食らい、アリシアとパトリックは派手に吹っ飛ばされた。

「うおっ!?」

「きゃっ!?」



「その程度か悪魔狩り共! その程度で俺を狩るかぁ!? 馬鹿共がぁ!!」


激昂したフォカロルは、吹っ飛ばされた2人を追撃するように、暴風で地面を抉る。
抉られた地面がそのまま暴風で吹き飛び、土の塊が凶器になって飛んで来た。



「させません!!」

クリスが土の塊の前に立ちはだかった。
1m弱はある土の塊が、車のような速度で飛んでくる。



ドゴォォン!!!


大きな音を立てて、土の塊が粉々に砕け散った。


「………………………何?」

フォカロルは驚愕の表情を浮かべていた。
避けるならまだしも、崩されると予想もしていなかったからだ。

「貴様………人間ではないな」

「はい………"フォールマン"と言えば、分かりますか?」

"フォールマン"という単語を聞いた途端に、フォカロルの表情が嫌悪と憎悪で歪んだ。


「…………………何故こうも俺を不愉快にする………」


「我らの血を穢す屑が………!!」







「とっとと失せろ穢れがぁぁぁぁぁ!!!」


狂気とも呼べる怒りを剥き出し、ミサイルをも上回る威力の暴風をクリスに飛ばした。

「消えろ失せろ死ね砕けろ潰れろ崩れろ…………………穢れごときが俺の前に立つなぁぁぁぁぁ!!!!」

暴風が、轟音を響かせながらクリスに迫ってくる。





「もうやめろよぉぉぉぉぉ!!!」



ミサイル以上の威力を持った暴風は、一瞬のうちに消し飛んだ。
クリスを殺そうと迫っていた暴風は…………巨大な焔に包まれ消失した。

焼けないはずの風が、音を立てて炎上している。




「………………とうとう動いたな、べリアル」


フード付きのパーカーを来た若者の右手から、赤い焔が上がっていた。
若者のように見えても、本性は"焔の悪魔 ベリアル"だ。


「………悪いな。お前等は手出ししないでくれ。コイツと腹を割って話したい」

ベリアルは、5人の悪魔狩りに告げた。
クリス、パトリック、アリシアの3人は、ベリアルの言った通り沈黙していた。
アイリスとキリシマの2人は違った。

「………………………悪魔が俺に指図するな。…………殺すぞ」

キリシマは、日本刀をベリアルの首に向けた。
キリシマの眼は、フォカロルにも負けないほどの殺意に溢れていた。
下手な真似をすれば殺す、という意思が表れていた。

「ちょっと待って、キリシマ君。ベリアルさん、あの人と話をさせて」

アイリスがベリアルを押し退け、フォカロルの前に立つ。

「おい、待て! お前がそいつを倒すのは無理だ!」

「ううん、倒さないよ。ちょっと話したいだけだから」

そう言うと、アイリスはフォカロルの目の前まで歩み寄った。
アイリスの命知らずな行動に、クリスとアリシアはこれまでになく驚愕した。

「アイさん! 離れて下さい!!」

「アイリスちゃん!! 離れて!!」



アイリスを目の前に、フォカロルは苛立たしい表情を浮かべる。

「………なんだお前は………塵が俺の前に立つな……!」

凄まじい殺意を含んだ眼にも怯まず、アイリスは自分の言いたいことをフォカロルに伝える。


「……………………クリス君に、謝って」


「……………………………………………………は?」


アイリスの言葉に、その場にいた全員が一瞬呆けた。

「……………何を言っている?」

「クリス君のことを"穢れ"って言ったこと………謝って」


アイリスの言葉に、クリスは驚いた。

「アイさん?」


しかし、フォカロルはアイリスの言葉を笑った。

「ふん、そこの屑は我らを侮辱する穢れだ。穢れに穢れと言って何が悪い?」


「クリス君は"穢れ"なんかじゃないっ!!」



普段のアイリスからは想像がつかないような叫びが周囲に響いた。

「クリス君は私を"外の世界"に連れ出してくれた……嫌われてた私と一緒にいてくれた……
そんな……誰よりも優しいクリス君を………"穢れ"なんて呼ぶのは許さない!!」


「アイさん………」



「…………穢れを庇う貴様も穢れか………」



フォカロルは殺意を膨らませ、怒りのままに風を操作し始めた。

「……………もう、いいだろう」

アイリスは、キリシマによってフォカロルから遠ざけられた。








戦いが始まる。 
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