いつか必ず、かめはめ波を撃つことを夢見て
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第01話 転生?これはドラゴンボールの世界?
ナシゴという10歳の子供の朝は早い。朝早くに目を覚ますと、武術の型を2時間練習する。そして朝食をとった後、家の手伝いを10時間程する。クワを振り下ろし、田畑を開拓したり、薪を割るために斧を振り下ろしてみたり、近くの川で魚を取ったり。家の手伝いを終えた後、夕食を取ると身体を鍛えあげるために走りこみをする。精神を鍛えるために禅をして、そして最後に武術の型を練習して、そして就寝する。常人では、ましてや子供ではすぐに根を上げてしまうぐらいの修行量、仕事量をこなす。それがナシゴの一日の過ごし方だった。
よく成長し、よく手伝い、誰に対しても優しいナシゴという子供を両親は誇りに思っていた。村の人々も、ナシゴを褒め称えた。しかし、そんなナシゴには家族に秘密にしている事があった。
それは、ナシゴが田中竜二の転生した姿だということだ。
ある日、父親がナシゴに話を聞いた。
「おいナシゴよ、なぜそんなに身体を鍛えることに熱心なのだ?」
「父よ、僕には夢があります。かめはめ波を撃つという夢が」
父親には「かめはめ波」というものが何かわからなかったが、それが武術に関係あるものだろうと考えた。そしてナシゴがもう少し成長した時には武術の先生にしっかり教えを請えるようにするために、貯金をすることを決意させた。
そんなふうに過ごしていると、ある時、ナシゴはとても重大な事実に気がついた。
「エイジ?そんな馬鹿な」
本で勉強を進めている時、この世界での年代の数え方が、エイジだという事を見つけた。戸惑いと疑問の声がナシゴの口から漏れた。ナシゴには、エイジという年代の数え方に強烈な思い出があった。それは、生前好きだった「ドラゴンボール」という作品と同じ年代の数え方だったのだ。そんなバカなという思いと、もしかしたらこの世界はドラゴンボールの世界かも知れないという考えが頭のなかに渦巻いた。何故なら、既に転生というナシゴには想像外の出来事が、自分の身に起こっていたからだ。
なぜ新たな世界に転生したのか。それは、生まれて10年過ごしたナシゴの疑問だった。わからないことだらけだったが、頭にあるひらめきが宿った。この世界なら「かめはめ波」を撃つことも可能じゃないだろうか。亀仙人様に教えを請い、かめはめ波を習うことが出来れば、自分の目標が達成できる。この世界に、自分の夢を叶えるために生まれ変わったのだろうか。
そう考えたが、次に発見した事実に対してとても落胆することになる。
「エイジ……255年……」
今が255年だという事を知ったナシゴ。確かドラゴンボールの物語が始まる孫悟空とブルマが出会うのが、エイジ750年ぐらいだったはず。そして、亀仙人が生まれるのはエイジ430年。物語が始まる500年も前、「かめはめ波」を考えついた亀仙人が生まれる170年以上前の世界だった。
「……いや、しかし……」
落胆したナシゴだったが、あるひらめきが頭をよぎる。この世界がドラゴンボールだとしたら、ドラゴンボールの玉にある願いを叶えてもらえることで、かめはめ波を撃つために亀仙人の教えを請うことが出来るかもしれない。しかし、どうやってドラゴンボールを見つけるのだ。この時代には、ブルマのドラゴンレーダはもちろん、開発者のブルマさえ生まれて居ない。全世界に散らばった小さな玉をどう見つけるのだろうか。
そうだ、占いババがこの世界にいるはずだ。亀仙人よりも200歳以上年上だった彼女は、既に生まれているはず。エイジ255年なら既に商売を始めているかも知れない! 彼女に失せ物探しを頼めば、ドラゴンボールの位置がわかるかもしれない! そんな風に考えついたナシゴは早速行動に移すことにした。
「父よ、話があります」
ナシゴの真剣な眼差しに、姿勢を正して向き合う父親。向き合ってくれた事を確認したナシゴが話を始める。
「僕を旅に出して欲しいのです」
「旅だって……?」
ナシゴは10歳。普通ならば旅に出るには早過ぎる歳だと感じたのだが、昔から成熟しているナシゴを見ていると、それも不可能では無いだろうと考える父。
「それは、昔話した目的のための旅かい?」
「そうです、それを叶えるための旅に出たいのです」
父親は、息子であるナシゴのお願いというのは、生まれて初めて聞いた。昔からわがままを言わない彼の願いを、なるべくなら叶えさせてやりたい父親は決心をした。
「わかった、好きなようにするがいい。これからは、うちの手伝いは必要ないから旅の準備を万全にするように。お金はお父さんが溜めたものがあるから、それを使いなさい。今持ってこよう。それと、旅に出たとしても1年に1回はうちに帰ってくるように」
父親の許可をもらったナシゴの行動は素早かった。父から受け取ったお金を大事に使い、旅の計画と準備を2日で済ませて、目的のドラゴンボールを探すため、まずは、占いババの館を探すことにした。
もしかしたら、この世界はドラゴンボールの世界じゃない、「エイジ」という年代の数え方は偶然同じだけだったかもしれないという考えがよぎったが、それはそれで新しい今の世界を回って見たかったナシゴの希望にかなっていたので、楽に考えながら旅を始めたナシゴだった。
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