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久遠の神話

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第八十一話 バトルゲームその六

「まだ、あの人を完全に止めるには」
「力が足りないの?」
「うん、今でやっと相手が出来る位だから」
 その程度だというのだ、今は。
「まだまだだよ」
「そうなの」
「そう、まだまだ強くならないと」
 とてもだとだ、上城は樹里の方に向き直ったうえで首を横に振って言った。
「戦いを止められないよ」
「相当なものだったのに」
「そう、まだね」
 それはまだというのだ。
「足りないよ」
「そうなの」
「うん、まだだよ」
 そうだというのだ。
「もう少しね」
「それじゃあまだ戦うのね」
「怪物とね」
 そうするとだ、上城は強い声で言う。
「戦ってね」
「それでなのね」
「うん、強くなるよ」
「戦いを止める為に」
「わかっているからね、戦いを止める為には」
 力と力のぶつかり合い、それを止める為にはというのだ。
「力が必要だってね」
「そうなのよね、言葉だけだとね」
「物理でもそうじゃない」
 学校で学ぶ教科の中でもとりわけで難しいと言われるこの教科の話も出た。物理は実は数学の文章題だという意見もある。
「ほら、力を止めるには」
「同じかより強い力が必要なのよね」
「それも向かい合うものがね」 
 同じ方向ではなくだ。
「必要だから」
「だからよね」
「そう、僕は強くなって」 
 今以上にだ、そうなってだというのだ。
「戦いを止めるよ」
「そうなろうね、これからも」
「あと四人だし」
 戦いを続けようという剣士、その数は。
「その四人の人達を止めれば」
「それで戦いは終わるのね」
「こんな、意味のない戦いも」
 上城はこの言葉は俯いて忌々しげな顔で述べた。彼にとってこの戦いは何の意味も見いだせないものでしかないのだ。
「欲と欲がぶつかる戦いなんてね」
「人間の戦いってそうしたものって言われるわよね」
「それでもね」 
 潔癖症で生真面目な上城にはだ、そうした考えは受け入れられるものではなかった、それで今もこう言うのだ。
「そんなことはね」
「間違ってるのね」
「人が戦う時は」
 そうした時はどういった時か、彼は樹里に話した。
 二人で夜道を歩き帰路についている、その中での言葉だ。
「誰かの為だよ、それかこんな戦いを止める為とか」
「そうした時だけね」
「自分の為に戦うのはよくないよ」
「じゃあ加藤さんは」
「あの人もそうだと思うよ」
 彼もまただ、自分の為に戦っているというのだ。
「だって戦いたいだけだから」
「あの人はそうよね」
「うん、戦いたいから戦うのじゃなくて」
「誰かを守る為や助ける為に戦わないといけないのね」
「それはさ、戦争も起こるよ」
 様々な理由でだ、上城はこのこともまた理解してきてはいる。
「そこには色々な人の命や生活も関わるし嫌なものもかなり混ざるけれど」
「それでもよね」
「そう、だから戦争については僕もはっきりとは言えないけれど」
「この戦いは」
「間違ってるよ」
 上城は苦い顔で俯き気味に正面を見て言った。 
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